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「本川橋」の版間の差分

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{{Otheruses|広島県の広島平和記念公園の橋|新潟県の[[信濃川]]に架かる本川橋|本川橋 (新潟県)}}

{{Otheruses|広島平和記念公園の橋|[[広島南道路]]の橋である"本川大橋"|江波大橋}}
{{橋
{{橋
|名称=本川橋
|名称 = 本川橋
|画像=[[ファイル:本川橋01.JPG|center|300px]]欄干 中島町より
|画像 = [[ファイル:本川橋01.JPG|center|300px]]
|画像幅 =
|国={{JPN}}
|画像説明 = 中島町より
|都市=[[広島県]][[広島市]][[中区 (広島市)|中区]]<br />左岸:[[中島町 (広島市)|中島町]] - 右岸:中区[[十日市町・土橋|堺町]]
|国 = {{JPN}}
|水域=[[太田川]][[水系]][[旧太田川]]
|所在地 = [[広島県]][[広島市]][[中区 (広島市)|中区]]<br />左岸:[[中島町 (広島市)|中島町]] - 右岸:[[十日市町・土橋|堺町]]{{r|ch1470}}
|交差物件 = [[太田川]][[水系]][[旧太田川]]
|用途 = 道路橋
|路線名 = 広島市道中2区2号線{{r|doukan}}
|管理者 = 広島市
|設計者 = 上部工 : 本多勇（広島県土木部）ら{{r|chugoku20060212}}<br />下部工 : 不明
|施工者 =
|着工 =
|竣工 =上部工 : 1949年{{r|VirtualMuseum}}<br />下部工 : 1897年11月{{r|VirtualMuseum}}
|開通 =
|閉鎖 =
|緯度度 = 34|緯度分 = 23|緯度秒 = 37.4
|緯度度 = 34|緯度分 = 23|緯度秒 = 37.4
|経度度 = 132|経度分 = 27|経度秒 = 02.2
|経度度 = 132|経度分 = 27|経度秒 = 02.2
|形式 = <!-- 3連下路式鋼平行弦ポニー[[トラス橋|ワーレントラス橋]] -->
|材料 = 鋼橋
|全長 = 73.2m{{r|VirtualMuseum}}{{r|chugoku20060212}}
|幅 =幅員 : 6.6m{{r|VirtualMuseum}}（6.7m{{r|chugoku20060212}}、8.5m{{r|doukan}}）
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|地図名 =Japan
|地図幅 =
|地図説明 =
}}
}}
'''本川橋'''（ほんかわばし）は、[[広島県]][[広島市]]の[[旧太田川]]にかかる[[橋|道路橋]]。上流側に人道橋（歩道橋）を併設している。
'''本川橋'''（ほんかわばし）は、[[広島県]][[広島市]]の[[旧太田川]]（本川{{r|hb815}}）にかかる[[橋|道路橋]]。上流側に人道橋（歩道橋）を併設している。


[[安土桃山時代]]あるいは[[江戸時代]]初期に[[木橋]]「猫屋橋」として架橋、1897年に鋼[[トラス橋]]に永久橋化され、落橋に伴い現在の橋は1949年に再架橋されたもの。当初は[[西国街道]]筋、近代は国道筋の、現在は市道の橋である。西方面から[[広島平和記念公園]]へと通ずる橋の1つ。
== 概要 ==
本川とは、[[戦前]]まで[[太田川]][[水系]]の本流だった旧太田川の通称である<ref>{{Cite web|publisher=ひろしま文化大百科|url=http://www.hiroshima-bunka.jp/modules/newdb/detail.php?id=815|title=太田川と平和記念公園|accessdate=2014-02-28}}</ref>。[[安土桃山時代]]あるいは[[江戸時代]]初期に[[木橋]]として築造されたものを、1897年に鋼[[トラス橋]]に永久橋化され、落橋に伴い現在の橋は1949年に再架橋されたもの。


現橋の橋脚は1897年に作られたものを補修しながら現在まで使っており、1945年[[広島市への原子爆弾投下|原爆被災]]した[[被爆建造物]]でもある。現橋の鋼製の桁は旧[[光海軍工廠]]の廃材を再利用している。[[土木学会選奨土木遺産]]。
当初は西国街道筋、近代は国道筋の、現在は市道の橋である。西方面から[[広島平和記念公園]]へと通ずる橋の1つ。上流に[[元安川]]の分流点と[[相生橋]]、下流に[[西平和大橋]]がある。東へ道沿いに進むと[[元安橋]]、西へ進むと広電[[土橋停留場]]があり更に進むと[[天満橋 (広島市)|天満橋]]にたどり着く。

鋼製の桁は旧[[光海軍工廠]]の廃材を再利用している。橋脚は1897年に作られたものを補修しながら現在まで使っており、1945年[[広島市への原子爆弾投下|原爆被災]]（爆心地より約410m）した[[被爆建造物]]でもある。

== 諸元 ==
* 路線名 : 広島市道中2区2号線<ref name="doukan">[http://www2.wagamachi-guide.com/hiroshimacity/index.asp?dtp=1 ひろしま地図ナビ]</ref>
* 橋長 : 73.2m<ref name="VirtualMuseum">{{Cite web|publisher=広島平和記念資料館|title=本川橋|url=http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/tour/ireihi/tour_02.html|accessdate = 2014-02-28}}</ref><ref name="chugoku20060212">{{Cite web|publisher=中国新聞|date=2006-02-12|url=http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200602120105.html|title=旧光海軍工廠廃材 本川橋も再建|accessdate=2014-02-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060215135555/http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200602120105.html|archivedate=2006年2月15日}}</ref>
* 幅員 : 6.6m<ref name="VirtualMuseum" />（6.7m<ref name="chugoku20060212" />、8.5m<ref name="doukan" />）
* 橋種 : 3連下路式鋼平行弦ポニー[[トラス橋|ワーレントラス橋]]
<gallery widths="200px" heights="200px">
ファイル:本川橋04.JPG|橋全体 相生橋より
ファイル:本川橋02.JPG|橋全体 中島町より
ファイル:本川橋03.JPG|欄干 堺町より
</gallery>


