Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: 日ソ戦争 帝国日本最後の戦い (中公新書)
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日ソ戦争 帝国日本最後の戦い (中公新書)
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.3
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日ソ戦争 帝国日本最後の戦い (中公新書)
麻田雅文
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日本から
Mt.Crow
5つ星のうち5.0
領土と人と物資の強奪、それが昔も今もロシアの戦争
2024年8月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第2次世界大戦の末期にソ連が日ソ中立条約を破って対日参戦したことは歴史的知識として知られているが、それが戦争の冷酷な現実であり、かつ、ヤルタ秘密会談でアメリカの要請を受けた参戦であるという理解が一般であろう。
しかし、旧ソ連崩壊後閲覧可能になったロシア側の資料等を踏まえた本書では、日ソ戦の実相がルーズベルト、スターリン、トルーマンらの当時の思惑とともに生々しく示されている。
まず、ルーズベルトのスターリンに対する執拗な参戦要請である。特に、日本本土上陸戦を避けたいルーズベルトは、ソ連軍による日本の都市空爆や米軍への航空基地提供まで求めている。
これに対し、スターリンは独ソ戦の大勢が決した1944年末以降、軍隊を西部から東部に移動させ、物資も大量に移送する。さらに、アメリカに武器・弾薬や食料等の物資を要求し、それに応えてアメリカは大量の援助を北太平洋経由で行う。ソ連はもっとも有利な時期に参戦する機会をうかがっていた。
ところが、日本政府と大本営はソ連参戦直前までソ連の仲介による講話を期待し、近衛文麿を特使として天皇の親書まで託していたというから情勢判断の誤りも甚だしい(天皇親書はスターリンからアメリカに披露された!)。日露戦争後もシベリア出兵やノモンハン戦争でソ連と戦い、関東軍は対ソ戦を想定していたというのに、主観的な願望による情勢評価で敵にすがろうとしたわけである。
ソ連の参戦は終戦間際の1945年8月8日で、日本政府がポツダム宣言を受諾した8月15日以後も戦闘が続けられ、9月上旬まで終わらなかったというから驚く。
その間、日本政府は軍隊に戦闘停止を命じ、マッカーサーにソ連側に停戦させるよう陳情したが、ソ連軍は停戦を引き延ばし、千島列島から北方領土の歯舞諸島までを占拠した。トルーマンが制止しなければ北海道の占領まで狙っていたというから、ドイツや朝鮮半島のような分断国家となる危機であった。明らかにソ連は終戦時のどさくさ紛れに領土を強奪したわけだ。
それだけではない。ソ連は多数の日本人をシベリアに抑留して労働に従事させ、侵攻先の日本人の物資を略奪した。独ソ戦による労働力の消耗やソ連国内の物資の窮乏を補うためであるとしても、違法行為というほかない。もちろん、ソ連兵による日本人女性への性暴力を含む民間人の被害もよく知られているが、問題はこれをソ連が全く取り締まらず、スターリンも容認していたことだ(これらは当時においても戦争犯罪であり、東京裁判では元日本兵がB・C級戦犯として裁かれた)。戦後の日本社会で根強い反ソ連・反共産主義意識が醸成されたのも頷ける。
現在のウクライナ戦争でも、ロシアは領土の強奪と多数のウクライナ国民のロシア連行を強行し、国際法違反と戦争犯罪の非難を受けている。
人権と民主主義の存在しない独裁国家の戦争は昔も今も同じということか。
*なお、国策で推進された満州移民の悲劇については『満蒙開拓団 国策の虜囚』(加藤聖文著 レビュー済み)に詳しい。
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雨路 歩
5つ星のうち4.0
今のロシアを知るためにも
2024年9月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
プーチンによるウクライナ侵略の行方はまだ見えない。本書はその遥か昔、スターリン独裁下のソ連が第二次大戦末期の日本をいかに攻略したか、それに日本はどう対処したかを、当時の連合国側の状況を概観しつつ描いた好著である。いま、ロシアという国家を考察する一助にもなろう。
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水の流れ
5つ星のうち5.0
膨大な資料を駆使した詳細な記述
2024年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作戦等が指令発動された月日のみならず、○時○分まで書かれている綿密さに感服しました
これだけ詳細な記述は他にないと思います
範囲も満州、内蒙古、朝鮮北部、千島樺太とソ連軍の作戦範囲全般に及び、これ一冊読めばソ連対日作戦の全貌が理解できると思いました
