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ディオール メンズはキム・ジョーンズの5周年。メゾンの歴史を未来につなぐ “ニューウェーブ”【2024年春夏 メンズ速報】

ディオール(DIOR)のメンズ アーティスティック・ディレクターのキム・ジョーンズが就任してから5年目を迎えた。6月22日(現地時間)に発表した2024年春夏メンズコレクションのショーでは、51台のエレベーターを使った動く床からモデルが登場する演出でサプライズ。今後のメゾンの歴史にも継がれていくであろう、傑出したコレクションを見せた。

創業者のクリスチャン・ディオールが、ファッション界にセンセーションを巻き起こした“ニュールック”を発表したのは76年前の1947年。今季、キム・ジョーンズは“ニューウェーブ”と題して、創業者のムッシュ ディオールと歴代のクリエイティブ ディレクターの仕事と自身のスタイルを融合。またウィメンズウェアから着想したモダンなメンズウェアを提案し、メゾンの歴史を未来につなぐことを試みた。

ファーストルックは、ジャケットとクロップドパンツセットアップ。今季のキーモチーフとなったディオールの格子柄「カナージュ」がのせられたセーターとコーディネートした。伝統的なテーラリングとオートクチュール、ユースカルチャーをミックスしている。

今季のキー素材はツイード

ジョーンズはこのコレクションを通して、歴代のクリエイティブ ディレクターにもオマージュを捧げている。イヴ・サンローランがディオールを手掛けていた時代のコレクションもインスピレーションの一つ。サンローランが好んで使ったツイードは、今季さまざまな表現で多用されている。

女性服でよく使用されるファンシーツイードをあえてメンズの伝統的なテーラリングに融合し、ライトブルーのポロシャツを重ねてフレッシュな雰囲気を醸し出している。

アイキャッチなカボションの装飾

ジャケットやカーディガンに施したカボションの装飾も目を引いた。これはムッシュ ディオールが1948年に発表したアーカイブ ジャケットの「ネグス(Negus)」やコスチュームジュエリーにヒントを得たもの。華美な装飾でありながらも、エッジの効いたネオンイエローとレオパードの組み合わせが斬新で、ジョーンズらしいコントラストのテクニックが加わっている。

リラックス感のあるテーラリング

またサンローランが過去に提案したシルエットも踏襲。1959年に発表されたボリュームやスリット、プリーツ、ネックラインのディテールが、リラックス感のあるテーラリングになって取り入れられている。

テーラリングだけでなく、ストリートを感じさせるパーカなどのアイテムも登場。ムッシュ ディオールがこよなく愛し、メゾンを象徴する色であるグレーはウールやラメ糸などが織り込まれたツイードで美しく表現された。ジョーンズはほかにもマルク・ボアンの素材使い、ジャンフランコ・フェレの刺繍などを参考にしながら、コレクションを組み立てていったという。

花のコサージュがついたハット

カラフルなハットは、帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズとアーティストのセシール・ファイルヘンフェルトとのコラボレーションによるもの。ビーニーとキャップを融合させたようなデザインで、ムッシュ ディオールが愛した花のコサージュを添えている。このコサージュは一般的な花飾りではなく、絨花といわれる中国の唐時代に生まれたベルベットのコサージュがあしらわれた。

アクセサリーにもツイードを

ローファーはウェアと同様にツイードを用いて、バッグのレディ ディオールのロゴチャームから着想したメタルロゴをオン。ジョン・ガリアーノが生み出したサドルバッグもツイードの新型バッグとして登場した。

Photo: Victor VIRGILE/Gamma-Rapho via Getty Images

ジョーンズはプレスノートで「ディオールはオートクチュールメゾンであり、洋服に尽きるのです。その中核にあるのは、最高峰のシルエット、シェイプ、そして技術と素材です。メゾンで5年間を過ごし、今年は5年目のアニバーサリーイヤーになりますが、このコレクションのことを決して忘れることはないでしょう」とコメント。

オートクチュールメゾンに誇りを持ち、創業者や歴代デザイナーに敬意を払いながら新たなエネルギーを加えたコレクションは、多くの人の記憶に残るものになったと言えるだろう。

Photos: Gorunway.com Text: Mami Osugi