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[[File:COLLECTIE TROPENMUSEUM Drager met kruiwagen TMnr 10007166.jpg|thumb|手押し車]]
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'''手押し車'''(ておしぐるま)は手押し式の運搬[[台車]]。山道や畑や工事現場などで[[農作物]]や資材を運ぶのに利用される。[[道路交通法]]上は[[軽車両]]に分類されている。引っ張る[[リヤカー]]とは使用する向きが逆であり、構造も異なる。発祥は古代[[中国]]の木製の手押し車・[[木牛]]だといわれている{{誰|date=2016-10-20}}
'''手押し車'''(ておしぐるま)は手押し式の運搬[[台車]]。山道や畑や工事現場などで[[農作物]]や資材を運ぶのに利用される。[[道路交通法]]上は[[軽車両]]に分類されている。引っ張る[[リヤカー]]とは使用する向きが逆であり、構造も異なる。


{{読み仮名|'''手車'''|てぐるま}}ともいう。
{{読み仮名|'''手車'''|てぐるま}}ともいう。
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== 荷物運搬専用の手押し車 ==
== 荷物運搬専用の手押し車 ==
=== 1輪 ===
=== 1輪 ===
一輪のものは工事現場などで石材や土砂、セメント、その他の施工資材を運搬するために用いられる<ref name="jinriki">{{Cite web |url= https://jflc.or.jp/media/niwa_navi/20120330_1246_33_0706.pdf |title=人力による運搬組立て工法の手引 |publisher=日本造園組合連合会 |accessdate=2019-10-16}}</ref>。
一輪のものは工事現場などで石材や土砂、セメント、その他の施工資材を運搬するために用いられる<ref name="jinriki">{{Cite web|和書|url= https://jflc.or.jp/media/niwa_navi/20120330_1246_33_0706.pdf |title=人力による運搬組立て工法の手引 |publisher=日本造園組合連合会 |accessdate=2019-10-16}}</ref>。

====名称====
==== 名称 ====
[[File:Schubkar--Modern-S---w.jpg|thumb|いわゆる「ネコ」]]
[[File:Poly Cart 2.jpg|thumb|二輪のもの]]
[[File:Schubkar--Modern-S---w.jpg|thumb|300px|いわゆる「ネコ」]]
[[File:Poly Cart 2.jpg|thumb|300px|二輪のもの]]
[[車輪]]が1つの一輪車の手押し車は{{読み仮名|'''孤輪車'''|こりんしゃ}}という<ref>{{Cite book |和書 |author=原子朗 |year=1999 |title= 新・宮沢賢治語彙辞典 第2版|page=77 |publisher= 東京書籍 }}</ref>。孤輪車の名称は[[国税庁]]の「収支内訳書(農業所得用)の書き方」にある「主な減価償却資産の耐用年数表」の「運搬用機具」の欄の例示にも用いられている名称である<ref>参考として[http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2008/pdf/01_26.pdf 収支内訳書(農業所得用)の書き方]7ページ参照</ref>。
[[車輪]]が1つの一輪車の手押し車は{{読み仮名|'''孤輪車'''|こりんしゃ}}という<ref>{{Cite book |和書 |author=原子朗 |year=1999 |title= 新・宮沢賢治語彙辞典 第2版|page=77 |publisher= 東京書籍 }}</ref>。孤輪車の名称は[[国税庁]]の「収支内訳書(農業所得用)の書き方」にある「主な減価償却資産の耐用年数表」の「運搬用機具」の欄の例示にも用いられている名称である<ref>参考として[http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2008/pdf/01_26.pdf 収支内訳書(農業所得用)の書き方]7ページ参照</ref>。


