「ライカM11モノクローム」は、もっとも鮮やかなモノクロ専用カメラだ──GQエディターズ・リポート

フラッグシップモデルの最新モノクローム専用機種をGQエディターが試した。
「ライカM11モノクローム」は、もっとも鮮やかなモノクロ専用カメラだ──GQエディターズ・リポート

4機種目

ライカカメラ社より、「ライカM11モノクローム」が発表された。2022年1月に登場した「ライカM11」のモノクローム専用機で、4機種目のモデルにあたる。ライカオンラインストア、ライカブティック、およびライカ正規特約店で4月22日に発売予定だ。

「ライカM11」からの変更点は、モノクローム撮影専用の35mmフルサイズセンサーのほか、ファインダー窓、そして液晶モニターにサファイアガラスを用い、256GBの内蔵メモリーが搭載されること。外観はフロントのライカロゴはなく、ブラックを基調としたストイックな仕立てになっている。そのほかの仕様は「ライカM11」に準じる。

発売にあたり、1週間ほどデモ機を試す機会を得たので、リポートする。

今回、「ライカM11モノクローム」に組み合わせたのは、ライカ アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.だ。「ライカM11」との差を明確に探るため、地明かりのみで撮影した。シャッタースピード、ISOはオートのみ。保存形式はDNGで記録画素数は60M。すべてCapture OneでTIFF現像したのちに、Photoshopでリサイズおよびjpeg変換し、明度・彩度は未調整だ。現像後、ゴミ取りなどレタッチも実施していない。被写体はぼくのありふれた日常である。

失敗がない

「ライカM11モノクローム」で数枚写真を撮っていちばん驚いたのが、“失敗がない”ということである。いや、実際は“失敗”しているかもしれない。しかし、ピンがあっていなくても、写真として可愛げがある。ブレていてもそうだ。カラーとの違いは、色調が限られたぶん、シャドウとハイライトの余白が強調されたことだと思う。一見、ただの白、ただの黒の世界かもしれないが、余白を通じて想像力が掻き立てられる階調がある。当然、ピンが合えば、それはそれで高精細さ由来のごまかしが効かないクオリティが感じられる。一説によると、モノクローム専用機のイメージセンサーはカラーフィルタがないので、より高精細であるという。数値化されているものでもないので、明確な判断はつかないが、DNGデータを拡大してモニターでみると確かに粒度は細かい。

いくつか作例を紹介する。

青山通りを撮る。画面の奥の横断歩道を歩いている人がマスクをしているかどうかまで判別可能な高精細さだ。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/500 絞り:8 ISO感度125。

自宅の天井には煙突のような採光窓がある。そこから差し込む光を撮影。自然光の強い光でもハイライト部分のディテールが潰れず、なおかつ暗部のニュアンスも残る。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/6500 絞り:2.8 ISO感度125。

LEVI’S®×NIGO®のお披露目に。歪みなく、板を塗った質感も表現する。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/200 絞り:4.8 ISO感度400。

お披露目の会で供されたベビーカステラとラムネ。テーブルショットもそつなくこなす。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/320 絞り:3.4 ISO感度125。

4月はまるで夏のような日差しの日が多かった。逆光耐性も高い。暗部もつぶれずによく描写している。若干のフレアあり。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/12500 絞り:6.8 ISO感度125。

「SANTASSE MUNI」の取材へ。バーコーナーは赤坂の「バー ル ユイット」がディレクションする。こけら落としとしてジョニーウォーカー レッドラベルの大瓶(通称:ガロンボトル)が展示されていた。コルクキャップ、ストライディングマンのイラストの顔立ちから60年代流通だろう。千客万来の大役を担う。自然光でもガラス瓶の透明さを感じさせる階調表現だ。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/250 絞り:3.4 ISO感度2500。

「SANTASSE MUNI」では、「SANTASSE」のレザージャケットやデニムだけでなく、大貫達生が選んだ希少な家具やアイウェアなども並ぶ。これだけの自然光に負けず、暗部のディテールを再現。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/250 絞り:2.8 ISO感度200。

夜の青山通り。フォーカスがあっていない。手ブレもしている。しかし、失敗作なのだろうか。「これ、いいよね」というカットがバンバン撮れる。自分の腕がヘタであっても。撮影データ/焦点距離:50mm シャッタースピード:1/5 絞り:4 ISO感度3200。

チャーミングな写真機

1週間、「ライカM11モノクローム」を使って実感したのが、その軽さだ。M型フィルムライカよりも軽く、日常の切り取りにはもってこいだし、撮るのに躊躇しない。もうひとつは、周りの反応にも驚いた。撮ったあと、背面の液晶モニターにプレビューが表示される際、後ろにいた人が「わ、かわいい!」といったことが何回かあった。液晶モニターに映る写真に反応されたのははじめてだ。ぼくの腕がいいか悪いかはさておき、それほどチャーミングな写真が撮れる、という証ではないだろうか。「ライカM11モノクローム」が描写する世界は可能性に満ちている。ライカのカメラの新しい魅力に気づいた1週間であった。

ライカM11モノクローム

寸法:W139×H80×D38.5mm
重さ:約542g(バッテリー含む)
価格:138万6000円(カメラ本体価格、レンズ別売)

https://leica-camera.com/ja-JP/photography/cameras/m/m11-monochrom

ライカカスタマーケア 0570-055-844

※火〜土曜 10:00〜17:00(日・月・祝日、夏季休業、年末年始を除く)

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編集と文、撮影・岩田桂視(GQ)