聴けば必ず元気になれる!80年代の洋楽パワーソング10曲

一度聴くと耳から離れない特徴的なコードや、強烈な個性を放つアーティストの存在、あるいは全体を通して漂うポジティブなヴァイブなど、80年代は音楽があらゆる面で際立っていた時代だ。ガンズ・アンド・ローゼズやN.W.A.、デュラン・デュランら洋楽界のパワーをくれるヒットソングで、日々の活力を得よう。
ワム!
Photo: Pete Still/Redferns/Gettyimages

80年代の洋楽ヒット曲、パワーをもらえるBest10はこれだ!

ジャーニー「Don't Stop Believin‘」(1981)

米「フォーブス」が史上最大の名曲と断言する「Don't Stop Believin‘」は、今年結成50周年を迎えたジャーニーJourney)の、希望と根気を持って自分を信じ続けるという、普遍的なメッセージがこめられたスーパーポジティブな人生賛歌。リードシンガーのスティーブ・ペリーの個性的なハイトーンボイスも魅力的だが、サビに向けて徐々に盛り上がっていくサウンドが、聴く者の心を一瞬にしてつかんで離さない。夢を手に入れるためには決して諦めるなという思いを表現しているかのような、キーボードリフもイイ。とにかく前向きな気持ちになれるだろう。

a-ha「Take On Me」(1985)

1981年にMTVというゲームチェンジャーが現れたことで、映像と音楽が切っても切り離せない存在となった80年代。ミュージックビデオのクオリティが、楽曲の売り上げを大きく左右した。シンセサイザーのサウンドが最高にポップなノルウェー出身のトリオ、アーハa-ha)は、そんな時代の波に乗った代表的なバンドだ。読んでいたコミックの世界に入り込むという、実写とアニメーションが融合したMVに、彼らのポップなサウンドが上手に重なった「Take On Me」は、誰もがどこか浮かれ気分だった時代にピタッとハマる軽やかさが最高!

ボン・ジョヴィ 「Livin' On A Prayer」(1986)

どんなにどん底な状況でも希望を持ち続けることを歌う人生のアンセムとして、リリースから38年経った今も色褪せることのないボン・ジョヴィの時代を代表する名曲。ギタリストのリッチー・サンボラがトークボックス(お笑い芸人のザ・マミィがしばしばネタで使用する装置)エフェクトを使って鳴らす、イントロの印象的な「オアオアオッ」のサウンドや、後半になればなるほど高音が増すヴォーカルのジョン・ボン・ジョヴィのシャウトなど、すべてが熱い。

デュラン・デュラン「Hungry Like the Wolf」(1982)

メンバーが美形揃いだったことから、アイドル的人気を誇ったデュラン・デュラン。イギリスのバーミンガム出身の彼らを、世界的なポップスターの地位に押し上げたのが「Hungry Like the Wolf」。この時代らしくシンセサイザーを多用したエレクトロ・ポップがベースではあるが、グラムロック的要素もミックスされ、ジョン・テイラーのベースが響くほかとは一線を画すクールなサウンドがウリ。女性の笑い声から始まり、次第に加速していくグルーヴを味わいたい。

ワム!「Wake Me Up Before You Go-Go」(1984)

80年代のポップカルチャーの代名詞とも言えるのが、ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーのワム! (Wham!)による、ポップがはじける楽曲「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」。ノリの良さを前面に出したキャッチ―な1曲は、振り切ったバカバカしさを味方につけて世界中のチャートを賑わした。MVでマイケルが着用していた「CHOOSE LIFE」と書かれたTシャツは、彼らの人気に合わせてファッショントレンドとなったが、実はこのTシャツは当時英国政府によるアンチドラッグキャンペーンのキャッチコピーを、デザイナーのキャサリン・ハムネットがTシャツに落とし込んだ、「(死ではなく)生を選べ」という、かなりメッセージ性のあるものだった。そんな楽曲とのギャップにもしびれる。