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さらに、{{読み仮名|'''猫車'''|ねこぐるま、ねこしゃ}}、{{読み仮名|'''猫'''|ねこ}}とも呼ばれる<ref name="jinriki" />(2輪車を含めて同様の運搬用具をいうこともある)。語源にはいくつかの説がある。
さらに、{{読み仮名|'''猫車'''|ねこぐるま、ねこしゃ}}、{{読み仮名|'''猫'''|ねこ}}とも呼ばれる<ref name="jinriki" />(2輪車を含めて同様の運搬用具をいうこともある)。語源にはいくつかの説がある。
* 建設用語で狭い足場を俗に「猫足場」といい、その狭いところに入ることが出来るところから来ているという説<ref name="jinriki" />
* 建設用語で狭い足場を俗に「猫足場」(英語の「catwalk」)といい、その狭いところに入ることが出来るところから来ているという説<ref name="jinriki" />
* 漆喰を練った「練り子」を運ぶ道具でありその略であるという説<ref name="jinriki" />
* 漆喰を練った「練り子」を運ぶ道具でありその略であるという説<ref name="jinriki" />
* 伏せた状態で置いたとき猫の丸まっている姿に似ているからとする説<ref name="jinriki" />
* 伏せた状態で置いたとき猫の丸まっている姿に似ているからとする説<ref name="jinriki" />
* 運搬時に猫のようにゴロゴロと音を立てることに起因するとする説<ref name="jinriki" />
* 運搬時に猫のようにゴロゴロと音を立てることに起因するとする説<ref name="jinriki" />
* 木製であった頃、把っ手の部分の加工が[[ネコ|猫]]の手のように見える形状であったからという説


最も有力なのは猫足場に由来する説といわれている<ref name="jinriki" />。しかし、いずれも根拠が薄いともわれてお語源ははきりとていない<ref>猫車の真正の語源について 2017 安田女子大学現代ビジネス学会誌第5号</ref>。ドイツでは手押し車を俗にKipp-Japaner (日本人) と呼ぶ
しかし、いずれも根拠が薄く後から考えた俗説であ、木製であた頃に把っ手の部分の加工が[[ネコ|猫]]の手のように見える形状であったからが正しいとされる<ref>猫車の真正の語源について 2017 安田女子大学現代ビジネス学会誌第5号</ref>。


[[ドイツ語]]では大型の工事用手押し車を俗にKipp-Japaner(日本人)と呼ぶ。
====構造====
車体の前部に車輪、後部にはグリップの付いた2本の取っ手があり、取っ手を持ち上げながら前方に押すことで物を運搬する<ref name="jinriki" />。近年主流の後部開放式ラダーフレームはおもに薄肉鋼管で出来ているが、アルミニウム管を使ったものもある。U字に車輪を取り巻くように曲げた鋼管で、荷台枠兼フレームの前方寄り下部に車輪を設置している。取っ手と車輪の間の下部には、薄肉鋼管やL字鋼製の固定式スタンドがある。


==== 構造 ====
山間地や下りの急勾配での運搬作業用として、自転車の後輪についているような[[バンドブレーキ]]を装備し、その[[レバー (操作機具)|レバー]]が右左どちらかの取っ手に付いているものもある。
車体の前部に車輪、後部にはグリップの付いた2本のハンドルがあり、ハンドルを持ち上げながら前方に押すことで物を運搬する<ref name="jinriki" />。近年主流の後部開放式ラダーフレームはおもに薄肉鋼管で出来ているが、アルミニウム管を使ったものもある。車輪を取り巻くようにU字形に曲げた鋼管で、荷台枠兼フレームの前方寄り下部に車輪を設置している。ハンドルと車輪の間の下部には、薄肉鋼管やL字鋼製の固定式スタンドがある。


山間地や下りの急勾配での運搬作業用として、自転車の後輪についているような[[バンドブレーキ]]を装備し、その[[レバー (操作機具)|レバー]]が右左どちらかのハンドルに付いているものもある。
[[タイヤ]]は[[ゴム]]のチューブ式のものが多いが、過酷な使用や屋外への放置でのパンクが多いため、近年ではノーパンクタイヤを装備したものもある。


[[タイヤ]]は[[ゴム]]のチューブ式のものが多いが、過酷な使用や屋外への放置での[[パンク]]が多いため、近年ではノーパンクタイヤを装備したものもある。
荷台は、一般型は1m程度四方深さ30cm程度の鋼板プレス製のものが取り付けられ、蝶ねじ1本で留められているため工具がなくとも取り外しができる。荷台の大きさは、一才や二才といった表示(一[[才]]は1立方[[尺]]、約0.027826㎥)で区別される。工事現場でよく見かけるものは、砂やセメントを運ぶのに適した深底になっている。こちらはやや肉厚の鋼板で、取り外しは考えられていない。