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Amazon カスタマー
5つ星のうち5.0
ソ連侵攻の真相が良く理解できました。
2024年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一方的にソ連が条約を無視して侵攻したと思っていましたが、アメリカを含む連合国側との協議の上行われた侵攻、アメリカの策謀の結果ともいえる?現在にも通じる力学に感じます。
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ゴウ
5つ星のうち5.0
記憶しておかなければならない。
2024年7月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日ソ戦の情報に触れたのは,初めてであったが,日本人として知っておかなければならないことだ。感情に流されずに,冷静に書かれたこの本は,秀逸と思う。必ず読んで欲しいと思った。
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ボーン・ウイナー
5つ星のうち5.0
第二次大戦終盤、日本政府のあまりにもソ連の仲介を頼りすぎた希望的観測が破滅に導いた
2024年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1941年(昭和16年)4月、日ソ中立条約が調印された。
その後、同年12月8日、真珠湾攻撃によって、日本は米英と太平洋戦争をはじめた。
しかし、あまりにも無謀な戦争であった。日本軍の攻勢は緒戦の間のみ、そのご太平洋の諸島を飛び石伝いに米軍に攻略され、日本は終戦の径を探り始めた。
そこで頼りにしていたのが、日ソ中立条約の相手ソ連である。ソ連が、どんなに悪辣な国かに無知な日本政府はソ連に和平の仲介を依頼する。
しかし、その数年前からアメリカのローズベルト大統領はソ連のスターリンに対日開戦を度々要請している。ソ連は生返事で、なかなかアメリカの要請に応えなかった。それは、当時ドイツと戦っていたソ連は
ドイツ・日本との2正面作戦を避けたかったからである。しかし、昭和20年5月にドイツはソ連に無条件降伏する。これで、戦線を対日一本にする条件は整った。
8月6日、アメリカは広島に原爆を投下。日本はソ連に対して、米英に対する和平の仲介依頼を加速する。
しかし、それに対するソ連の答えは8月9日の対日宣戦布告と満州における陸上部隊の一斉攻撃であった。
この日、アメリカは長崎に2発目の原爆を投下する。
あとは、満州はソ連によって暴虐限りを尽くされる。
日本は8月14日、ポツダム宣言の受諾を各国に通知。無条件降伏である。
アメリは8月15日をもって、対日攻撃を停止。日本では天皇により「終戦の詔勅」が放送される。
しかし、ソ連は対日攻撃をやめない。満州全土に対する攻撃、当時日本領土だった朝鮮に対する攻撃、更に南樺太、千島列島に対する攻撃を続ける。日本の悲劇は、当時日本は対米戦争を主体に考えており、北のソ連に対する守りは手薄になっていた。満州をはじめて、南樺太、千島列島はソ連軍の蹂躙に任され、9月2日日本政府と軍隊がソ連に対する降伏文書に調印した。
我々は一般常識として、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連ばかりに非があるように思いがけだが、アメリカは、ソ連に対してしつこく参戦を要請し、勝利の節は南樺太と千島列島をソ連領にすることを合意していた。これらの領土を完全に武力制圧するまではソ連は対日攻撃をやめなかったのである。
ただ、この「千島列島」は「国後・択捉」までの南千島と、それ以外の北千島とに日本は分けて考えており、南千島は歴史的にロシア領になったことは一度もない。これが日本政府の北方領土返還要求の根拠である。
ただ、ソ連は北海道の北半分も占領する意思をもっていたが、さすがにアメリカもこれを拒否した。
いずれにしても、二国間条約などまったく尊重しないソ連を最後の瞬間まで仲介役として頼りにしていた日本政府の希望的観測には、いまになってみれば只々呆れるばかりである。
更に、ソ連は手に入れた土地の収奪や婦女子に対する暴行は、一種の「報奨金」として黙認しており、
対ソ連和平交渉をした軍人・外交官を含む60万人がシベリア送りになったことはソ連の仮借なさを如実に表している。
今日、ウクライナに対する侵攻も、ソ連という国の性格をしていれば驚くべきことではないのかもしれない。
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土木屋
5つ星のうち5.0
ロシアの本性が良く書かれている
2024年6月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ウクライナの今後がどうなるのか予測のために読んだ。新書ながら良くまとめられて書いてある。この手の本は多数出版されており、読むのが大変なのだが、この本は短時間で読める。安全な日本で、歴史として読んでいられる事は幸運と思っていいだろう。