== 歴史 ==
== 歴史 ==
=== 近世 ===
=== 近世 ===
元々[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]この地の北側に「楠橋」という橋がありこの橋が本川橋の起源とするものもある<ref name="ndl947802">{{Cite book|和書|publisher = 吉田直次郎|title = 広島案内記|url = {{NDLDC|947802}}|date =1913|accessdate = 2014-06-20}}</ref>。
かつてこの地の北側に「楠橋」という橋があり、それが本川橋の起源とするものがある{{r|ndl947802}}。


[[安土桃山時代]]に[[毛利輝元]]が[[広島城]]下を整備した際に、[[府中町|府中]]の松崎八幡宮の[[神官|棚守]]を務めた加藤九郎右衛門兼鎮が当地に「猫屋」を開業した<ref name="VirtualMuseum" />。その時に猫屋が自費で[[木橋]]を建設したのがこの橋の始まりと伝えられている<ref name="VirtualMuseum" /><ref name="ph76355">{{Cite web|publisher=広島県|url=http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/76355.pdf|format=PDF|title=広島の歴史的風景|accessdate=2014-02-28}}</ref>。当時橋名は「猫屋橋」<ref name="VirtualMuseum" />であり、猫屋は豪商として当地で繁栄を極め、橋のみならず川や町にその名が付くことになった{{Sfn|広島市|2005|p=291}}。ちなみに現在において、松崎八幡宮は[[多家神社]]に合祀され跡地として残り<ref>{{Cite web|publisher=府中町|url=http://www2.town.fuchu.hiroshima.jp/www/contents/1333006451317/index.html|title=松崎八幡宮跡|accessdate=2014-02-28}}</ref>、猫屋の名は本川橋西詰北側に中区[[猫屋町]]として残っている。
[[安土桃山時代]]に[[毛利輝元]]が[[広島城]]下を整備した際に、[[府中町|府中]]の松崎八幡宮の[[神官|棚守]]を務めた加藤九郎右衛門兼鎮が当地に「猫屋」を開業した{{r|ndl947802}}。その時に猫屋が自費で[[木橋]]を建設したのがこの橋の始まりと伝えられている{{r|VirtualMuseum}}{{r|ndl947802}}{{r|ph76355}}。九郎右衛門は12人の子女を伴い渡り初めをしたという{{r|ndl947802}}。当時橋名は「猫屋橋」{{r|VirtualMuseum}}であり、猫屋は豪商として当地で繁栄を極め橋のみならず川や町にその名が付くことになり{{Sfn|広島市|2005|p=291}}{{r|ph76355}}、現在も[[猫屋町]]として残っている。


広島市が公開する資料では、[[天正]]年間（1573年から1592年）ごろ広島城を整備した際に架橋としている{{r|VirtualMuseum}}。
広島市が公開する資料では[[天正]]年間（1573年から1592年）ごろ広島城を整備した際に架橋としている<ref name="VirtualMuseum" />。天正17年（1589年）3月輝元による現地調査、天正18年（1590年）末に広島城がほぼ竣工していることから{{Sfn|広島市|2005|p=6}}、架橋は1590年ごろと推定される。また[[江戸時代]]に書かれた毛利氏時代の町割絵図の『芸州広島御分国八州之時御城下屋敷割并神社仏閣割共図』には天正19年（1591年）架橋の[[猿猴橋]]と[[京橋 (広島市)|京橋]]は描かれているのにこの橋は描かれていない<ref>{{Cite web|publisher=広島城博物館|url=http://www.rijo-castle.jp/rijo/pdf/sirouya24.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第24号|accessdate=2014-02-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131202232115/http://www.rijo-castle.jp/rijo/pdf/sirouya24.pdf|archivedate=2013年12月2日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref>ことから、少なくとも1591年より後に架橋と推定される。
* 天正17年（1589年）3月輝元は現地調査、天正18年（1590年）末に広島城がほぼ竣工している{{Sfn|広島市|2005|p=6}}

* 毛利氏時代の広島城絵図『芸州広嶋城町割之図』で（[[西国街道]]筋となる）[[猿猴橋]]・[[京橋 (広島市)|京橋]]・[[元安橋]]は描かれているが猫屋橋（本川橋）は描かれていない{{r|sirouya24}}{{r|sirouya43}}。これと江戸後期の地誌『知新集』内の記載から、西国街道は毛利氏の次に入封した[[福島正則]][[広島藩|藩政時代]]、江戸時代初期に成立したとする説がある{{r|sirouya43}}。
毛利氏の後に入封した[[福島正則]]の[[広島藩|藩政時代]]に、山陽道（[[西国街道]]）を城下に引き込みこの橋は西国街道筋の橋となった<ref>{{Cite web|url=http://www.hiroshimacci.or.jp/shoutengai/zanmai/shoutengai-ichiran/hondori.html|title=商店街PR|publisher=広島商工会議所|accessdate=2014-02-28}}</ref>。藩政時代において防犯上の理由により架橋制限されており<ref>{{Cite web|publisher=広島城博物館|url=http://www.rijo-castle.jp/rijo/pdf/sirouya20.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第20号|accessdate=2014-02-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150924091712/http://www.rijo-castle.jp/rijo/pdf/sirouya20.pdf|archivedate=2015年9月24日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref>、この橋は本川に唯一架けられた西国街道筋の橋であった<ref name="ph76355" />。この地は当時は島だった[[江波]]の港から運ばれた積荷の中継地点として栄え<ref name="ph76355" />、現在も残る[[雁木 (港湾)|雁木]]から荷揚げされていた。
* 慶長元年（1596年）『毛利氏奉行人連署書状』に[[文禄・慶長の役#文禄の役|文禄の役]]のため[[名護屋城]]に向かう[[豊臣秀吉]]が通るため、（西国街道筋）[[己斐橋]]と「広島中の小橋」の修繕を命じられた事が書かれている{{r|sirouya43}}。このことから西国街道の原型は毛利氏時代、安土桃山時代に形成されていたとする説がある{{r|sirouya43}}。

