Sunday, June 23, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ

前回FIRPTA規則最終化速報を終えて今日から新トピック。米国タックスの世界は話題が恒常的に盛りだくさんでポスティングに値するトピックは常にOverloaded。Overloaded過ぎてDown the drainになっちゃうと「Somebody Get Me a Doctor」の世界になってまた超カッコいいギターソロとかの話しで長くなるんで自制しとくね(安心した?)。

で数多くのトピック候補から「Short List」を作ってみた。まず判例から列挙すると、YA Global(オフショアLending FundとECI)、Liberty Global(Economic Substance Doctrine(「ESD」))、Moore(一番最近の最高裁判例で2017年の留保金一括課税Transition Taxの合憲性)、Soroban(ファンドマネージャーがLPSとして組成するInvestment Management Vehicle LPSのLPとして受け取る報酬に対するSelf-Employment Tax(日本の国民保険みたいなもの)免除是非)、などが頭に浮かぶ。

行政府のRegulatory廻りでは、自社株買い1%懲罰課税(Excise Tax)を外国親会社が本国で自社株買いしている際に米国子会社に懲罰課税に適用しようとする超訳分かんない「Fundingルール」。

三面記事っぽいトピックの筆頭はトランプ再登場でメインストリームメディアが興奮しまくってこれでもかって報道を続ける11月の選挙とその後の税制の行方、大谷選手の報酬ストラクチャーと課税繰り延べ、IRS職員による富裕層の申告書リーク、などなど。

どれにしようかな?

結局は天の神様の言う通りシュシュシュのシュなんだけど、結果をお伝えする前に主要なShort Listトピックを簡単にWhirlpool的にツアーすると次の通り。

YA Global

まず「YA Global」。これはインバウンドPracticeに従事して長い僕としてはいつか語らずを得ない「Must」トピック。米国内のDirect Lending(Loan Origination)は直ぐにUS Trade or BusinessになってFeeや利子所得がECIになりがち。YA Global自体はケイマンのオフショアファンドで外国人LP用Vehicle。例によってスポンサーが米国に所有するInvestment Management Coが存在し、オフショアファンドに代わってLoan Originationをしてた。YA Globalやオフショアファンド一般に限らずファンド自体に従業員なんかもちろんいないファンドの世界に共通のストラクチャーだ。で、どんなLending活動がどんな基準でUS Trade or Businessになるのかっていう点に裁判所がどんな指針を提供してくれるかって興味津々で、ファンドCommunityやLegal Advisorに間では「初のLendingケース!」っていうことで裁判所の法解釈を首を長くして待ってた。YA Globalケースの争点となった事実関係は2006年~2009年だからそろそろ結果知りたかったよね。

YA Globalの投資Thesisやストラクチャーは今日のLendingファンドとは異なり結構Extremeな事実関係だったんで、結果としての敗訴はLegalコミュニティー的には覚悟済みだったって言えるけど、判決ではAgency、US Trade or Business、ECI、ペナルティ、おまけに475のDealer認定までBlow-by-blowで全敗。ただ意外かつ超ガッカリだったのは「どんなLending活動がUS Trade or Businessになるか」っていう肝心の議論はなく(判決文ではその検討は不要とすら位置付けられていた)、サービスFeeを受け取ってるんで何らかのサービスが提供されたに違いにないっていう逆説的なアプローチでUS Trade or Businessが認定されてた点。何らかの活動がUS Trade or Businessになり、そこにEffectivelyにConnectしてる所得がECIっていうのが法的なフレームワークなんで何回読んでも違和感が消えない。

その他の判例

Liberty Globalは、古くからのCommon Lawを条文化して今日に至るESDはReorganizationやEntity Classificationには適用がないっていう立法趣旨があるにもかかわらず、条文のRelevanceテストを逆さに適用してESDを適用し、$2.4Bに上る課税所得の認識が必要っていい渡した超ショッキングピンクなケース。YA Globalと共通して法律の適用法が逆説的でビックリしたけど、両社共に社名に「Global」ってついてるのが偶然だけど面白いよね。これらの判例のLessonは社名にGlobalってついてたら至急改名が望まれる?っていう点かもね。ちなみにYA GlobalはTax Courtケース、Liberty Globalはコロラド地裁ケースなんで納税者により控訴審に持ち込まれる。More to comeだ。

Mooreは判決の具体的な争点そのものは2017年の留保所得一括課税(テクニカルにはSub F課税のTransition Tax)が所得のRealizationを前提としている連邦憲法に違反するという納税者の訴えを最高裁が7‐2で却下したもの。違憲になってたらTransition Taxの還付、パートナーシップやS法人の課税の合憲性その他に多大な影響があった。ただ、民主党急進派は「Realizationがなくても合憲ってことはその延長でWealth Taxも合憲」って拡大解釈するリスクが多くその点からも注目を集めてた。最高裁の主たる判決文では今回の判決はWealth Taxを認めるような意図はないって釘を刺してるけど、Wealth Taxの是非を問う判決じゃないんであくまでDictaに過ぎず、今後も議論は続きそう。Mooreそのものは最高裁判決なのでFinal。

自社株買い1%懲罰課税とFundingルール

これは語りだすと長いけど、2023年に公表されたNoticeで展開された訳の分からないPer Se Fundingルールに「SignificantなModification」を施し、化粧直ししたFundingルールが財務省規則案に盛り込まれた話し。そんな規則策定権どこにあるの~とか法律を書き換えてるとか大不評なんで最終規則でどうなるでしょうか。

そして勝者は?

日本企業に対するインパクト的にはYA GlobalとFundingルールかな、って思う一方、最近取材とかクライアントからのカジュアルな質問に対応してて、やっぱり皆さんの関心が高いな~って感じざるを得ないのは2024年選挙と選挙結果の税法動向インパクト。たまに「トランプとバイデンどっちが当選しますか~?」みないな質問もあって面食らうけど。僕は占い師じゃないからね。ただ、選挙結果次第でアメリカは全く違う国になるのは確か。ってことでまずは2024年選挙と税法、そしてそれが終わったらYA GlobalのDeep Dive。Fundingルールは規則最終化時に廃案になってるかどうかで特集ってことにしました。このポスティングのタイトルでバレバレだった?。これらだけで今年も終わりそうな勢いなんであんまりVan Halenとかで盛り上がらないように要注意だね。

それでは早速次回のポスティングから2024年選挙特集。