1日に合計4~5分の高強度の運動ががんのリスク軽減に

健康と体力を向上させるにあたって、最大の障壁を挙げるなら…それは、ほとんどの人が「時間がない」ということを挙げる傾向にある。仕事や家庭生活、そしてさまざまな約束事の狭間に立って、わたしたちは近所のジムで1時間汗を流すことは、「自分勝手なこと」と判断しがちだ。そしてそれは、「自己満足にしか過ぎないものだ…」と感じてしまう人も少ないないだろう。

実際、会社で半休をもらうこともひと苦労のはず。また、家庭での育児分担をきちんとはたして、「さて自分の時間を…」と動きだろうとしたときには、疲れてその気も遠のいてすまう人も多いだろう。だが、運動に関しては短時間行うだけでも健康上の効果が期待できる分野と言えるのが今回の研究で示されたのだ。中でも、がんのリスクを減らすことに関しては、いくつかの研究結果を俯瞰すれば、そのような傾向にあることが再確認できるだろう。

まずは、英国の王立がん研究協会が発表した報告書*1から。この「Worldwide cancer incidence statistics」レポートによれば、「現在の傾向が続けば、2040年までの間にがん患者は年間12万2000人増加する」と予測している。だが、その見込みを下げる方法もあるとを示すレポートも見つけることができる。

それは、2017年11月に米国がん協会のレポート*2 だ。そこには、「米国における癌罹患の約42%、癌死亡の45%は、修正可能な危険因子と関連しており、予防可能である。この数字は、2014年のデータに基づくものである」と記されている。

ウォーキングをする男女
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また、新たな研究*3では、「たった4~5分の活発な運動によって、ある種のがんの発症リスクを低下させる可能性がある」という結果も導き出されているのだ。そこには、定期的に短時間で激しく身体を動かす時間をつくっている人のリスクは、ほぼ3分の1に減少する」という統計結果が出たと報告されている。

時間に関しては「4~5分」と示され、さらに「連続して運動する必要もない」とも記せられている研究論文もある。これは米国医師会が発行する月刊の査読付き医学雑誌『JAMA Oncology』誌に2023年7月に掲載されたもので、オーストラリアのシドニー大学が主導した大規模な研究*4だ。

ここではウェアラブルデバイスのデータを用いて、2万2000人以上の「非運動者」の毎日の活動量を追跡。研究者らはその後、このグループの臨床健康記録を7年近く追跡して、がんの発生を監視したということ。この研究で研究者たちは、階段を駆け上がるといった息切れするような約60秒間の運動を指す、「VILPA(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity)」という造語を用い、「日常生活での断続的な激しい運動の健康効果」を測定する最初の試みの一つとなった。

そこでの運動方法は、われわれの生活の中にも計画的に取り入れることができるはずだ。公園やエアバイクで20秒間のスプリント(短距離をすばやく走る動作)を行い、その後、60秒間のリカバリーを行うという方法もある。あるいは、ジャンプスクワット、スラスター(スクワットと頭上へのプッシュプレスを組み合わせたトレーニング)、バーピーなど、肺を酷使する動きを次のセッションで組み込んでもいいだろう。速く、激しく行って、そして、なるべく早く家に帰ることにしよう。

腕立て伏せをしている男性
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がんのリスクを
減らす効果が期待される
3つの手っ取り早い方法

◇飲酒習慣の変更

2015年2月、アメリカ国立医学図書館のウェブサイトに掲載された、ミラノ・ビコッカ大学統計・計量法学科のヴィンチェンツォ・バンナルディ教授らによるレポ―トによれば、48万6538例のがん症例を含む合計572件の研究から、非飲酒者および時折飲酒者と比較した多量飲酒者の相対リスクを換算するとアルコール摂取は明らかにがんの発生率を上げている数値を示していると報告*5されている。

また2023年8月に、患者や家族が健康に関する意思決定を行うのを支援するための、がん疫学分野の研究に特化した査読付きの医学雑誌『Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention』に掲載されたエレオノーラ・テプリーンスキー医学博士のブログ*6によれば、「米国癌協会(ACS)によれば、米国では診断されたがんの約6%、がんによる死亡の約4%をアルコール摂取が占めている。

しかし、アルコールの使用は私たちが変えることのできるがんの危険因子のひとつでもあるのだ」とつづっている。彼女はニューヨークにあるバレー・マウント・サイナイ総合がんセンターの乳腺・婦人科腫瘍内科部長であり、マウントサイナイ医科大学の臨床助教授でもある。

stop drinking,stop drinking conceptman alcoholic social problems sitting at table refusal of alcohol say no to addiction close up断酒は、本当に健康状態を改善するのか?
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さらにアメリカ国立がん研究所のサイトには食道がんに関して、「そのリスクはアルコールを摂取しない場合と比較して、軽い飲酒で1.3倍、大量飲酒で5倍近く高くなる。さらにアルコールを代謝する酵素の欠損を受け継ぐ人は、アルコールを摂取すると食道扁平上皮がんのリスクが大幅に上昇することが判明した」と報告*7されている。

ここで言う「大量飲酒」とは、「女性で週8杯以上、男性で週15杯以上の飲酒」を指しているそうだ。もし自身の飲酒量がこのこの量に相当すると思ったのなら、すぐに考え直したほうがいいだろう。

◇UVインデックス*8をチェック

紫外線 (UV) 放射は、皮膚がんのリスクを高める可能性があることはわかっている。そこで指針すべきものが「UVインデックス」。これは、紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために紫外線の強さを指標化したものだ。

もし「3」以上なら、過剰な露出に注意すべきだ。メラノーマ(悪性黒色腫。皮膚がんの一種で「ほくろのがん」とも呼ばれる)の10件中9件は、SPFが表記されている日焼け止めを塗るか、日陰で過ごす時間を増やすことで防げるかもしれない。

◇お湯を沸かして…

「Journal of the National Cancer Institute」に掲載された研究報告*9 によると、「コーヒーを1日6杯以上飲む男性は、前立腺がんの発症リスクが20%近く低い」という結果が導き出されている。

[脚注]

*1:Cancer Research UKサイト内の「Worldwide cancer incidence statisticsを参照

*2:American Cancer Societyサイト内の「More than 4 in 10 Cancers and Cancer Deaths Linked to Modifiable Risk Factors」を参照

*3:University of Sydneyサイト内のニュース「Short bursts of daily activity linked to reduced cancer risk」を参照

*4:Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity and Cancer Incidence Among Nonexercising AdultsThe UK Biobank Accelerometry Study」を参照

*5:National Library of Medicineサイト内のAlcohol consumption and site-specific cancer risk: a comprehensive dose–response meta-analysis」を参照

*6:American Society of Clinical Oncology (ASCO)サイト内のEleonora Teplinsky, MDによるブログ「How Alcohol Increases Your Cancer Risk and What to Know About Reducing It」を参照

*7:National Cancer Instituteサイト内の「Alcohol and Cancer Risk」を参照

*8:気象庁 公式サイト内のUVインデックスとは」ページを参照

*9:がん研究を掲載する査読付きジャーナル『Journal of the National Cancer Institute』に掲載された研究報告「Coffee Consumption and Prostate Cancer Risk and Progression in the Health Professionals Follow-up Study」を参照

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Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です