以上から毛利氏時代あるい福島氏時代に山陽道（西国街道）を城下に引き込みこの橋は西国街道筋の橋となった{{r|sirouya43}}。
当時の猫屋橋の状況は絵地図として残っており、例えば広島城博物館が所蔵する『広島城下絵屏風』や『芸州広島図』で確認することができる<ref>{{Cite web|url=http://www.rijo-castle.jp/rijo/pdf/sirouya27.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第27号|publisher=広島城博物館|accessdate=2014-02-28}}</ref>。また広島藩は太田川水系の[[治水]]に力を入れたが[[洪水]]は絶えず、寛政8年（1796年）城下で発生した大洪水では現在の中島町が浸水し猫屋橋も落橋している<ref>{{cite web|url=http://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/plan/pdf/plan.pdf |format=PDF |title=太田川水系の流域および河川の概要 |publisher=国土交通省河川局 |accessdate=2014-02-28}}</ref>。
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ファイル:Gaikan Hiroshima-shishi map-02.jpg|『[[寛永]]年間広島城下絵図』。"ねこやはし"が確認できる。
ファイル:Gaikan Hiroshima-shishi map-02.jpg|『[[寛永]]年間広島城下絵図』。"ねこやはし"が確認できる。
ファイル:Hiroshima Castle Town 1644.jpg|[[正保]]城絵図『安芸国広島城所絵図』。城の下側を横断する道が西国街道であり左から2つ目の橋が猫屋橋（本川橋）。
ファイル:Hiroshima Castle Town 1644.jpg|『[[正保城絵図]]安芸国広島城所絵図』。城の下側を横断する道が西国街道であり左から2つ目の橋が猫屋橋（本川橋）。
</gallery>
</gallery>
[[ファイル:厳島図会 六月十六夜広島本川口の図.jpg|250px|left|thumb|『芸州厳島図会 六月十六夜広島本川口の図』。右側が猫屋橋（本川橋）。かつて[[管絃祭]]で管絃船を併走する「御供船」と呼ばれた船がこの付近から出ていた。]]

藩政時代において防犯上の理由により架橋制限されており{{r|sirouya20}}、この橋は本川に唯一架けられた西国街道筋の橋であった{{r|ph76355}}。この地は当時は島だった[[江波]]の港から運ばれた積荷の中継地点として、西詰の西国街道筋にあたる堺町は問屋街として栄えた{{r|ph76355}}。現在も残る[[雁木 (広島市)|雁木]]から荷揚げされていた。

また広島藩は太田川水系の[[治水]]に力を入れたが[[洪水]]は絶えず、記録に残るものでは寛政8年（1796年）城下で発生した大洪水で現在の中島町が浸水し猫屋橋も落橋している{{r|mlitootagawa}}。


=== 近代以降 ===
=== 近代以降 ===
[[ファイル:21-2 本川橋 70306 007.jpg|250px|left|thumb|大正時代の絵葉書]]
[[明治]]時代に入って[[国道2号|國道四號]]筋の橋となる。当時の地図表記から、1877年（明治10年）から1894年（明治27年）の間に現在の"本川橋"に改名されたと考えられている<ref name="VirtualMuseum" /><ref name="ph76355" />。
[[明治]]時代に入って[[国道2号|國道]]筋の橋となる{{r|ndl947802}}。当時の地図表記から、1877年（明治10年）から1894年（明治27年）の間、明治20年代までに現在の"本川橋"に改名されたと考えられている{{r|VirtualMuseum}}{{r|ph76355}}。


1897年（明治30年）[[トラス橋]]に架け替えられた<ref name="VirtualMuseum" /><ref name="ph76355" />。当時の絵葉書から曲弦トラス（[[トラス橋#ボウストリングトラス|ボウストリングトラス]]）と呼ばれる3連のトラス橋であったとわかる。長さ40間（約72.7m）、幅4間（約7.27m）、工事費約4万3,570円<ref name="ndl947802" />。広島初竣工の鋼橋であり、当時広島の繁華街だった中島町と問屋街・境町を結ぶ目抜き通りに架けられた橋であり、その珍しさから観光名所となった<ref name="VirtualMuseum" /><ref name="ph76355" />。昭和期に売られていた広島銘菓"本川饅頭"は、この橋完成を記念して作られたものである<ref name="ph76355" />。橋の西詰めの交差点には1913年（[[大正]]2年）[[広島商業銀行]]の本店が新築移転している<ref name="ph76355" />。
1897年（明治30年）11月[[トラス橋]]（[[トラス橋#ボウストリングトラス|ボウストリングトラス]]）に架け替えられた{{r|VirtualMuseum}}{{r|ndl947802}}{{r|ph76355}}{{r|chugoku20200524}}。長さ40間（約72.7m）、幅4間（約7.27m）、工事費約4万3,570円{{r|ndl947802}}（3万4,428円{{r|chugoku20200524}}とも）。


