ケイティ・ペリーのシングル「キス・ア・ガール」が世界中の音楽シーンを席巻したのは2008年。当時23歳だった彼女が繰り出すポップなサウンドとファッションは切っても切れない関係として確立され、キッチュなイメージやステージ衣装はペリーのアイデンティティの一部として刻まれていった。
しかし最近、ニュー・シングル「WOMAN’S WORLD」のリリースを目前にしたペリーのスタイルに変化が起きている。つい先月開催されたオートクチュール・ファッションウィークでは、100mを超えるトレーンに新曲の歌詞をプリントしたバレンシアガ(BALENCIAGA)によるミニドレスや、黒いファーコートだけを羽織った“ほぼ裸”のルックでインターネットを大いに沸かせたが、その少し前にはドキュメンタリー映画『ダイアン・フォン・ファステンバーグ すべての女性のために』のプレミアに現れ、これまでのテイストとは異なるアルテミシ(ARTEMISI)のセットアップを着用していた。目ざといファンであれば、このファッションの方向転換がここしばらくの間に着々と進められていたことに気づいたかもしれない。
2018年以降、オーディション番組「アメリカン・アイドル」の審査員を務めてきたペリーは、スタイリストのタチアナ・ウォーターフォードとともにリック オウエンス(RICK OWENS)やスポーツマックス(SPORTMAX)、ディドゥ(DIDU)といったブランドのより実験的なルックを試す一方で、オスカー・デ・ラ・レンタ(OSCAR DE LA RENTA)やドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)などのクラシックなイブニングスタイルもバランスよく取り入れてきた。しかし、5月に番組を去ってからというもの、彼女は新曲のリリースに向けて無難な装いを脱ぎ捨て、新しいイメージに全力を注いでいるようだ。
ここ数週間を振り返ってみると、第3回「VOGUE WORLD」にサプライズ登場したときに纏ったノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)によるカットアウトドレスや、新作のカバーアートのルックに採用したデュ シエル(DU CIEL)のビキニなど、どれも彼女らしく大胆ではあるものの、よりマチュアな磨きがかかっているように映る。
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最近イメチェンを図っているアーティストは、ペリーだけではない。アルバム『C,XOXO』のリリースを控えているカミラ・カベロは、チャーリーXCXのようなハイパーポップスターのようなワードローブを構築しながら、楽曲のジャンルにオマージュを捧げているようだ。ペリーについては現段階で確かなことは言えないが、少なくとも彼女とウォーターフォードがラ マスカレード(LA MASKARADE)やデュ シエル(DU CIEL)、クシー スコーピー(XI SCORPII)のような新進デザイナーたちにスポットライトを当てている点は評価すべきだろう。
ファッションは、アーティストたちが自身の音楽の世界観を表現するツールでもある。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の制作を機に揃ってヘアスタイルを変えたビートルズや、『ジョアン』のためにカントリーガール風のルックへとスイッチしたレディー・ガガ、さらにはボーイバンドのイメージを捨ててジェンダーレスなスタイルを纏うようになったハリー・スタイルズなど。このように、それぞれのイメチェンはアーティストの新時代を象徴するものだ。ペリーのそれもまた、サウンドの変化を伴うのだろうか? 今はひとまず、7月12日のリリースを楽しみにしたい。
Text: Hannah Jackson Adaptation: Motoko Fujita
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