Tuesday, April 3, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)支払利息損金算入ガイダンス発表「旧アーニングス・ストリッピング規定とBEAT」

4月前半には公表されるらしい、ってここ数週間高まっていた期待通り、米国税制改正で導入された「支払利息損金算入制限(新Section 163(j))」の適用時のガイダンス、「Notice 2018-28」が昨日4月2日、財務省より公表された。さすがに4月1日のApril Foolには公表を控えたんだろうか。April Foolに大胆なジョークを飛ばすことができるのはElon Muskのような本当の大物だけだろう。

April Foolの翌日ということで気合が入ったのか、何と今回はトリプルNoticeとなった。Section 163(j)以外のNoticeとしては、ひとつめが例によって海外特定法人の留保所得一括課税に関するもので、基本的に一括課税を圧縮するための諸々のプラニングに濫用防止規定で網を掛けている。もうひとつは日本企業にとっても影響がある米国事業に従事するパートナーシップ持分を外国人が譲渡する際の源泉税徴収にかかわるもの。こちらは12月に既にPTPに対する適用が凍結されているが、今回のNoticeでは他のパートナーシップに関する更なる凍結措置は規定されていない。この源泉に関しては別のポスティングで触れてみたい。

次に登場するガイダンスはいよいよGILTIとFDIIかな。夏から秋には公表されると言われているのでこちらは一体全体どのようなものとなるか楽しみ。

で、今回の新Section 163(j)に対するNoticeは大概において予想通りの内容。敢えて言えば、旧アーニングス・ストリッピング規定で損金算入が制限されて繰り越されていた支払利息は、繰り越された課税年度に支払われたと扱われ、新Section 163(j)で損金算入可否を新たに判断することになるという点はそうなんだけど、親会社等の外国関連会社に支払われていて繰り越されている利息は新税法下でBase Erosion Paymentとなり、新Section 163(j)下で損金算入が認められる際にはBEAT目的でBase Erosion Benefitとなるという点にわざわざ触れていた点はチョッと意外な感じもした。

その前段階で、散々、旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている支払利息は将来課税年度に「支払われていた」同様に扱うって強調しているので、その当然の結果としてBEAT抵触が考えられるし、繰越が認められる暁にはBEATに抵触しないのかな、っていう懸念はここ3カ月ずっと存在していたので、結果そのものにそんなに驚きはないけど、この点に関してわざわざNoticeの段階で釘を刺している点、疑問の余地を微塵も残さないぞ、っていう財務省の強い決意(?)を感じてしまった。

ただ、旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている金額全てがBEAT対象かというと必ずしもそうではないはず。あくまで、将来年度に支払われたと扱われるということだから、元々外国関連者に支払っていない利息が旧アーニングス・ストリッピング規定で損金不算入になっている場合には、BEATが入り込んでくることはない。例えば、旧アーニングス・ストリッピング規定は1993年の法改正以降、親会社等の外国関連者による保証に基づく第三者からの借入も不適格利息として損金不算入となってることもあるけど、これらは、BEAT目的ではBase Erosion Paymentとはならないので、BEATとは関係ない。もちろん保証なしでは借りれなかったとなると過少資本税制という全く別の問題がある。有名な1972年の5th Circuitによるランドマークケース、Plantation Patternsのパターン(シャレではなく)だね。このケース1970年という大阪万博の年に(誰も知らないよね。「月の石」見るのに炎天下3時間も並んでアメリカ館を見てた時代。見てみるとただのその辺の石と同じなんだけど)Tax CourtによるメモランダムケースでIRSが勝訴し、1972年5th Circuit控訴審でも一審が支持されているやつ。さすがに最高裁は再審理請求を却下し、5th Circuitによる判断が最終となっている。

5th Circuitって2ndとか9thに比べると目立たないイメージがあるけど、米国商工会議所がInversion規則の無効を求めた訴えを審理していて現在注目の的となっているのも5th Circuitだ。この規則はオバマ政権末期の財務省が実質ファイザーのInversionを食い止めるために所定の手続きを踏まずに発効させたもので、一審地方裁ではなんと、商工会が勝訴している。争点は規則がAPAを無視して最終化されたので法律違反ではないかというもの。ちなみにここでいうAPAは移転価格のAdvance Pricing Agreementでも、給与の源泉徴収を扱う専門家集団のAmerican Payroll Associationでもなく、もちろんAdministrative Procedure Actのこと。実は似たような争点で最高裁まで行ったDirect Marketingという判例があるけど、この最高裁の判例に基づくHoldingをどこまで差別化できるかがIRSに残された望みだろう。

