ガーナでファッションデザイナーとして10年のキャリアを積んだ後、新たな挑戦をしようと決心したクワメ アドゥセイ(KWAME ADUSEI)。荷物をまとめて南国からニューヨークへと移り住んだはいいものの、それはニューヨークが最も冷え込む1月のことで、彼は「トレンチコートが思ったほど暖かくない」ことに気づかされたという。そこで彼は計画を変更し、ロサンゼルスへと身を移すことにした。
LAに移ってからの2年間で、アドゥセイが生み出す中性的かつセクシーなデザインはビヨンセ、 カイリー・ジェンナー、ロリ・ハーヴィー、カリ・ウチス、シアラ、ルネ・ラップらセレブの目に留まり、ウェストハリウッドのドヘニードライブに店舗をオープンするほどに成長を遂げた。
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ガーナを離れてから特に、アフリカのルーツを前面に押し出す必要性を感じたというアドゥセイ。「LAに引っ越したとき、アフリカ国内だけでなく世界中に素晴らしいデザイナーがいるのに、多くの人がアフリカンファッションを知らないことに気づいた」という彼は、ブランド名をつける際に自身のルーツを称えようと考えたが、自分の名前を冠することには抵抗があったそうだ。「自分の名にするのはとても勇気がいることですし、その価値がある存在にならなければならないと思ったんです」と彼は話す。「まさかレーベルに自分の名前をつけるなんて、思ってもみませんでした」
ガーナにいた頃はフランスのアトリエと密接に仕事をしたアドゥセイは、フランス語を流暢に操るまでになった。職人たちのもと腕を磨いた彼の構造とテーラリングへのこだわりは、人一倍強い。「顧客のなかには市場から2、3ヤードほどの生地を持ってきて、ビヨンセか誰かの写真を指差して『これと同じ服が欲しい』と言う人もいました。もし断ってしまったら、ほかのビジネスに仕事を取られてしまうから、やるしかない。私はただ、『ノープロブレム、やらせてください』と引き受けていましたね」と彼はガーナでの仕事を振り返る。
男女問わずさまざまな顧客からのリクエストを受け、生地の扱い方やテーラリングの理解を深めたアドゥセイは、マスキュリニティとフェミニニティを自由自在にミックスすることができるようになった。中性的なスタイルがブランドのアイデンティティの中心的要素である一方、デザイナーはただ女性が着やすいメンズスーツを提案するのではなく、女性の身体に合うように仕立てることにこだわっている。「(ほとんどのユニセックスデザインは)基本的に男性の身体をもとに作られています。フェミニンに見せるのであれば、同じファブリックでもカットに工夫を施せばいい。そうすることで女性がよりセクシーに、快適に、そして安心して着られる服が生まれるのです」
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アドゥセイはこのアプローチのインスピレーションを、西アフリカの伝統的な結婚式で使われるケンテ布から得ている。「(新郎新婦は)みんなその布を買ってきて、仕立て屋やお針子さんに持って行き、自分たちの好きなようにデザインしてもらうんです。みんな違って見えるけど、同じ種類の生地で仕立てられている。最高に美しいセレモニーです」
アドゥセイがガーナで培った技術やインスピレーションは、デザインをひと目見ただけでは必ずしも明らかではないが、そのバックグラウンドは彼のファッション哲学の核をなすものだ。彼は常にデザイナーとして前進しながらも、故郷を想い、その伝統に敬意を払い続けている。
Text: Hannah Jackson Adaptation: Motoko Fujita
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