広島初竣工の鋼橋であり、当時広島の繁華街だった中島町と問屋街・境町を結ぶ目抜き通りに架けられた橋であり、その珍しさから観光名所となった{{r|VirtualMuseum}}{{r|ph76355}}。昭和期に売られていた広島銘菓"本川饅頭"は、この橋完成を記念して作られたものである{{r|ph76355}}。近世では問屋街として栄えた本川橋西詰は、近代に入ると倉庫群が立ち並んだ{{r|ph76355}}。西詰交差点には1913年（[[大正]]2年）[[広島商業銀行]]の本店が新築移転している{{r|ph76355}}。
大正時代までは国道であったが、[[昭和]]初期に[[相生通り]]を新しい国道として整備されることになった<ref>{{Cite journal|和書|date =1931-05 |url=http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/dokai/pdf/11-06-0108.pdf|format=PDF|title=地方通信 |journal = 道路の改良 |issue = 6 |volume = 11 |publisher=土木学会|accessdate=2014-02-28}}</ref>。[[太平洋戦争]]に入ると1941年[[金属類回収令]]により市内の橋の鋼製欄干は次々と外されたが、この橋からは鋼部材が外されたかどうかは不明。


大正時代まで本川橋筋は国道であったが、[[昭和]]初期に[[相生通り]]（[[相生橋]]）が新しい国道として整備されることになった{{r|jsce0108}}。[[太平洋戦争]]に入ると[[金属類回収令]]により市内の橋の鋼製欄干は次々と外されたが、この橋からは鋼部材が外されたかどうかは不明。
{{-}}
{{multiple image
{{multiple image
| header = 被爆前後の中島町ジオラマ。
| header =
| footer =
| footer = 左が本川橋。当時の橋の形状が再現されている。
| align = right
| align = right
| width = 150
| direction = vertical
| image1 = HiroshimaNakajimaArea.jpg
| width = 250
| image1 = Honkawa bridge 1905 -1.jpg
| caption1 = 被爆前。
| caption1 = 明治末期頃
| image2 = HiroshimaNakajimaAreaInRuins.jpg
| image2 = 019375 Hiroshima, Japan.jpg
| caption2 = 被爆後。
| caption2 = 被爆後の本川橋。撮影者は[[宮武甫]]。[[オーストラリア戦争記念館]]所蔵。
| image3 = Honkawa Bridge.jpg
| caption3 = 現橋（2016年）
}}
}}
<gallery mode="packed" heights="150">
{{multiple image
AtomicEffects-p7a.jpg|原爆投下前
| header = 被爆前後の空中写真。
AtomicEffects-p7b.jpg|原爆投下後
| footer = 同心円の中心が爆心地で最も近い橋が[[元安橋]]。そこから道沿い西側にあるのが本川橋。
</gallery>
| align = right
<gallery mode="packed" heights="150">
| width = 150
HiroshimaNakajimaArea.jpg|原爆投下前
| image1 = AtomicEffects-p7a.jpg
HiroshimaNakajimaAreaInRuins.jpg|原爆投下後
| caption1 = 原爆投下前の市中央部。
| image2 = AtomicEffects-p7b.jpg
| caption2 = 原爆投下後。
}}
<gallery widths="250px" heights="250px">
ファイル:Honkawa bridge 1905 -1.jpg|明治末期頃の本川橋。
ファイル:019375 Hiroshima, Japan.jpg|被爆後の本川橋。撮影者は[[宮武甫]]、この写真の所有者はオーストラリア戦争記念館。
</gallery>
</gallery>


1945年（昭和20年）8月6日被爆。爆風により一部の桁が橋台から外れ片方だけがぎりぎり引っかかっていた状況であり、通行は不可能であった<ref name="VirtualMuseum" />{{Sfn|広島市|2005|p=252}}。左岸側の中島町は壊滅、避難者は上流の相生橋や下流の新大橋（現在の西平和大橋）から西へ避難して行った。また、当時添架されていた水道管は切断され、給水不能となった<ref name="VirtualMuseum" />{{Sfn|広島市|2005|p=252}}。直後、軍や救援隊によりここから元安橋までの国道筋の整理が行われ、本川橋も板を渡しただけの応急修理がなされていた{{Sfn|広島市|2005|p=252}}{{Sfn|広島市|2005|p=295}}。
1945年（昭和20年）8月6日被爆。爆心地より約250mに位置した{{r|VirtualMuseum}}。爆風により一部の桁が橋台から外れ片方だけがぎりぎり引っかかっていた状況であり、通行は不可能であった{{r|VirtualMuseum}}{{Sfn|広島市|2005|p=252}}。左岸側の中島町は壊滅、避難者は上流の相生橋や下流の新大橋（現在の西平和大橋）から西へ避難して行った。また、当時添架されていた水道管は切断され、給水不能となった{{r|VirtualMuseum}}{{Sfn|広島市|2005|p=252}}。直後、軍や救援隊によりここから元安橋までの国道筋の整理が行われ、本川橋も板を渡しただけの応急修理がなされていた{{Sfn|広島市|2005|p=252}}{{Sfn|広島市|2005|p=295}}。