で、旧アーニングス・ストリッピング規定とBEATに戻るけど、保証に基づく借入の支払利息が繰り越されている場合、繰越全額が保証に基づくもので構成されていたら対応は可能だけど、親会社ローンとかと混ざっているケースでは今後のBEAT適用時にどのようにトラッキングするのか大変そう。この辺りはNoticeでは触れらえていないけど、規則案で詳細が規定されるんだろう。

それにしても、例えば、Googleがカリフォルニア州のMenlo Parkでこの世に誕生する8年前、AppleからSteve Jobsが最初に解任されてから5年後の1990年に、日本企業の米国子会社が親会社に利息を支払っていて、もしそれが今でも繰り越されていると、テスラがModel SやXに続いて苦労してModel 3を量産している2018年に何とBEATに抵触してしまうという凄い結果になる。BEATなんて聞いたこともなかった時代の支払利息が法的にはBEAT時代に支払われたことになり、新世代の規定に抵触してしまう。でも考えてみると旧アーニングス・ストリッピング規定は今のBEATと概念的には共通部分が多いので、それが結局運命なのかもね。

Noticeの他のポイントは既定路線のもの。財務省もこれらは「Low Hanging Fruitsです」って少し前から言ってExpectationをManageしてたけど、本当にその通り。この文脈でのLow Hanging Fruitsどう訳すのがいいか分からないけど、「取り急ぎ簡単に規則を策定できるもの」みたいな感じかな。GILTIとかはHeavyだからね。

他にどんなポイントがカバーされているかという点は次回。

Wednesday, March 14, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(8)

前回はBase Erosion%の算定時に50%超の資本関係にあるControlled Group内の法人の数字は合算する点について触れた。もちろんだけど、前回も最後に触れた通り、合算対象となる法人はControlled Group内の全世界法人とは言え、%を計算する際に実際に取り込む数字はあくまでも米国でネット申告課税の対象となる法人が米国の申告書で計上している費用に限定される。具体的には、米国法人は全世界課税なので、当然、申告書上の全ての金額が入ってくる。外国法人に関してはECIで支店のような申告をしていれば、そこで計上されているDeductionのみを加味することになる。$500Mの売上基準に関しては、厳密に法文解釈すると、条約のPE条項で課税が免除されていても内国法で本来ECIであれば、そこの売上は加味しないといけないとしか読めない。一方、Base Erosion%算定のケースではIRCのChapter 1で控除される費用が対象となっていることから、Section 894はChapter 1の一部であることを考えると、PE条項で課税免除されている外国法人の数字は、例え内国法でECIでも、入れなくてもいいように個人的には考えている。

売上$500M以上という要件と共に、このBase Erosion%が3%以上となると修正課税所得とかBEAT計算が求められる。もちろんその先、実際にBEATミニマム税を支払うことになるかどうかは個々の納税者が置かれている事実関係次第なので何とも言えない。

BEAT適用判断と並び、Base Erosion%にはもう一つの用途がある。BEAT目的で修正課税所得を算定する際にNOLのいくらを加算調整するかという計算目的だ。この部分は法文を読んでも不可解というか、良く分からないのでチョッと詳しく触れてみたい。

以前にも触れた通り、BEATミニマム税は通常の法人税よりも、BEAT目的で再計算する修正課税所得に適用%(2018年は5%、その後10%、2026年から12.5%、ただし銀行は常にプラス1%)を掛けた金額が大きい場合に発生する。なんで、修正課税所得がいくらになるかが最終的にBEATミニマム税が出るかどうかのカギとなる。

こんなに重要な金額だからさぞかし詳細に規定されてるんだろうな、って思うかもしれないけど、それが意外にシンプル。日本語にするのは語弊が生じる可能性大で気乗りしないけど敢えて訳してみると、「修正課税所得」は「米国税法に基づいて算定される該当課税年度の課税所得だが、次の項目は除外して算定すること」となる。で、除外対象は僅か2つ。

ひとつめは「Base Erosion Benefit」。それはもちろんそうだよね。Base Erosion Benefitの恩典に網を掛けるためのBEATだから。で、何回も既にふれている通り、Base Erosion BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度に申告書上、損金算入(Deduction)されている金額となる。言い換えると、損金算入されている費用のうち外国関連者への支払いに基づくものだ。除外して計算するということは、通常の法人税算定で損金算入しているものを加算調整すると考えると分かり易い。