荷台は、一般型は1 m程度四方深さ30 cm程度の鋼板プレス製のものが取り付けられ、蝶ねじ1本で留められているため工具がなくとも取り外しができる。荷台の大きさは、一才や二才といった表示(一[[才]]は1立方[[尺]]、約27.826リットル)で区別される。工事現場でよく見かけるものは、[[土壌|土]]、[[]]、練った[[コクリー]]などを運ぶのに適した深底になっている。こちらはやや肉厚の鋼板で、取り外しは考えられていない。
二輪以上を装備する[[荷車]]に比べると直立安定性は悪いため、不慣れな場合にはひっくり返すこともよくあるが、車幅よりも狭い足場を通すことができたり、車輪を中心にしてその場で方向転換できる、進行方向に対して左右に傾斜している場所でも車体の水平を保つことができるなど取り回しの自由度が高いため、熟練すれば二車以上の荷車よりはるかに便利に使える。


二輪以上を装備する[[荷車]]に比べると直立安定性が低いため、不慣れな場合にはひっくり返すこともよくあるが、車幅よりも狭い足場を通すことができたり、車輪を中心にしてその場で方向転換できる、進行方向に対して左右に傾斜している場所でも車体の水平を保つことができるなど取り回しの自由度が高いため、熟練すれば二車以上の荷車よりはるかに便利に使える。
===2輪以上===

=== 2輪以上 ===
工事現場などで用いられる台車には、2輪、3輪、4輪のものもあり、'''地車'''あるいは'''でっち'''とも呼ぶ<ref name="jinriki" />。
工事現場などで用いられる台車には、2輪、3輪、4輪のものもあり、'''地車'''あるいは'''でっち'''とも呼ぶ<ref name="jinriki" />。


工事用1輪車の2輪版は、1輪車よりも広く平らな荷台を備えるが、特に積載安定性は高くなく、悪路走破性はむしろ悪いため、1輪車ほどには普及していない。
工事用1輪車の2輪版は、1輪車よりも広く平らな荷台を備えるが、特に積載安定性は高くなく、悪路走破性はむしろ悪いため、1輪車ほどには普及していない。


重量物運搬用の[[台車]]は4輪にキャスター付きの車輪を備える。屋内での用途が多いが、引っ越しや配達等で公道上で使用する場合は軽車両としての扱いを受ける。
重量物運搬用の[[台車]]は4輪にキャスター付きの車輪を備える。屋内での用途が多いが、引っ越しや配達等で公道上で使用する場合は軽車両としての扱いを受ける(条件によって、小型のものは[[歩行者]]([[歩行補助車]]等)として扱われる)


== ショッピングカート ==
== 歩行補助車、小児用の車、ショッピングカートなど ==
[[スーパーマーケット]]などでの買い物に用いられる4輪の手押し車は[[ショッピングカート]]称される。荷車類ではあるが、日本の法律において例外的に[[歩行者]]([[歩行補助車]]等)として扱われる。
形態上または概念上、手押し車と考えらるものを列挙する。日本の[[道路交通]]で[[歩行者]]([[歩行補助車]]等)として扱われる。


* [[歩行補助車]]
== 乳幼児用の手押し車 ==
** [[シルバーカー]] - 高齢者向けの手押し車であって、荷物の運搬を主眼とするもの。歩行補助の目的ではなく体重を掛ける設計になっていない。[[介護保険]]の対象外。
乳幼児用の4輪車のうち、乳幼児が乗車するものではなく、手押し車の形態のものをさすことがある。荷物運搬用と言うよりは、乳幼児の玩具的性格の方が強い
** [[四輪歩行器]]([[四輪歩行車]]  - 高齢者向けの手押し車であって、歩行の補助を主眼とするもの。[[歩行器]]ほどでは無いがある程度体重を掛けられる設計になっている。介護保険の対象。


