Amazon.co.jp：カスタマーレビュー: 工作・謀略の国際政治 - 世界の情報機関とインテリジェンス戦 -

黒井文太郎氏は日本のインテリジェンス関係のジャーナリストではもっとも信頼がおける人物の１人だ。モスクワやカイロに駐在していたのでロシアや中東の事情に精通しているうえ、内外の文献を渉猟しており、さらにインテリジェンスの実務家にもよく取材している。陸上自衛隊別班の初代隊長・平城弘通氏は、元部下・阿尾博政氏に回想録で自分の名前を出されたとき、自分にインタヴューしにきたジャーナリストは２人だけで、その１人が黒井氏だったと明かしている。黒井氏の『謀略の昭和裏面史』は戦前・戦中・戦後の日本の情報史を学ぶうえで必読文献といっていい。
その黒井氏の最新刊が本書。Ａ５判の３６７ページで、扉、はじめに、目次、第１章～第７章、奥付からなる。ガザ紛争、ウクライナ戦争といったホット・トピックから、中国の人民監視システム、北朝鮮の恐怖政治、日本の情報機関、サウジアラビア・トルコ情報機関の軋轢、ヴェネズエラにおけるキューバ情報機関の暗躍、ロシア情報機関、インド・パキスタン情報機関の死闘、ドイツの右翼クーデター未遂の内幕、シリア秘密警察の実態、さらに世界最大の米国情報機関にまで筆が及んでいる。最近の米国のスパイ映画を観ているとヴェネズエラが悪役として登場することが多いが、本書を読むとその背景が呑みこめる。
ただ唯一引っかかるのは、黒井氏が、陸上自衛隊別班は冷戦時代には存在したが現在秘密情報部隊としての実態はないとしている点だ。石破茂元防衛大臣は『週刊文春』の取材に、別班は存在している（「存在していた」ではなく「存在している」という現在形）と明言している。石破氏が防衛大臣を務めたのはポスト冷戦期だから、黒井氏の記述と矛盾する。石破氏が存在しないものを存在するといって得られるメリットは何もないだろうから、石破氏の言い分のほうが真実に近いのではないだろうか。
ちなみに、黒井氏が編集長を務めていた『ワールド・インテリジェンス』は日本初の本格的インテリジェンス専門誌だったが、現在休刊中だ。実質一人で編集していたのだろうからその苦労はひとかたならなかったろうが、ぜひ復刊を望む。

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odsakk

★★★

2024年7月11日に日本でレビュー済み

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モンモン

いつまでも日本人でいたいすべての人に

2024年6月15日に日本でレビュー済み

日本で普通の暮らしをしているとツチノコ級都市伝説扱いされかねない、しかし現実に世界中で暗躍する｢諜報機関｣のお話。

この本を読む前の事だ。
ハーバードフーバー著｢裏切られた自由｣の衝撃を皮切りに、国防や国際政治、半導体、地政学等に関する著書を読み漁る日々を送る中、ふと友人との会話で、｢この国は現在ミサイルが飛んでこない代わりに、人権尊重や多様性など耳障りの良い言葉にラッピングされた危険物を送り込まれている｣と言ってみた。
友人は戸惑い、憐れむように微笑んで｢そうだね、世の中にたくさんある考え方の中の一つには、そんな考え方もあるのかもしれないね｣と優しく答え、すぐに話題を変えた。おかしな陰謀論か新興宗教に嵌まった人間に見えたのだろう。そして日本人の大半は彼女の様な反応をするだろう。
日本に危機が差し迫っていると日本人が気付くのはいつか。或いは沖縄が中国になってしまうまで気付かないのか。

特に｢第2章　知られざる情報戦、ウクライナ侵攻の深層｣は尖閣を巡り某国と睨み合いの続く日本と重なる部分が多かった。まず飛んでくるのはミサイルではなく、フェイクニュースや偽アカウントによる印象操作なのだろう。後者に限ってはもう始まっている事が、次章｢習近平の恐怖の監視システムとスパイネットワーク｣により伝わる様になっている。この辺りは自衛隊元幹部岩田清文氏の｢中国、日本侵攻のリアル｣と併せて読むと、何に警戒すべきか、実際どんな事が起こりうるのか想像しやすい。

また、ロシアによるウクライナ侵攻については、のどかな農業国であるはずのウクライナが、他国が後方支援しているとはいえ2年以上大国ロシアに抵抗を続けられている事を不思議に思っていたが、2014年クリミア併合以降、水面下でアメリカがウクライナの諜報機関を育て電磁波攻撃や盗聴などノウハウを伝えていた事を知り、大いに納得した。

日本にも｢その時｣が訪れた時、政府はどうするか。自衛隊は？米軍は？私達国民はどうすれば良いのか。そもそも｢その時｣がこない為に、日本を守る為に、日頃から情報を正しく選別し、有事に備えれる事が大切なのではないか。

ともかく、黒井氏の見識の広さに脱帽した。なるべく多くの日本人に読んでほしい本だ。

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SGM

インテリジェンスを知らずして、紛争は語れない

2024年3月15日に日本でレビュー済み

実務関係のプロから絶賛される、インテリジェンスの大家、黒井氏の新刊です。
宇露戦争から、ガザ紛争、という現在継続中の深刻な戦いから、中国の監視システム、北朝鮮の暗殺組織、イラン、サウジ、ドイツのクーデター、そして日本の情報機関の解説まで、多岐にわたる内容でした。

インテリジェンスを体系的に学ぶ必要がある日本。
本書はまさに教科書としても必須ではないでしょうか。

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すみれの言葉

グローバリズム視点のインテリジェンス

2024年4月28日に日本でレビュー済み

各国のインテリジェンスについて詳細に書かれていて勉強になりました。
しかし、CIAの工作、謀略については全く言及ぐなく、正義の機関であるような書かれ方は残念です。世界中で内乱、革命、戦争を画策してきたことは言及するべきではないでしょうか。
また、陰謀論とまとめてしまうのはインテリジェンスとして残念です。反ワクチンは陰謀論など全く信用できません。既に日本でも2000人以上の死者を出しており、その害は図り知れません。
ウクライナ戦争でも、ロシア擁護は陰謀論と片付けてはいけません。トッドやミアシャイマーも陰謀論なのですか。
グローバリストの視点のインテリジェンスです。
日本にもインテリジェンス機関が必要なのは間違いありませんが、日本の国益を真に考えたインテリジェンス機関が求められます。

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