で、もうひとつ除外対象となる金額が「該当課税年度にSection 172でAllowされるNOLのBase Erosion%」となる。ここは余りにサラッと書いてあるので一読しただけでは余り問題意識が生まれないし概念的には容易に理解できる。過年度からNOLがあり、通常の法人税計算でNOLを使っている場合には、NOLの中にも外国関連者に支払って生まれた費用が含まれている可能性があり、その部分は該当課税年度のBase Erosion Benefitを加算するのと同様に加算しなさいというものだ。

でも、ここでは大きな謎が二つある。まず、法文からは絶対に分からないのは、いつのBase Erosion%を適用するのかという点。これは単純な話、法律に触れられていないので不明という問題。最初読んだ時の印象では、NOLが発生した課税年度のBase Erosion%に違いないのではないかと思っていた。例えば、2018年にNOLが発生し、その年に損金算入した費用のうち、5%相当がBase Erosion%だとすると、それを2020年に使用したとして、NOLのうち5%は「悪い」金額なので95%しか使えないというのは合理的だ。もし使用年度のBase Erosion%を使わされると、NOLを構成する金額とは何の関係もない数字に基づいて算定されたBase Erosion%を使うことになるからだ。例えば2020年のBase Erosion%が50%だったとすると、NOLの中には5%しかBase Erosion Benefitが含まれていないと考えられるにもかかわらず、たまたま使用年度の%が高いという理由で使用するNOLの50%を加算しないといけなくなる。ただ、法律は一定のポリシーを実行に移す際にある程度の概算措置を規定することは良くあり、複数年度のNOLを使用する年度にいちいち過去の個々の年度のBase Erosion%を使って加算額を算定するのか、と言われると確かにチョッと面倒っぽい。となると経済的に合理的でないにしても実務的に使用年度のBase Erosion%と判断されてもおかしくない。ここは法文から分からないので財務省規則でも規定できるはず。

毎年Base Erosion%がある程度一定だったら問題ないじゃん、って思うかもしれないけど、2017年以前はBEATという法律自体存在しなかった訳だから、発生年度ベースで決めていいんだったら当面使用するNOLにBase Erosion%はないはず。ということはNOL部分に加算は必要ないってことになる。一方、もし使用年度のBase Erosion%となると、NOLを生み出した年度にはBEATという概念すら存在しなかったのに使用年度の%に基づいた加算処理をしなくれはいけなくなってしまう。これは結構大きな差となり得る。

次に潜在的にもっとヤバいのが「Section 172でAllowされるNOL」をどのように解釈するかっていう点、そんなのSection 172に書いてあるんちゃうの?って関西の人なら言うかもしれないけど(エセ関西弁だったらゴメン)、ここは奥深い。Section 172というのは通常の課税所得計算時にNOLを控除として認めますっていう条文。今回の税制改正で80%制限が加筆される前の法文の方が趣旨的に分かり易いけど、その課税年度に繰り越されてくる、または繰り戻されてくるNOLを控除として使ってよろしい、と規定してる条文だ。もちろん本当はもっといろいろ書いてあるけど趣旨的にはそんな感じと考えて欲しい。つまりSection 172の世界のみで言えば、過去からのNOLは全額控除していいですよってことになる。課税所得はマイナスということはないので、例えばある課税年度単年に100の課税所得があり、過年度からのNOL(80%制限には抵触しない前提)が1,000あったとすると、その年度に発生したいろいろな費用を引いて残っている100の所得に、Section 172で控除が認められる1,000のNOLを差し引いて課税所得はゼロとなり、900のNOLが将来の課税年度に繰り越される。う~ん、ここまでは小学2年生くらいの単純さ。

では、BEAT目的の修正課税所得を算定する際には、ここをどのように考えるべきなんだろうか。Section 172で「Allow」されるNOLを使えるっていう風に単純に法文を解釈するなら、上の例でいくと1,000のNOLを出発点としてBase Erosion%を掛けた金額だけを差し引いて、残りは課税所得(こちらも当年度のBase Erosion Benefitを加算したもの)に充当することができそうに見える。だけど、この「Allow」っていう部分を「当該課税年度にAllowされている」っていうように課税年度を修飾していると考えると、既に当年度で使うことができた100のNOLのみを使って修正課税所得を算定しないといけないこととなる。