* 小児用の車
道路交通法上、乳幼児の用の手押し車は、一般的には歩行者扱いと考えられる。
** 一般的な構造の乳母車、ベビーカー、大型[[乳母車]](お散歩カー)、避難車
** 乳幼児用の'''手押し車''' - 荷物運搬用と言うよりは、乳幼児の玩具的性格の方が強いもの
* [[ショッピングカート|ショッピング・カート]] - [[スーパーマーケット]]などでの買い物に用いられる4輪の手押し車
* [[キャリーカート]](買い物以外の空港などにおける手荷物用の台車で、ショッピングカートに類するもの。また、車輪が付いた小型の荷物運搬用のシャシで、搬送台車とは言えないものも含む。)
* [[トロリーバッグ]]、トロリーケース<!-- 美しい模様に編み上げられた長方形の籐かごの下に、多くのコイルスプリングが備えられ、台車の四隅に幼児用3輪車のような車輪がつき、押し手がつく。車輪にはめっきスチールフェンダーと赤色反射器がつくものもある。子守を終了した老人が、その延長で軽量荷車や杖がわりに使用し続ける場合もあるが、近年うば車自体がベビーカーに取って代わり、老人専用の椅子付手押し車(シルバーカー)が一時主流となった。それも電動老人車(シニアカー)の普及で徐々に見かけなくなってきた。また、漫画子連れ狼の仕込み手押し車は映画やテレビドラマ化もされ、最もメディアに登場した手押し車といえる。NHKドラマおしんにも類似品が登場していた。 --><!-- 分類と定義上が面倒なのと記載の目的がはっきりしないので一旦コメントアウト。適宜関連項目に転記も可。 -->


== 法令 ==
<!-- 美しい模様に編み上げられた長方形の籐かごの下に、多くのコイルスプリングが備えられ、台車の四隅に幼児用3輪車のような車輪がつき、押し手がつく。車輪にはめっきスチールフェンダーと赤色反射器がつくものもある。子守を終了した老人が、その延長で軽量荷車や杖がわりに使用し続ける場合もあるが、近年うば車自体がベビーカーに取って代わり、老人専用の椅子付手押し車(シルバーカー)が一時主流となった。それも電動老人車(シニアカー)の普及で徐々に見かけなくなってきた。また、漫画子連れ狼の仕込み手押し車は映画やテレビドラマ化もされ、最もメディアに登場した手押し車といえる。NHKドラマおしんにも類似品が登場していた。 --><!-- 分類と定義上が面倒なのと記載の目的がはっきりしないので一旦コメントアウト。適宜関連項目に転記も可。 -->== 法令 ==
{{Main|荷車#法令}}日本の[[道路交通法]]では、手押し車等は、たとえ歩行者が通行させているものであっても、一部を除いて[[軽車両]]の扱いである。ただし、条件によっては[[歩行補助車]]等に該当し、[[歩行者]]の扱いとなる場合もある。''詳細な条件や具体例については、「[[荷車#法令]]」を参照のこと。''
{{Main|軽車両}}


=== 動力 ===
=== 動力あり ===
日本の[[道路交通法]]では、手押し車は一部を除て[[軽車両]]扱いである。ただし、[[電動機]]や[[内燃機関]]付きのものは、原則として[[原動機付自転車]]または[[自動車]]扱いとなる(「[[原動機付自転車#電動の小型車両等に対する規制]]」を参照)。ただし、一定の基準を満たす電動車等は[[歩行補助車]]または軽車両扱いとなる「[[#原動機を用いる軽車両]]」参照
手押し車、たとえ歩行者が通行させてるものであっても、[[電動機]]や[[内燃機関]]付きのものは、原則として[[原動機付自転車]]または[[自動車]]扱いとなる。ただし、一定の基準を満たす電動の手押し車等は[[歩行補助車]]または軽車両扱いとなる。''詳細な条件や具体例については、「[[車#法令]]」参照のこと''


== 脚注 ==
=== 外見上手押し車のもの ===
{{脚注ヘルプ}}
以下は外観や構造上は手押し車であるかまたは類似しているが、機能的には、本項目に挙げているような荷物運搬専用、または乳幼児の玩具的手押し車ではない。これらは、日本の道路交通法上、[[歩行者]]扱いと規定されている。


