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モータースポーツ人気復活の兆し?ファンの思いと実態を調査

1980年代後半から1990年代に日本国内でF1ブームが起こりました。当時は地上波放送でF1やMotoGPなどの中継を気軽に観戦することができ、マシンにも数多くの日本企業がスポンサーとして名を連ねていました。
その頃と比較すると現在はモータースポーツファンの存在はあまり目立たなくなり、自宅での観戦も有料放送や動画配信サービスを契約して視聴することが主体となっています。

しかし、2024年3月に東京で開催されたフォーミュラEが関東ローカルの地上波で生放送され、また、国内のフォーミュラレースであるスーパーフォーミュラや世界ラリー選手権(WRC)がABEMAで無料放送されるなど、気軽に観戦できる機会が再度増えてきています。さらに近年NETFLIXでF1を取り上げたドキュメンタリーが放映され、世界的に若年層を中心に新たなファンを獲得しているといわれています。日本でも、2024年4月に開催されたF1日本グランプリの来場者数は、2009年に鈴鹿で開催が再開されて以来過去最多となりました。

人気復活の兆しが見えるモータースポーツ、そのファンは一体どのような人々なのでしょうか。また、自身の車種選択に影響はあるのでしょうか。
この記事では2024年5月に行った調査結果をもとに、モータースポーツファンの実態を読み解いていきます。

モータースポーツの市場規模は?

はじめに「好きなスポーツ」を聴取した結果を基に各スポーツのファン人口を推計し、それぞれの年間平均支出金額を見ていきます。

図表1

推計ファン市場規模

日本国内のモータースポーツの推計ファン人口は676万人となりました。直近1年間で観戦等により支出した金額は平均76,947円と、調査をした7競技の中で最も大きい金額となりました。ファン人口は多くないものの平均年間支出額が大きいため、モータースポーツの推計ファン市場規模は859億円と、野球やサッカーに次ぐ市場規模であることが分かります。

モータースポーツファンの実態

ここからは、モータースポーツファンは他の競技と比べてどのような特徴があるのかを見ていきましょう。図表2は各スポーツファンの基本的な属性を比較した結果です。

図表2

スポーツファンの属性比較

モータースポーツファンは40代以上が多く、40代と50代だけで半数を超えます。それに伴い、世帯年収も他の競技より高い傾向にあります。この40代、50代がモータースポーツ全体のデータに強い影響を及ぼすことが考えられるため、 以降では40代以上と30代以下に分けてモータースポーツファンの実態を読み解いていきます。

次に、モータースポーツに興味を持ったきっかけです。図表3は興味を持ったきっかけを人気の高い野球、サッカーと比較したデータです。
モータースポーツは野球やサッカーと比べて家族の影響が少なく、YouTubeやテレビゲームといった自身の能動的な行動をきっかけにファンになった人が多いことがうかがえます。

図表3

興味を持ったきっかけ

同じデータを年代別に見たものが図表4です。

図表4

モータースポーツに興味を持ったきっかけ

30代以下はYouTubeやABEMAの無料配信が40代以上よりも多い傾向にあります。紙幅の都合で詳細データを掲載していませんが、YouTubeの中でも特に「DAZN等の配信サービス公式YouTubeチャンネル」の値が高い傾向が見られました。また、先ほどモータースポーツファンの特徴として述べたテレビゲームは、特に30代以下に多いようです。

モータースポーツの中にも様々なカテゴリーがあります。この人気カテゴリーに年代の差はあるのでしょうか。
最も多かったのはどちらの世代も「F1」という結果となりました(図表5)。30代以下では「SUPER GT」や「スーパーフォーミュラ」といった国内レースの人気が高くなっています。これは世界中でレースが開催されるカテゴリーよりも国内で気軽に現地に観戦に行けることや日本語で情報にアクセスできること、ABEMAなど無料の動画配信で観戦出来ることが理由なのかもしれません。

図表5

好きなモータースポーツのカテゴリー

次に、普段どういった媒体からスポーツ関連情報を収集しているのかを表したものが図表6です。モータースポーツファンは野球やサッカーと比べて新聞や雑誌といったアナログ媒体よりも、YouTubeやSNSといったデジタル媒体を活用していることが分かります。特に30代以下でその傾向が強くなっています。

図表6

情報収集媒体

スポーツ観戦を楽しむ上で「仲間と楽しむ、盛り上がる」という要素は重要だと考えられますが、野球やサッカーと比べて推計ファン人口の少ないモータースポーツでは、周囲にいるファン人数にどのくらい違いがあるのでしょうか。図表7は対面とオンラインでの交流人数を質問した結果です。

図表7

周囲のファン人数

モータースポーツファンは、やはり対面での交流人数が少ない傾向でした。6割は周囲にファンが1人もいない状況のようです。年代間で比較してみると、30代以下のモータースポーツファンは40代以上より対面での交流人数が多いことが分かります。さらに30代以下ではオンライン上で交流する人数が対面より多くなっています。一方で、40代以上では9割以上がオンラインで交流する人がいないようです。

モータースポーツファンが考える、「今後ファンを増やすために出来ること」とは?