そこへ同年9月に上陸した[[枕崎台風]]により更に損傷し、同年10月[[阿久根台風]]による水害により完全に落橋した<ref name="VirtualMuseum" />{{Sfn|広島市|2005|p=252}}{{Sfn|広島市|2005|p=289}}。これら台風災害により、下流側の新大橋・[[住吉橋 (広島市)|住吉橋]]も落橋した{{Sfn|広島市|2005|p=448}}。
そこへ同年9月に上陸した[[枕崎台風]]により更に損傷し、同年10月[[阿久根台風]]による水害により完全に落橋した{{r|VirtualMuseum}}{{Sfn|広島市|2005|p=252}}{{Sfn|広島市|2005|p=289}}。これら台風災害により、下流側の新大橋・[[住吉橋 (広島市)|住吉橋]]も落橋した{{Sfn|広島市|2005|p=448}}。


その後、また板を渡しただけの仮橋が架けられていた。戦後の物資不足が続いていたが、交通の要所であったため、真っ先に再建されることが決定、1949年（昭和24年）残った橋脚を利用して架け直された<ref name="VirtualMuseum" /><ref name="chugoku20060212" /><ref name="ph76355" />。設計は当時広島県土木部職員の本多勇、その部材には[[空襲]]で壊滅状態となった旧[[光海軍工廠]]の廃材を使っている<ref name="VirtualMuseum" /><ref name="chugoku20060212" />。
その後、また板を渡しただけの仮橋が架けられていた{{r|chugoku20060212}}。戦後の物資不足が続いていたが、交通の要所であったため、真っ先に再建されることが決定、1949年（昭和24年）残った橋脚を利用して架け直された{{r|VirtualMuseum}}{{r|chugoku20060212}}{{r|ph76355}}。その部材には[[空襲]]で壊滅状態となった旧[[光海軍工廠]]の廃材を使っている{{r|VirtualMuseum}}{{r|chugoku20060212}}。


その後、数度補修保全工事を行いつつ現在までその形をとどめている<ref name="ph76355" />。
その後、数度補修保全工事を行いつつ現在までその形をとどめている{{r|ph76355}}。[[2021年]]（[[令和]]3年）[[土木学会選奨土木遺産]]に認定された{{r|tsukumo-bridge}}。


== 周辺 ==
== 周辺 ==
[[ファイル:Hiroshima Peace Memorial Park 1988.jpg|right|250px|thumb|1988年の平和公園周辺<ref>{{国土航空写真}}</ref>。]]
[[ファイル:Hiroshima Peace Memorial Park 1988.jpg|right|250px|thumb|1988年の平和公園周辺<ref>{{国土航空写真}}</ref>。]]
橋脚は前述のとおり被爆建造物にあたり(市が公式に発表している被爆建物台帳・被爆橋梁台帳のどちらにも記載されていない)、下には毛利輝元の島普請による石組が残っている。
橋脚は被爆建造物にあたる。その下には毛利輝元の[[広島城#島普請|島普請]]による石組が残っている{{r|ch1470}}。上流に[[元安川]]の分流点と[[相生橋]]、下流に[[西平和大橋]]がある。
<gallery mode="packed" heights="150">
Honkawa bridge 1905 -2.jpg|明治末期
本川橋05.JPG|2008年
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西に進むと西詰交差点で直進できずカギ型になっているが、これは[[虎口#枡形虎口|枡形]]の名残である{{r|sirouya11}}。西詰南側には常夜灯が、周辺の護岸には雁木造りの揚場や舟繋の石柱や船舶の燥場も残っている{{r|ch1470}}。被爆建物[[本川公衆便所]]も西詰南側にある。西詰北側にはかつて[[韓国人原爆犠牲者慰霊碑]]があった。1945年[[李グウ|李{{lang|zh|鍝}}]]が被爆により最期を遂げた場所でもある。道に沿って西に進むと広電[[土橋停留場]]があり更に進むと[[天満橋 (広島市)|天満橋]]にたどり着く。
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本川橋 - 30983968065.jpg|本川浜恵美須神社と雁木
Honkawa public lavatory 1.jpg|本川公衆便所
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東詰一帯は平和公園である。北側には東側河岸用と橋桁との繋ぎ目部分の路面用の石が残されている。これも被爆遺構であり、2003年の橋補修時に取り外され、この地にモニュメントとして置かれている。『[[この世界の片隅に (映画)]]』に登場した雁木はこの橋の東詰あたりにあったが、現在は形状が異なる。東へ道沿いに進むと[[元安橋]]がある。
西詰南側には常夜灯が、周辺の護岸には雁木造りの揚場や舟繋の石柱や船舶の燥場が、[[遺構]]として残っている。西詰北側には、かつて「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」があった。1945年[[李グウ|李{{lang|zh|鍝}}]]が被爆により最期を遂げた場所でもある。さらに上流側に[[広島市立本川小学校]]がある。
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本川橋06.JPG|被爆石材
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== ギャラリー ==
東詰一帯は平和公園である。北側には東側河岸用と橋桁との繋ぎ目部分の路面用の石が残されている。これも被爆遺構であり、2003年の橋補修時に取り外され、この地にモニュメントとして置かれている。東詰周辺には平和公園内に昔存在した[[中島町 (広島市)|元柳町]]にゆかりのある柳の木が多く植えてある。
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画像:本川橋05.JPG|橋脚(被爆建造物)
本川橋04.JPG|橋全体 相生橋より
画像:本川橋06.JPG|被爆石材
本川橋02.JPG|橋全体 中島町より
本川橋03.JPG|欄干 堺町より
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
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*<ref name="doukan">[http://www2.wagamachi-guide.com/hiroshimacity/index.asp?dtp=1 ひろしま地図ナビ]</ref>
*<ref name="hb815">{{Cite web|和書|publisher=ひろしま文化大百科|url=http://www.hiroshima-bunka.jp/modules/newdb/detail.php?id=815|title=太田川と平和記念公園|accessdate=2022-01-06}}</ref>
*<ref name="mlitootagawa">{{Cite web|和書|url=https://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/plan/pdf/plan.pdf |format=PDF |title=太田川水系の流域および河川の概要 |page=27|publisher=国土交通省河川局 |accessdate=2022-01-06}}</ref>
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*<ref name="tsukumo-bridge">{{Cite web|和書|publisher=広島県|url=https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/97/tsukumo-bridge.html|title=九十九橋|accessdate=2022-01-06}}</ref>