=== 出典 ===
* [[歩行補助車]]
{{Reflist}}
** [[シルバーカー]] - 高齢者向けの手押し車であって、荷物の運搬を主眼とするもの。歩行補助の目的ではなく体重を掛ける設計になっていない。[[介護保険]]の対象外。
** [[四輪歩行車]]  - 高齢者向けの手押し車であって、歩行の補助を主眼とするもの。[[歩行器]]ほどでは無いがある程度体重を掛けられる設計になっている。介護保険の対象。


==脚注==
== 関連項目 ==
* [[軽車両#軽車両でないもの]]
<references />
* [[リヤカー]]

* [[車]]
==関連項目==
* [[大八車]]
*[[軽車両#軽車両でないもの]]
*[[リヤカー]]
*[[大八車]]
* [[四輪歩行車]]
* [[四輪歩行車]]
*[[小児用の車]]
* [[小児用の車]]
*[[シルバーカー]]
* [[シルバーカー]]
* [[乳母車]]
* [[乳母車]]
* [[歩行器]]
* [[歩行器]]
*[[車椅子]]
* [[車椅子]]
*[[シニアカー]]
* [[シニアカー]]
*[[ショッピングカート]]
* [[ショッピングカート]]
*[[台車]]
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2024年6月4日 (火) 00:00時点における最新版

手押し車

手押し車(ておしぐるま)は、手押し式の運搬台車。山道や畑や工事現場などで農作物や資材を運ぶのに利用される。道路交通法上は軽車両に分類されている。引っ張るリヤカーとは使用する向きが逆であり、構造も異なる。

手車てぐるまともいう。

荷物(あるいは時と場合によっては乳幼児、負傷者など)運搬用が主であるが、乳幼児の玩具的性格を持つ手押し車もある。

荷物運搬専用の手押し車

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1輪

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一輪のものは工事現場などで石材や土砂、セメント、その他の施工資材を運搬するために用いられる[1]

名称

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いわゆる「ネコ」
二輪のもの

車輪が1つの一輪車の手押し車は孤輪車こりんしゃという[2]。孤輪車の名称は国税庁の「収支内訳書(農業所得用)の書き方」にある「主な減価償却資産の耐用年数表」の「運搬用機具」の欄の例示にも用いられている名称である[3]

また、一輪運搬車[4]と呼ばれることもある。単に一輪車ともいうが、乗車遊具の一輪車と区別するため工事用こうじようあるいは農作業用のうさぎょうよう一輪車と呼ぶこともある。

さらに、猫車ねこぐるま、ねこしゃねことも呼ばれる[1](2輪車を含めて同様の運搬用具をいうこともある)。語源にはいくつかの説がある。

  • 建設用語で狭い足場を俗に「猫足場」(英語の「catwalk」)といい、その狭いところに入ることが出来るところから来ているという説[1]
  • 漆喰を練った「練り子」を運ぶ道具でありその略であるという説[1]
  • 伏せた状態で置いたとき猫の丸まっている姿に似ているからとする説[1]
  • 運搬時に猫のようにゴロゴロと音を立てることに起因するとする説[1]

しかし、いずれも根拠が薄く後から考えた俗説であり、木製であった頃に把っ手の部分の加工がの手のように見える形状であったからが正しいとされる[5]

ドイツ語では大型の工事用手押し車を俗にKipp-Japaner(日本人)と呼ぶ。

構造

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車体の前部に車輪、後部にはグリップの付いた2本のハンドルがあり、ハンドルを持ち上げながら前方に押すことで物を運搬する[1]。近年主流の後部開放式ラダーフレームはおもに薄肉鋼管で出来ているが、アルミニウム管を使ったものもある。車輪を取り巻くようにU字形に曲げた鋼管で、荷台枠兼フレームの前方寄り下部に車輪を設置している。ハンドルと車輪の間の下部には、薄肉鋼管やL字鋼製の固定式スタンドがある。

