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“雨あがり”の余韻が香水に。今すぐ纏いたい、レイン・フレグランス(Toru Mitani)

精油100%の軽やかなフレグランス「エッセンシャルセンツ」から、雨をテーマにした香りが発売。うだるような暑さを払拭し、過密なスケジュールをリセットするような香り。このフレグランスに没入体験できるイベントも合わせて紹介したい。

猛暑から気をそらし、ふと感じる圧倒的清潔感

〈左〉エッセンシャルセンツ 05 AFTER THE RAIN  〈右〉同 06 TASTE THE AIR 各9ml ¥5,390/THREE

香水が重たく感じる、雨と暑さがシンクロするこの季節。バンコクかのような東京の異常な気温と湿度を受け入れるためにも、やはり香りの力は借りたい。そこで最近愛用しているのが、THREEの「エッセンシャルセンツ」の新しい香りだ。

ひとつは「AFTER THE RAIN」(05)。グレープフルーツやユズなどのほろ苦さに、シダーウッドのウッディ、濡れた大地を思わすベチバー、スモーキーなパチュリが織りなすアーシーな“雨あがり”の香りだ。僕はこれを外出前、打ち合わせの直前、デスクワークに行き詰まった瞬間などに都度纏っている。つけた瞬間、雑念がふっと消えるこの感覚。じめじめした東京ライフを忘れさせる、清潔感あふれる香りだ。
※雨の日に纏いたい5つの香水の記事はこちら。

仕事中、ドトールにて。気持ちをリセットさせる時に最近纏っている06番(犬にかじられ、ラベルがはがれている)。

使い切った頃に、もうひとつの「TASTE THE AIR」(06)も試してみる。フレッシュなジュニパベリーと清涼感あるユーカリがキュッと香り、ハーバルなニュアンスを含む甘いゼラニウムを取りまとめるようにティートゥリーとラベンダーが包み込む。こちらもうだるような暑さを忘れさせてくれて、素晴らしい。先日東京を襲ったスコールの後の清らかさを体現したような、浄化の香り。

芳香を静かに放ち、しつこい香りを避ける日本人の「侘び寂び」の感覚とリンクする「エッセンシャルセンツ」だが、雨のテーマがこれまた良い。静かながら、精油の力に満たされているため、自ずと直感を刺激される。

言語化できない、香りの没入体験

「VISIONARIUM THREE SHIBUA」でのインスタレーションの様子。空間デザイナー、山本大介による作品。

現在、THREEはこの世界観に浸れる移動式のインスタレーション、「 THE ROOM OF(IN)SCENTS」を開催している。先日まで渋谷の「VISIONARIUM THREE SHIBUA」では、宮沢賢治「何と云はれても」、尾形亀之助「雨・雨」など、雨にまつわるさまざまな詩を、詩人・菅原敏が朗読。ヘッドホンを装着し、その朗読を目を閉じて聞きながら香りに没頭できる仕掛けが展開されていた。

“小さな箱”の中。

『悪は存在しない』を手がけた濱口竜介監督の作品のような、抑揚のないセリフまわしに似た“空間を残した”朗読。隙間、隙間に自らの気持ちが入り込んでいく感覚を味わえる。しどけなく、さりげなく香るフレグランスだからこそ、小さな箱型の空間で耳をすますようにして芳香を体験すると、よりダイレクトに風合いが届いてきた。

写真集やアートブックを自由に見られる。

現在は、「CIBONE」にて新しいインスタレーション「THE SIGHT」が開催されている(2024年7月16日まで)。写真家、原田数正による作品集「An Anticipation」より、雨あがりの余韻を感じさせる作品が多数展示されており、香りとともにふたたび没入できる。

福岡・太宰府天満宮でのインスタレーションの様子。

普段纏っている香りの良さをさらに知ることができる、このイマーシヴなTHREEの移動式のインスタレーション「 THE ROOM OF(IN)SCENTS」は、国内さまざまな都市で開催予定だそう。先日、福岡・太宰府天満宮で開催された「FUKUOKA ART BOOK FAIR」にて展開したイベントも大盛況だったそうだ。インフルエンサーのキャッチーなパワーで素敵な製品を知るのも良いが、こうして、感覚や直感を刺激されながら製品の良さを知るのは非常に本質的で、より素敵だと再確認。マインドセットの味方となっている「エッセンシャルセンツ」の魅力をさらに知ることができたインスタレーションだった。

Editor: Toru Mitani