法文解釈としてはどちらでもあり得るとは思うけど、読めば読む程この「Allow」が「Allowable」でないことから、当年度の金額に限定される解釈が正しいように思えてきた今日この頃、と言っても1月からそう思ってきたんだけど。更に法文パッケージと同時に公表されている両院協議委員会の説明文書では法文より踏み込んだ表現でご丁寧に「any allowable NOL deduction allowed under section 172」と記載されている。この文書が法文だったらほぼ明確にNOLは通常課税年度に使われている金額に限定されるだろう。Section 172でAllowableな金額(=NOL全額)のうち、当年度に使われている(Allowed)金額と読むしか、この二つの単語が一つの文に挿入されている理由は説明できない。とは言え、説明文書は法文ではない。法文にこの表現がそのまま使われていないのをどう考えるべきか。最後に気が変わったと解釈するべきか、それても説明文書が立法府の意図であると解釈するべきか。

法文解釈なので合理的に解釈の余地があるのであれば絶対的にどっちが正しいという世界ではないけど、上述のどちらの年度のBase Erosion%を使用するべきか、という点を完全な50・50とすると、二つ目の不明点は異なるガイダンスが出ない限り現状の法文では70・30または80・20程度で通常の計算で使用された金額のみと解釈するべきと個人的には見ている。

法文解釈から一歩離れて実務的な側面からも、通常の計算に使用した額に限定されるように思う。仮にNOL全額を出発点として使わせてくれるとする。さっきの例で行くと、修正課税所得計算でも1,000使用することになるけど、そこから実際に修正課税所得の算定で使用される金額は100ではなく、100に当年度のBase Erosion Benefitを加算、さらに1,000のNOLに対するBase Erosion%分も調整、と通常目的の使用額と異なる使用額となる。これを別途トラッキングしてBEAT用のNOL繰越表を管理しないと将来BEAT目的で使用できるNOLが訳わからなくなってしまう。AMTの時は別セットでNOL繰越額をAMT用に管理していたので、やろうと思えば不可能ではないけど、BEAT用に別のNOLを管理するような想定はしていないように思え、この点からも通常課税所得算定時のNOLにBase Erosion%を加味して使用するのでは、と考えられる。この考え方だと過去からの繰越NOLがあり、単年ではプラスの課税所得のケースでは、通常の課税所得はゼロとなり、何らかのBase Erosion Benefitが存在すると(もしろん3%未満ならそもそも関係ない)、BEATミニマム税が発生することになるので要注意。

という訳でだんだんBEAT特集も終盤を迎えつつあるけど、後一回くらいでWrap-Upかな。その後もトピックは山のようにあるけど、965、245A、59A、250、どの辺りから手を付けるべきかチョッと考えないとね。

Saturday, March 10, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(7)

前回は1120F出し忘れにかかわる救済措置、前々回はウォーレンバフェットの話しに飛んでしまったけど、その更に前から書き始めたBase Erosion %の算定の話しの続き。Base Erosion %の分母と分子に何を入れるかは前回のポスティングで分かったとして、次に「誰の」数字を入れるのかっていう問題を考えないといけない。もちろん、納税者本人となる自己法人の数字は入れるに決まっているけど、それに加えて「Aggregation」規定に基づき、特定のグループ内法人の数字は合算して検討しないといけない。

Aggregation規定に基づくと、Base Erosion %の算定(および以前に触れた$500Mの売上基準の適用)時にはSection 52(a)で一人の雇用者と扱われる法人群は一社と考えるとしている。Section 52自体はは「Work Opportunity Credit」(WOC)の算定を規定している条項で、その際に複数の納税者を一人の雇用者と扱うとしているが、BEATのBase Erosion %算定時にも一人の納税者と扱われることとなる。ITS(国際税務)、Sub CとかSub Kを主に扱っているタックス専門家には馴染みが薄い。ただ、たまにBEAT以外の局面でも誰を同一グループのメンバーと扱うかとかいう判断で引き合いに出される条項だ。

米国税法下で、特定の恩典に適格となるか、とか、困難な計算を免除してもらえるか、っていうような判断、または以前は税率区分が課税所得レベル別に法人税でも4つはあったのでどの税率区分に属するか、っていうような決定、に所得その他の「しきい値」を用いることが多い。BEATでも売上$500M未満は対象外ですよ、っていうのもその代表的な例だ。もしこの判断を純粋に個々の法人単位で行うことを認めてしまうと、同じグループで複数の法人を組成して個々の法人レベルのしきい値を下げることで、いろいろとメリットが出てくる。そこで、同じ支配下にあるグループ法人群は十把一絡げにして一社として判断しましょう、という乱用防止的なアプローチだ。