山間地や下りの急勾配での運搬作業用として、自転車の後輪についているようなバンドブレーキを装備し、そのレバーが右左どちらかのハンドルに付いているものもある。

タイヤゴムのチューブ式のものが多いが、過酷な使用や屋外への放置でのパンクが多いため、近年ではノーパンクタイヤを装備したものもある。

荷台は、一般型は1 m程度四方深さ30 cm程度の鋼板プレス製のものが取り付けられ、蝶ねじ1本で留められているため工具がなくとも取り外しができる。荷台の大きさは、一才や二才といった表示(一は1立方、約27.826リットル)で区別される。工事現場でよく見かけるものは、、練ったコンクリートなどを運ぶのに適した深底になっている。こちらはやや肉厚の鋼板で、取り外しは考えられていない。

二輪以上を装備する荷車に比べると直立安定性が低いため、不慣れな場合にはひっくり返すこともよくあるが、車幅よりも狭い足場を通すことができたり、車輪を中心にしてその場で方向転換できる、進行方向に対して左右に傾斜している場所でも車体の水平を保つことができるなど取り回しの自由度が高いため、熟練すれば二車以上の荷車よりはるかに便利に使える。

2輪以上

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工事現場などで用いられる台車には、2輪、3輪、4輪のものもあり、地車あるいはでっちとも呼ぶ[1]

工事用1輪車の2輪版は、1輪車よりも広く平らな荷台を備えるが、特に積載安定性は高くなく、悪路走破性はむしろ悪いため、1輪車ほどには普及していない。

重量物運搬用の台車は4輪にキャスター付きの車輪を備える。屋内での用途が多いが、引っ越しや配達等で公道上で使用する場合は軽車両としての扱いを受ける(条件によって、小型のものは歩行者歩行補助車等)として扱われる)。

歩行補助車、小児用の車、ショッピング・カートなど

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形態上または概念上、手押し車と考えられるものを列挙する。日本の道路交通法では、歩行者歩行補助車等)として扱われる。

  • 歩行補助車
    • シルバーカー - 高齢者向けの手押し車であって、荷物の運搬を主眼とするもの。歩行補助の目的ではなく体重を掛ける設計になっていない。介護保険の対象外。
    • 四輪歩行器四輪歩行車)  - 高齢者向けの手押し車であって、歩行の補助を主眼とするもの。歩行器ほどでは無いがある程度体重を掛けられる設計になっている。介護保険の対象。
  • 小児用の車
    • 一般的な構造の乳母車、ベビーカー、大型乳母車(お散歩カー)、避難車
    • 乳幼児用の手押し車 - 荷物運搬用と言うよりは、乳幼児の玩具的性格の方が強いもの
  • ショッピング・カート - スーパーマーケットなどでの買い物に用いられる4輪の手押し車
  • キャリーカート(買い物以外の空港などにおける手荷物用の台車で、ショッピングカートに類するもの。また、車輪が付いた小型の荷物運搬用のシャシで、搬送台車とは言えないものも含む。)
  • トロリーバッグ、トロリーケース

法令

[編集]

日本の道路交通法では、手押し車等は、たとえ歩行者が通行させているものであっても、一部を除いて軽車両の扱いである。ただし、条件によっては歩行補助車等に該当し、歩行者の扱いとなる場合もある。詳細な条件や具体例については、「荷車#法令」を参照のこと。

動力あり

[編集]

手押し車等は、たとえ歩行者が通行させているものであっても、電動機内燃機関付きのものは、原則として原動機付自転車または自動車扱いとなる。ただし、一定の基準を満たす電動の手押し車等は、歩行補助車または軽車両扱いとなる。詳細な条件や具体例については、「荷車#法令」を参照のこと。

脚注

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出典

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  1. ^ a b c d e f g h 人力による運搬組立て工法の手引”. 日本造園組合連合会. 2019年10月16日閲覧。
  2. ^ 原子朗『新・宮沢賢治語彙辞典 第2版』東京書籍、1999年、77頁。 
  3. ^ 参考として収支内訳書(農業所得用)の書き方7ページ参照
  4. ^ 意匠分類定義カード(G2) 特許庁
  5. ^ 猫車の真正の語源について 2017 安田女子大学現代ビジネス学会誌第5号

関連項目

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