*<ref name="ch1470">{{Cite web|和書|publisher=広島市|title=2.本川橋と雁木(がんぎ)跡|url=https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/nakaku/1470.html|accessdate = 2022-01-06}}</ref>
*<ref name="VirtualMuseum">{{Cite web|和書|publisher=広島平和記念資料館|title=本川橋|url=http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/tour/ireihi/tour_02.html|accessdate = 2022-01-06}}</ref>
*<ref name="ph76355">{{Cite web|和書|publisher=広島県|url=http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/76355.pdf|format=PDF|title=広島の歴史的風景|accessdate=2022-01-06}}</ref>
*<ref name="ndl947802">{{Cite book|和書|publisher = 吉田直次郎|title = 広島案内記|url = {{NDLDC|947802/38}}|date =1913|accessdate = 2022-01-06}}</ref>

*<ref name="sirouya11">{{Cite web|和書|publisher=広島城博物館|url=http://www.rijo-castle.jp/RIJO_HP/contents/06_kids/02_sirouya/conimages/145_sirouya11.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第11号|accessdate=2022-01-06}}</ref>
*<ref name="sirouya20">{{Cite web|和書|publisher=広島城博物館|url=http://www.rijo-castle.jp/RIJO_HP/contents/06_kids/02_sirouya/conimages/154_sirouya20.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第20号|accessdate=2022-01-06}}</ref>
*<ref name="sirouya24">{{Cite web|和書|publisher=広島城博物館|url=http://www.rijo-castle.jp/RIJO_HP/contents/06_kids/02_sirouya/conimages/158_sirouya24.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第24号|accessdate=2022-01-06}}</ref>
*<ref name="sirouya43">{{Cite web|和書|publisher=広島城博物館|url=http://www.rijo-castle.jp/RIJO_HP/contents/06_kids/02_sirouya/conimages/175_sirouya43.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第43号|accessdate=2022-01-06}}</ref>

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== 参考資料 ==
== 参考資料 ==
* {{Cite book|和書|author = [[四国五郎]]|year = 1975|title = 広島百橋|publisher = 春陽社出版|asin =B000J9FFA2}}
* {{Cite book|和書|author= 四国五郎|authorlink=四国五郎|year = 1975|title = 広島百橋|publisher = 春陽社出版|asin =B000J9FFA2}}
* {{Cite book|1 =和書|author =広島市|title =広島原爆戦災誌|origdate =1971|url =http://a-bombdb.pcf.city.hiroshima.jp/pdbj/bookdownload/sensai0.pdf|format =PDF|edition =改良版|date =2005|accessdate =2014-02-28|ref =harv|archiveurl =https://web.archive.org/web/20131203005503/http://a-bombdb.pcf.city.hiroshima.jp/pdbj/bookdownload/sensai0.pdf|archivedate =2013年12月3日|deadlinkdate =2017年10月}}
* {{Cite book|1 =和書|author =広島市|title =広島原爆戦災誌|origdate =1971|url =http://a-bombdb.pcf.city.hiroshima.jp/pdbj/common/download/sensai0.pdf|format =PDF|edition =改良版|date =2005|accessdate =2022-01-06|ref =harv}}
* {{Cite journal|和書|author = 松尾雅嗣|coauthors = 谷整二|year = 2007|title = 広島原爆投下時の一時避難場所としての川と橋|journal = 広島平和科学|volume = 29|pages = 1頁-25|publisher = 広島大学|url = http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/JNL/29/1matsuo.pdf|format = PDF|accessdate = 2014-02-28}}
* {{Cite journal|和書|author = 松尾雅嗣|coauthors = 谷整二|year = 2007|title = 広島原爆投下時の一時避難場所としての川と橋|journal = 広島平和科学|volume = 29|pages = 1頁-25|publisher = 広島大学|url = https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/list/HU_journals/AN00213938/29/--/item/30943|format = PDF|accessdate = 2022-01-06}}
* [http://masuda901.web.fc2.com/page2g1x09.html 本川橋]
* [http://www.tobunken-archives.jp/DigitalArchives/search/?lang=&m=1&t=0&pager.offset=0&len=20&orderBy=recordId&order=ASC&title=&keyword=%E6%9C%AC%E5%B7%9D%E6%A9%8B&submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&x=45&y=13&area1=0&area2=0&area3=0&area4=0&theme1=0&theme2=0 戦前の絵葉書アーカイブ] - 東北芸術工科大学。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[九十九橋 (広島県)|九十九橋]] - [[瀬野川]]にかかる、旧光海軍工廠の廃材を利用した鋼トラス橋
* [[九十九橋 (広島県)|九十九橋]] - [[瀬野川]]にかかる、旧光海軍工廠の廃材を利用した鋼トラス橋
* [[本川公衆便所]]


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2024年5月10日 (金) 06:24時点における最新版