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紙魚子
5つ星のうち5.0
太平洋戦争から切り離された別個の戦争の物語
2024年6月9日に日本でレビュー済み
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太平洋戦争は昭和20年8月15日の玉音放送で終わったのではなく、8月9日に参戦したソ連はその後も攻撃を続けて、歯舞群島がソ連軍に占領されたのは9月7日だった。
本書は太平洋戦争について、ソ連の満州侵攻開始以降を日米戦争とは切り離した「日ソ戦争」という別個の戦争として捉えるとの概念を固めた上で、その推移を詳細に追った研究書だ。
最初スターリンはポツダム会議には出席したが、ポツダム宣言が出た時にはポツダムにはおらず、宣言にも署名してない。更に9月2日のミズーリ―号艦上の降伏文書調印式にもソ連は参加していない。またサンフランシスコ講和条約にも調印しておらず、未だに日露間には平和条約は締結されていない。要するに「日ソ戦争」はまだ終わっていないのだ。
本書は、太平洋戦争に置いてソ連が如何に特殊な立場に立っていたか、またその特殊性を利用して、ソ連が如何に悪辣な行動をとったかを見事に描き出している。
このソ連の「戦争の文化」は、今日のプーチンのロシアにも営々として引き継がれているという。
一方、既に敗色濃厚であるにもかかわらず、7月に出たポツダム宣言を直ちに受諾せずに逡巡し、あまつさえ、既に参戦する腹でいるソ連に講和の仲立ちを依頼するという愚かな行動をとり、その結果、二発の原爆投下とソ連の参戦を許してしまった大日本帝国の指導者たちが、如何に愚かであったことか、全く言葉も無い。
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美しい夏
5つ星のうち5.0
第二次世界大戦最後の全面戦争。帝国日本最後の戦い。そして、日本の最後の対外戦争であってほしい戦争。
2024年4月28日に日本でレビュー済み
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1945年8月8日にソ連の宣戦布告により始まり、9月初めに、日本の降伏とソ連軍による満州、朝鮮北部、南樺太、千島諸島の占領で終わった日ソ戦争の通史(?)新書である。
著者は2016年に『シベリア出兵』(中公新書)を刊行した人。懐かしい。
一、目次と概要
◯第1章 開戦までの国家戦略ー日米ソの角錐、第2章 満州の蹂躙、関東軍の壊滅、第3章南樺太と千島列島への侵攻、第4章日本の復讐を恐れたスターリン。
◯第1章は開戦まで、計42頁。第2章はソ連軍の満州侵攻で、計121頁あり、本書の中心。最後に朝鮮侵攻が少し。第3章は南樺太戦が中心で、後半は占守島戦と千島列島占領、計71頁。第4章は戦後とシベリア抑留で、計13頁で終わってしまう。
二、私的感想
◯計290頁。よくまとまっていて、読みやすい歴史新書本と思う。
◯引用の一つ一つに、史料番号ではなく、きちんと史料名、書籍名が書かれているのが読者に親切であり、史料、記録者への敬意を感じさせる。一方、証言者のプライバシーの観点から、論題名を削り、書籍名だけ載せている引用史料もある。
◯温厚な(不適切ご容赦)本である、と思う。日ソ戦争は日本にとってはあまりにも悲惨な戦争であったので、日本人の情念・思考の方向が特定の方向に向きやすいと思うが、厚くない本の中で、一応、様々な立場、要素、背景等が簡潔に記述されている。
☆たとえば、スターリンはなぜ北海道への上陸作戦を諦めたのか、という重要論点については、3つの説、①それまでの日本軍の奮戦が、北海道の占領を防いだ。②ソ連による朝鮮北部と全千島列島の占領をアメリカが認めたので、妥協した。③アメリカとの関係悪化を恐れた。を紹介し、アメリカとの関係が受け入れられやすいが、明確に立証できる史料は存在しないとする。(226頁)
☆戦史の本なので、ソ連の勝因と日本の敗因も分析されている。敗因となると、一般読者としては、勝てるはずのない戦争だった、と思ってしまうが、本書でも、最大の敗因は、対米戦で日本の軍事力と経済は破綻していたこと、とされている。その後も敗因分析が続いていくが、これらは敗因というよりも、ア、戦争の開始を止められなかった原因、イ膨大な戦争犠牲者が出るのを止められなかった原因の解析と思われる。アの原因としては、大本営や関東軍は米国との本土決戦の準備を最優先し、ソ連の侵攻は予想していなかった。また、気づいていても、ソ連に和平仲介希望を託して、見て見ぬふりをしていた。イの原因としては、日本陸軍は将兵に戦車への肉迫攻撃や陣地の死守など玉砕を前提とした攻撃を命じ、ソ連もこれにより被害を受けながら、日本軍の降伏を容易に受け付けなかった、とされている。そして、最後に「圧倒的に不利な状況でも敢闘した日本軍の将兵は特筆に値する」と書いている。(257頁)