ガンズ・アンド・ローゼズ「Welcome To The Jungle」 (1987)

イントロでスラッシュがギターリフを鳴らすだけで、何かが始まる予感がしてテンションが爆上がりする「Welcome To The Jungle」 。ガンズ・アンド・ローゼズのデビューアルバム『Appetite for Destruction』の1曲目に収録され、その後のバンドの方向性を示す最初のひと振りであると同時に決定打ともなった。田舎町から都会(ハリウッド)へ出て来た若者の視点から、都会で生きる残ることの難しさや、その世界で自分の道を切り開こうとするフラストレーションなどを詰め込んだ、80年代ロックのドセンター。当時まだ22歳だったアクセルの「shun n-n-n-n-n-n-n-n knees, knees」のハイトーンシャウトはついつい真似したくなること間違いなし。

ホイットニー・ヒューストン「I Wanna Dance with Somebody (Who Loves Me)」(1987)

世界中で2000万枚以上のセールスを記録したホイットニー・ヒューストンのセカンドアルバムからのリード・シングルは、彼女の楽曲の中でもアップテンポで気分がアガる究極の1曲だ。作詞を担当したバンド「ボーイ・ミーツ・ガール」のジョージ・メリルとシャノン・ルビカム夫妻は、「まだ今日という日が終わってほしくない。もう少し1日が続いてほしい」という黄昏時に感じた思いを、若くエネルギーに満ち溢れたホイットニー向けに変換。その狙い通り、彼女は別次元の声域でパワフルに歌い上げる。

N.W.A.「Straight Outta Compton」(1988)

アイス・キューブ、2Pac、ドクター・ドレー、イージー・E等によってカリフォルニア州のコンプトンで結成されたN.W.A.による、ヒップホップの歴史を変えた1曲。日常における暴力と野蛮な社会をラップする、ギャングスタ・ラップというジャンルを世界的に広めた楽曲であり、80年代を席巻したシンセサイザーのポップなサウンドとは真逆の、時代の裏の顔をあぶりだす。とはいえ、複雑なサウンドを重ね合う今のラップとは異なり、ビートがはっきりと強調されてわかりやすいリズムで刻むため、思っている以上にダイレクトに響く。それだけに言葉の強さが際立ち、クールで歯切れのいいサウンドにパワーをもらえる。

ビースティ・ボーイズ 「(You Gotta) Fight For Your Right (To Party!)」 (1986)

元ハードコアパンクバンドだったビ―スティ・ボーイズが、ヒップホップへと方向転換をはかって大ヒットを記録したノリノリの曲は、直訳すると「闘え、バカ騒ぎする権利のために!」。ヒップホップといえども、元ネタが完全にロックなので驚くほど聴きやすい。当時「バカ騒ぎをする権利のために闘うこと」が正義だとする若者たちを中心に大ヒットを記録したが、実は行き過ぎた若者たちのパーティーカルチャーに対するアイロニーであり、「バカ騒ぎをする権利のために戦う」というアイデアそのものをあざ笑うために作られた曲だったというオチも、実にビ―スティらしい。

トーキング・ヘッズ「Once In A Lifetime」 (1980)

ある程度の年齢になり、ふと立ち止まって自身の人生を振り返ったときに感じる、「あれ、こんなはずじゃなかった?」という釈然としない思い。そんな誰もが感じる違和感のようなものを、トーキング・ヘッズデヴィッド・バーンが、おしゃれでちょっぴりサイコなサウンドにのせて歌う曲が、「Once In A Lifetime」。後悔とはいかないまでも、人生にモヤモヤを抱いているのは自分だけじゃないという安心感を与えてくれるという意味でのパワーソングだ。何度も繰り返される同じセリフとビートがいつの間にか脳内に刷り込まれ、繰り返し聴きたくなる中毒性あり。

文・柴崎里絵子 編集・橋田真木(GQ)

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