曖昧さ回避 この項目では、広島県の広島平和記念公園の橋について説明しています。新潟県の信濃川に架かる本川橋については「本川橋 (新潟県)」をご覧ください。
本川橋
中島町より
基本情報
国 日本の旗 日本
所在地 広島県広島市中区
左岸:中島町 - 右岸:堺町[1]
交差物件 太田川水系旧太田川
用途 道路橋
路線名 広島市道中2区2号線[3]
管理者 広島市
設計者 上部工 : 本多勇（広島県土木部）ら[2]
下部工 : 不明
竣工 上部工 : 1949年[4]
下部工 : 1897年11月[4]
座標 北緯34度23分37.4秒 東経132度27分02.2秒 / 北緯34.393722度 東経132.450611度 / 34.393722; 132.450611
構造諸元
材料 鋼橋
全長 73.2m[4][2]
幅 幅員 : 6.6m[4]（6.7m[2]、8.5m[3]）
地図
本川橋の位置（日本内）
本川橋
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
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本川橋（ほんかわばし）は、広島県広島市の旧太田川（本川[5]）にかかる道路橋。上流側に人道橋（歩道橋）を併設している。

安土桃山時代あるいは江戸時代初期に木橋「猫屋橋」として架橋、1897年に鋼トラス橋に永久橋化され、落橋に伴い現在の橋は1949年に再架橋されたもの。当初は西国街道筋、近代は国道筋の、現在は市道の橋である。西方面から広島平和記念公園へと通ずる橋の1つ。

現橋の橋脚は1897年に作られたものを補修しながら現在まで使っており、1945年原爆被災した被爆建造物でもある。現橋の鋼製の桁は旧光海軍工廠の廃材を再利用している。土木学会選奨土木遺産。

歴史

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近世

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かつてこの地の北側に「楠橋」という橋があり、それが本川橋の起源とするものがある[6]。

安土桃山時代に毛利輝元が広島城下を整備した際に、府中の松崎八幡宮の棚守を務めた加藤九郎右衛門兼鎮が当地に「猫屋」を開業した[6]。その時に猫屋が自費で木橋を建設したのがこの橋の始まりと伝えられている[4][6][7]。九郎右衛門は12人の子女を伴い渡り初めをしたという[6]。当時橋名は「猫屋橋」[4]であり、猫屋は豪商として当地で繁栄を極め橋のみならず川や町にその名が付くことになり[8][7]、現在も猫屋町として残っている。

広島市が公開する資料では、天正年間（1573年から1592年）ごろ広島城を整備した際に架橋としている[4]。

  • 天正17年（1589年）3月輝元は現地調査、天正18年（1590年）末に広島城がほぼ竣工している[9]
  • 毛利氏時代の広島城絵図『芸州広嶋城町割之図』で（西国街道筋となる）猿猴橋・京橋・元安橋は描かれているが猫屋橋（本川橋）は描かれていない[10][11]。これと江戸後期の地誌『知新集』内の記載から、西国街道は毛利氏の次に入封した福島正則藩政時代、江戸時代初期に成立したとする説がある[11]。
  • 慶長元年（1596年）『毛利氏奉行人連署書状』に文禄の役のため名護屋城に向かう豊臣秀吉が通るため、（西国街道筋）己斐橋と「広島中の小橋」の修繕を命じられた事が書かれている[11]。このことから西国街道の原型は毛利氏時代、安土桃山時代に形成されていたとする説がある[11]。

以上から毛利氏時代あるい福島氏時代に山陽道（西国街道）を城下に引き込みこの橋は西国街道筋の橋となった[11]。

  • 『寛永年間広島城下絵図』。"ねこやはし"が確認できる。
    『寛永年間広島城下絵図』。"ねこやはし"が確認できる。
  • 『正保城絵図安芸国広島城所絵図』。城の下側を横断する道が西国街道であり左から2つ目の橋が猫屋橋（本川橋）。
    『正保城絵図安芸国広島城所絵図』。城の下側を横断する道が西国街道であり左から2つ目の橋が猫屋橋（本川橋）。
『芸州厳島図会 六月十六夜広島本川口の図』。右側が猫屋橋（本川橋）。かつて管絃祭で管絃船を併走する「御供船」と呼ばれた船がこの付近から出ていた。

藩政時代において防犯上の理由により架橋制限されており[12]、この橋は本川に唯一架けられた西国街道筋の橋であった[7]。この地は当時は島だった江波の港から運ばれた積荷の中継地点として、西詰の西国街道筋にあたる堺町は問屋街として栄えた[7]。現在も残る雁木から荷揚げされていた。

また広島藩は太田川水系の治水に力を入れたが洪水は絶えず、記録に残るものでは寛政8年（1796年）城下で発生した大洪水で現在の中島町が浸水し猫屋橋も落橋している[13]。

近代以降

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大正時代の絵葉書

明治時代に入って國道筋の橋となる[6]。当時の地図表記から、1877年（明治10年）から1894年（明治27年）の間、明治20年代までに現在の"本川橋"に改名されたと考えられている[4][7]。

1897年（明治30年）11月トラス橋（ボウストリングトラス）に架け替えられた[4][6][7][14]。長さ40間（約72.7m）、幅4間（約7.27m）、工事費約4万3,570円[6]（3万4,428円[14]とも）。

広島初竣工の鋼橋であり、当時広島の繁華街だった中島町と問屋街・境町を結ぶ目抜き通りに架けられた橋であり、その珍しさから観光名所となった[4][7]。昭和期に売られていた広島銘菓"本川饅頭"は、この橋完成を記念して作られたものである[7]。近世では問屋街として栄えた本川橋西詰は、近代に入ると倉庫群が立ち並んだ[7]。西詰交差点には1913年（大正2年）広島商業銀行の本店が新築移転している[7]。

大正時代まで本川橋筋は国道であったが、昭和初期に相生通り（相生橋）が新しい国道として整備されることになった[15]。太平洋戦争に入ると金属類回収令により市内の橋の鋼製欄干は次々と外されたが、この橋からは鋼部材が外されたかどうかは不明。