☆日ソ戦争の特徴は、ソ連の民間人の死傷者はゼロなのに、日本人の民間人は停戦後の死者まで含めると、約24万5千人がこの戦争で亡くなり、そのうち開拓団員らの死者は7万2千人にのぼることである。(238頁)。原因はソ連軍の蛮行、関東軍を信じたことによる避難の遅れ、集団自決になるが、関東軍が開拓民を棄てたのか否かの論点については、開戦前の関東軍には開拓民を避難される手段も残されていたが、その手段をとらなかった。しかし、関東軍にだけ責任を押し付けても全容は解明できない。満州移民を遂行した政府責任、満州の放棄を暗に指示した大本営の責任もある。何よりも、非戦闘員である開拓民や家族に無差別攻撃を行ったソ連軍の責任とする。(133頁)。
最後に満州国時代日本人が現地民に行った加害は、ソ連軍の開拓民への蛮行を相対化して不問に付す理由にはならないとする。
☆性暴力を含むソ連兵の蛮行については、8頁ほど使って解析されている。普遍的要因として、軍上層部が兵のストレス解消のはけ口として黙認、状況的要因として、日本人男性は徴兵され、警察等は武装解除され、蛮行を止める者がいなかった、構造的要因として、ソ連の男尊女卑や人権軽視の社会構造が戦時での性暴力につながったである。
☆一方、ソ連兵の弁明になりそうな記述もある。一般ロシア人は戦争に疲れていて、終戦復員を望み、いまさら日本と戦争などしたくはなかった。スターリンは日露戦争の復讐というプロパガンダで国民を煽った(240頁)
☆停戦後の民間日本人の死者の多いのも悲惨である。ソ連軍が、軍人や行政幹部を抑留してしまう一方、占領下の民間日本人の保護には無関心で放置し、暴力、飢え、寒さに苦しみ、伝染病等で死んでいった。日本が船を出して難民を帰還させることも認めなかった。(150頁、165頁)
☆民間人の自決、集団自決の多かったことも重要と思われるが、本書では自決については、検討されていない(と思う)。130頁に「追い詰められると集団自決を選ぶ「同調圧力」」とあるだけと思う。
◯各地での戦闘の実態については、詳しすぎず、簡単すぎず、戦史が得意でない読者にも理解できるように書かれていると思う。
三、蛇足
◯日ソ戦争と関連する本で、去年文庫化された『満蒙開拓団』(加藤聖文著 岩波現代文庫)、『樺太一九四五年夏』(金子俊男著 ちくま学芸文庫)の2冊が、買ってからずっと積ん読状態になっていたが、本書を読んで深く反省して読み始め、どちらも読了することができた。
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DSCH
5つ星のうち5.0
日ソ戦争の多様な側面を描出した力作
2024年4月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日ソ戦争についてコンパクトにまとめた新書だが、典拠史料を示す注(ほとんどがソ連側史料)も付いており力の入った一冊で、巻末には資料としてヤルタ秘密協定草案(1945年2月10日付)とヤルタ秘密協定(1945年2月11日調印)も収録されている。
全体は四つの章に分かれ、第1章「開戦までの国家戦略」、第2章「満洲の蹂躙、関東軍の壊滅」、第3章「南樺太と千島列島への侵攻」、第4章「日本の復讐を恐れたスターリン」となっている。
日ソ戦争の期間は、8月8日夜の対日宣戦布告から歯舞群島の占領が完了するまでの約1ヵ月に過ぎないが(ソ連軍による北緯38度線以北の朝鮮半島占領までとすればもう少し長い)、この短時日の間に実に様々なことが起こっている。満洲方面での戦争については、残された居留民の悲惨な運命と合わせて比較的よく知られていると思うが、南樺太と千島での戦いについては必ずしも詳しく知られていないのではないだろうか。ソ連側の軍事行動が日本のポツダム宣言受諾後も続き、占領政策をも見据えたアメリカとの綱引きの中で進行したことも大きな特徴といえる(結果として、スターリンは北海道北半の占領を諦めた)。
ソ連軍による住民への無差別攻撃や略奪・性暴力などの蛮行、また戦後に行われたシベリア抑留といった問題に加え、言うまでもなく北方領土の占領は現在まで続く領土問題の起点となった。
一方、日本の関東軍は本来対ソ戦こそがその存在意義だったはずであるが、すでに南方や本土への戦力抽出で弱体化しており、戦争がはじまると作戦行動を優先して住民の保護は後回しとなった。居留民の避難にあたり(たとえ結果的にとはいえ)軍人の家族が優先されたことは、徹底抗戦の建前から一般住民に避難準備をさせなかった裏返しとも言えるが関東軍の「悪名」に駄目を押した。とはいえ日本側の問題は関東軍あるいは日本軍のみにあらず、根本はソ連の中立維持(対ソ静謐)を前提とした国家戦略そのものにあった。
本書はこうした多くの要素をバランスよく網羅し、短期間だが歴史的影響の大きい戦争の全体像を描き出すことに成功している。日ソ戦争について書かれたものはこれまで多くあり、また今後も多くの研究が行われることを期待したいが、現時点でこの戦争の全体像をつかむには最適の一冊だと思う。
ちなみに著者はほかにも『シベリア出兵』や『蒋介石の書簡外交』などの著作があり、いずれもお勧めできる。
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