10月13日(現地時間)、ラルフ ローレンがブランド初となるアメリカ西海岸でのショーを開催。カリフォリニアのハンティントン・ライブラリー内にあるローズガーデンにて披露された「2023春コレクション」は、じつにラルフ ローレンらしいものだった。
デザイナーのラルフ・ローレンは、ショーノートで「カリフォルニアは夢と矛盾にあふれた、岩だらけの海岸とレッドカーペットの土地です」と綴った。「今回初めて、私はこの土地に住むという夢を実現しました。きらびやかさとグラマラスな魅力、エネルギーとインスピレーションを混ぜ合わせ、それを祝福することを通して、私が信じてきた世界観を共有することができました」
いまもラルフ・ローレンが、ファッション界きってのクリエイターであることを来場者に思い出させるかのように、服以外でも彼の世界観が紹介された。ショーの後のディナーで出されたハンバーガーは、ニューヨークにある「The Polo Bar」で提供されているものだった。
ゲストの顔ぶれは、じつに幅広い世代にわたっていた。ベン・アフレックとジェニファー・ロペス、シルヴェスター・スタローンとその家族、ダイアン・キートン、クリス・パイン、ローラ・ダーン、ジョン・レジェンド、アシュトン・カッチャーとミラ・クニス、さらにTikTokのスターたち。当日は、天候にも恵まれ、植物園というロケーションの良さが生きた。ロサンゼルスはスモッグが多いのだが、日が暮れて照明が点灯するころ、空はスッキリ晴れていた。
RRLの“カウボーイ・フォーマル”
ショーはバラエティに富んでいた。典型的なラルフ ローレンのショーでは、メンズウェアはフォーマルなパープルレーベルに限定される。だが、この日のショーは、19世紀のアメリカ西部の生活にオマージュを捧げたRRLのコレクションで幕を開けた。カウボーイハットをかぶったモデルたちは、園内にある美術館から現れると、観客に向かってうなずいたり、ウィンクしたりしながらランウェイを歩いた。インディゴやコットンを多用したRRLのスーツは、ブーツを合わせたルックで登場した。
気分が高まる地中海風ルックのパープルレーベル
パープルレーベルは、「カリフォルニア・ドリーミング」のカバー曲をBGMに登場した。ラルフ ローレンのベストコレクションはいつもこうだ。破壊的で皮肉なメッセージを放つファッションではなく、見栄えが良く、着ることによって気分が高まるようなファッションを届けてくれる。カリフォルニア風というより地中海風と言ったほうがいいスタイルが中心だったが、ロサンゼルスではほとんどスーツを着る機会がないのだから、それでも問題はないだろう。
キッズモデルと魅せる色彩豊かなポロ
そして、ポロのモデルたちがランウェイに登場すると、会場の雰囲気は一気に盛り上がった。多くのモデルが、キッズサイズのツイードジャケットやクリケットセーターを着たかわいい子どもたちを同伴していた。
赤、青、黄、緑にネオンカラーを加えた色彩豊かなポロのショーが終わり、最後のモデルたちがランウェイから姿を消すと、音楽が途切れた。すると、ニュースボーイキャップをかぶった『ユーフォリア/EUPHORIA』に出演する俳優のアンガス・クラウドや、ほかの観客たちが歓声を上げた。
デザイナーのラルフ・ローレンは、ジャケットにスウェットパンツ、ランニングシューズという白を基調にしたスタイルで登場し、観客に一礼した。服とはこう着るべき、ということを思い出させてくれるかのような、ブランドのあらゆる要素が集約されたカジュアルな装いだった。スピーカーからは「LA’s fine, but it ain’t home(LAは素晴らしい、でも故郷ではない)」というニール・ダイアモンドの歌声が聞こえてきた。帰る場所ではなくても、ロサンゼルスで過ごす一夜はとても心地いい。
From: GQ US Adapted by Etsuko Yoshikawa