サーキットに行ってみると、例えばF1日本グランプリでは車のパーツを模したコスプレをしている人やクスっと笑える自作の応援グッズを持っている人を多く見かけます。こういった日本のファン文化の独自性や特殊性に世界中のモータースポーツファンから注目が集まっています。一方で今回の調査では他の人気スポーツに比べ、モータースポーツは周囲のファンが少ないことが分かりました。出来ることなら日常的にファン同士でレースの展開や戦略を語り合ったり、会話の中からレースを楽しむ新たな視点を発見したりしたいものではないでしょうか。そこで、日常で会話をできるモータースポーツファンを増やすために「ファン自身に何ができるのか」を考えてもらいました。図表8は上位3項目です。

図表8

モータースポーツファンを増やすために自分達にできること

SNSやブログでの発信、周囲の人に情報や魅力を伝えることが多く回答されています。
40代以上からは「周囲の若い人に魅力を伝える」、「職場で興味のある人に薦める」といった意見が見られ、若いファンを増やしていきたい気持ちが見て取れました。また、30代以下は対面で伝えることよりも「SNSでのコミュニティを広げる」などSNSでの発信が多くあがりました。伝え方に違いはあっても、自ら情報を発信して魅力を伝えていくことは世代を問わず共通しているようです。

ここまでモータースポーツファンの実態を見てきました。次章ではモータースポーツ活動と購買活動の関係について見ていきます。

モータースポーツが車種選定へ与える影響

図表9は車購入時に「モータースポーツに参戦していること」をどのくらい重視していたのか、モータースポーツファンとスポーツカー所有者で比較した結果です。
図表10のようにスポーツカー所有者には、モータースポーツファン実態調査と同じ内容を別の調査として調査しました。

図表9

車購入時重視点(モータースポーツへの参戦)

図表10

「車種選定」に関する調査の設計

やはり「スタイルや外観」や「燃費」といった選択肢の値が高く出ています。「モータースポーツに参戦しているメーカー/車種であること」に注目してみると、スポーツカー所有者(③)は「ドライバビリティ(高速走行時の安定感、追い越し時の加速の良さ)」と同じくらい重視していることが分かります。また、モータースポーツファン(①)も3.8%と絶対値こそあまり大きくないものの、モータースポーツファン以外(②)と比べると大きい値であることが分かります。

なぜ、車購入時に「モータースポーツに参戦しているメーカーや車種」を重視しているのでしょうか。図表11は車種を選択する時に、モータースポーツに参戦していることが影響した人に対してその理由を質問した結果です。

図表11

車種選択にモータースポーツが影響を与えた理由

モータースポーツファン、スポーツカー所有者共に、WRCやF1などに参戦している様子を見て、その技術が市販車に反映されていることを期待する声や、モータースポーツでの感動を通してレース車両に憧れを持ったことが影響した、といった声が聞かれました。
また、モータースポーツファンでは、メーカーを応援するためにそのメーカーの車を乗り続けているといった声がありました。レースでは技術力に目を引かれますが、純粋にメーカーを応援したい気持ちで車種を選択している人もいるようです。

まとめ

今回はモータースポーツファンの特徴を見てきました。
モータースポーツファンは40代以上が多くを占めていますが、動画配信サービスなどをきっかけに若年層のファンも流入してきています。この新たなファン層の特徴も見えてきました。
また、他競技と比べて周囲にファンが少ないことが明らかになると共に、ファン自身が自ら情報を発信してモータースポーツファンを増やしていきたいと考えていることも分かりました。

数ある競技の中でもマイナーな印象があり、地上波放送も少ないモータースポーツ。まずは無料の動画配信サービスや国内レースなど、身近なところでタッチポイントを増やすことが出来ればさらにファンを増やしていくことが出来るのではないでしょうか。また、こういった身近なタッチポイントを使ってファン自身が情報を拡散しやすくする環境整備も重要だと考えられます。
そしてこういったモータースポーツファン拡大の取り組みを通して、車を持たない若年層が車に興味を持つことで、新たな車の購入にも結び付けられるかもしれません。


著者プロフィール

武井君枝プロフィール画像
武井君枝
2021年インテージ入社、モビリティ領域のリサーチャー。
主にF1を応援しているが、スーパーフォーミュラ、SUPER GT、耐久レースも勉強中。
いつか現地観戦したいサーキットはシルバーストン、ニュルブルクリンク。

2021年インテージ入社、モビリティ領域のリサーチャー。
主にF1を応援しているが、スーパーフォーミュラ、SUPER GT、耐久レースも勉強中。
いつか現地観戦したいサーキットはシルバーストン、ニュルブルクリンク。

著者プロフィール

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工藤里志
2016年インテージ入社、モビリティ領域のアナリスト。
特に熱心に観ているカテゴリーはF1、F2、FE、SF。箱車は勉強中。
いつか現地観戦したいサーキットはインテルラゴス・サーキット、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ、レッドブル・リンク。
フォーミュラカーが坂を駆け登ったり駆け降りる様が好き。

2016年インテージ入社、モビリティ領域のアナリスト。
特に熱心に観ているカテゴリーはF1、F2、FE、SF。箱車は勉強中。
いつか現地観戦したいサーキットはインテルラゴス・サーキット、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ、レッドブル・リンク。
フォーミュラカーが坂を駆け登ったり駆け降りる様が好き。

調査1:スポーツファン実態調査(図表1-11)
調査地域:日本全国
対象者条件:15~75歳男女 ※車保有有無は不問
標本抽出方法:弊社モニターより抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=9,172
調査実施時期: 2024年5月14日(火)~2024年5月16日(木)

調査2:スポーツカー所有者調査(図表9-11)
調査地域:日本全国
対象者条件:18歳以上男女、国内メーカースポーツカー所有者(トヨタ GRシリーズ、ホンダ CIVIC TYPE-R、日産 ニスモシリーズ、スバル BRZ、レクサス RCF等)
標本抽出方法:弊社モニター(Car-kit)より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=1,083
調査実施時期: 2024年5月14日(火)~2024年5月16日(木)

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