明治末期頃
被爆後の本川橋。撮影者は宮武甫。オーストラリア戦争記念館所蔵。
現橋（2016年）
  • 原爆投下前
    原爆投下前
  • 原爆投下後
    原爆投下後
  • 原爆投下前
    原爆投下前
  • 原爆投下後
    原爆投下後

1945年（昭和20年）8月6日被爆。爆心地より約250mに位置した[4]。爆風により一部の桁が橋台から外れ片方だけがぎりぎり引っかかっていた状況であり、通行は不可能であった[4][16]。左岸側の中島町は壊滅、避難者は上流の相生橋や下流の新大橋（現在の西平和大橋）から西へ避難して行った。また、当時添架されていた水道管は切断され、給水不能となった[4][16]。直後、軍や救援隊によりここから元安橋までの国道筋の整理が行われ、本川橋も板を渡しただけの応急修理がなされていた[16][17]。

そこへ同年9月に上陸した枕崎台風により更に損傷し、同年10月阿久根台風による水害により完全に落橋した[4][16][18]。これら台風災害により、下流側の新大橋・住吉橋も落橋した[19]。

その後、また板を渡しただけの仮橋が架けられていた[2]。戦後の物資不足が続いていたが、交通の要所であったため、真っ先に再建されることが決定、1949年（昭和24年）残った橋脚を利用して架け直された[4][2][7]。その部材には空襲で壊滅状態となった旧光海軍工廠の廃材を使っている[4][2]。

その後、数度補修保全工事を行いつつ現在までその形をとどめている[7]。2021年（令和3年）土木学会選奨土木遺産に認定された[20]。

周辺

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1988年の平和公園周辺[21]。

橋脚は被爆建造物にあたる。その下には毛利輝元の島普請による石組が残っている[1]。上流に元安川の分流点と相生橋、下流に西平和大橋がある。

  • 明治末期
    明治末期
  • 2008年
    2008年

西に進むと西詰交差点で直進できずカギ型になっているが、これは枡形の名残である[22]。西詰南側には常夜灯が、周辺の護岸には雁木造りの揚場や舟繋の石柱や船舶の燥場も残っている[1]。被爆建物本川公衆便所も西詰南側にある。西詰北側にはかつて韓国人原爆犠牲者慰霊碑があった。1945年李鍝が被爆により最期を遂げた場所でもある。道に沿って西に進むと広電土橋停留場があり更に進むと天満橋にたどり着く。

  • 本川浜恵美須神社と雁木
    本川浜恵美須神社と雁木
  • 本川公衆便所
    本川公衆便所

東詰一帯は平和公園である。北側には東側河岸用と橋桁との繋ぎ目部分の路面用の石が残されている。これも被爆遺構であり、2003年の橋補修時に取り外され、この地にモニュメントとして置かれている。『この世界の片隅に (映画)』に登場した雁木はこの橋の東詰あたりにあったが、現在は形状が異なる。東へ道沿いに進むと元安橋がある。

  • 被爆石材
    被爆石材

ギャラリー

[編集]
  • 橋全体 相生橋より
    橋全体 相生橋より
  • 橋全体 中島町より
    橋全体 中島町より
  • 欄干 堺町より
    欄干 堺町より

脚注

[編集]
[脚注の使い方]
  1. ^ a b c “2.本川橋と雁木(がんぎ)跡”. 広島市. 2022年1月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f “旧光海軍工廠廃材 本川橋も再建”. 中国新聞 (2006年2月12日). 2006年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月6日閲覧。
  3. ^ a b ひろしま地図ナビ
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p “本川橋”. 広島平和記念資料館. 2022年1月6日閲覧。
  5. ^ “太田川と平和記念公園”. ひろしま文化大百科. 2022年1月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 『広島案内記』吉田直次郎、1913年。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/947802/38。2022年1月6日閲覧。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l “広島の歴史的風景” (PDF). 広島県. 2022年1月6日閲覧。
  8. ^ 広島市 2005, p. 291.
  9. ^ 広島市 2005, p. 6.
  10. ^ “しろうや!広島城 第24号” (PDF). 広島城博物館. 2022年1月6日閲覧。
  11. ^ a b c d e “しろうや!広島城 第43号” (PDF). 広島城博物館. 2022年1月6日閲覧。
  12. ^ “しろうや!広島城 第20号” (PDF). 広島城博物館. 2022年1月6日閲覧。
  13. ^ “太田川水系の流域および河川の概要” (PDF). 国土交通省河川局. p. 27. 2022年1月6日閲覧。
  14. ^ a b “「がんす横丁」シリーズ　續がんす横丁　（二十九）元柳町（東本川）㊤”. 中国新聞 (2020年5月24日). 2022年1月6日閲覧。
  15. ^ 「地方通信」（PDF）『道路の改良』第11巻第6号、土木学会、1931年5月、2022年1月6日閲覧。 
  16. ^ a b c d 広島市 2005, p. 252.
  17. ^ 広島市 2005, p. 295.
  18. ^ 広島市 2005, p. 289.
  19. ^ 広島市 2005, p. 448.
  20. ^ “九十九橋”. 広島県. 2022年1月6日閲覧。
  21. ^ 国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
  22. ^ “しろうや!広島城 第11号” (PDF). 広島城博物館. 2022年1月6日閲覧。

参考資料

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関連項目

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ウィキメディア・コモンズには、本川橋に関連するカテゴリがあります。
広島市内の主な橋梁
太田川

太田川放水路以北

天満川
旧太田川
（本川）
元安川
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猿猴川

広島湾岸にかかる主な橋（東から）

現存しない橋梁（記事がある物）

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