このような目的で一社として扱うべきかどうかの判断を行う場合、大別すると連結納税グループを規定するSection 1504で攻めてくる場合と、Controlled Groupを規定するSection 1563から攻めてくることが多い。例の悪法の代表だった2016年の過少資本税制の財務省最終規則では「Expanded Group」(今となってはなんか懐かしい響きだけど)をSection 1504を引用して規定していた。Section 1504そのものの本来の目的はどの法人が連結納税グループの構成員となるかを規定しているので、もちろん外国法人が入ったりすることはない。ところが、Section 1504を引き合いに出す多くのケースで「ただしSection 1504の(b)(2)外国法人や(b)(3)保険会社を除外している部分は無視して下さい」というようなややこしい回り道をしてグローバルのグループを定義したりすることが多い。さらにSection 1504では考えることはない「みなし持分(Attribution)」とかもSection 318を後から適用させたりして、オリジナルSection 1504の原型をとどめない程、変更を加え、グループに誰が入るのかを判断する時点でお手上げ、専門家を雇い巨額(?)のプロフェッショナルフィーを支払うようなことになる。

過少資本税制の時も思ったけど、一旦Section 1504を引き合いに出した上で、外国法人も入れたり、みなし持分も加味させたりするんだったら、Section 1563の方を参照すれば、Component Memberとしない限り、最初からかなり目的に沿った構成員を定義できるんじゃないかな、って気もするんだけど。ここは引き続きなぜ議会や財務省がSection 1563というまさしくピッタリくる条項が現存するにもかかわらず、敢えてSection 1504を使ってくるのか、そのうち時間に余裕ができたらプールサイドでアイスレモンティーでも飲みながら自分でも良く考えてみたい。

上述の通り、Base Erosion%の算定目的では、Section 52(a)が参照され、Section 52(a)は基本的にSection 1563を参照していることから、BEATはSection 1504ではなくControlled Group概念を適用していることになる。Section 52のWOC目的では法人(C Corp)以外のパススルーとかも同一支配下であれば一人の雇用者と規定されているが、BEATではSection 52の(a)のみを取り込んでいるので、Section 1563のControlled GroupのMember法人、ただし、本当のSection 1563が80%以上基準としているものを50%超基準に置き換えて使用することになる。このことからSection 1563で広範に規定されるみなし持分の考え方が間接的に適用となる。

また、Section 52(a)では、Section 1563を50%超基準で適用する際、Section 1563の (a)(4)と(e)(3)(C)は無視するとしている。(a)(4)はControlled Group内に複数の保険会社が存在する場合には、保険会社群のみ別のControlled Groupとして他の法人群と分けて考えるというもの。この規定が適用されないということは複数の保険会社がグループ内に存在しても、それらも含んで一つのグループとして考えるということになる。(e)(3)(C)はみなし持分の考え方を適用する際に、退職金プランの信託が保有する株式は考慮しないというものだけど、この規定を適用しないということは逆に言えば、信託保有の株式も通常の株式同様に加味した上で持分を決定するということになる。

ここで一点、かなりテクニカルな話となるけど、BEATの法律には「ただし、Section 52(a)に基づきSectiton 1563を適用する際、Sectiton 1563(b)(2)(C)は無視する」と宣言している。これは凄く不思議。というか、個人的には単なる間違いのように見える。Sectiton 1563(b)(2)(C)はComponent Memberの定義として、ECIのない外国法人は免除しているというものだけど、元々Sectiton 52(a)ではSection 1563のメンバーの話しをしていて、Component Memberの話しはしていない。なのに、急にここでComponent Memberにかかわる外国法人の除外規定が不適用と言われても、Section 52(a)でもBEATでも元々除外されてない訳だから意味不明。間違って書いてあるように思うけど、こんな基本的なことでTechnical Correctionとなるんだろうか。

まあ、こんな感じでグループ合算して、Base Erosion%を算定することになる。グループで算定したBase Erosion%が3%以上になってしまったら、個々の法人の状況にかかわらず、グループ法人全員がBEATの計算をしないといけなくなる。また、BEAT目的の修正課税所得を算定する際、NOLのうちどれだけを加算する必要があるかっていうのも、このグループ全体のBase Erosion%に基づくことになる。グループ内他の法人が原因でBEATの世界に引きずり込まれたり、助かったり、どっちのシナリオをあり得ることとなる。

ちなみに合算する対象は全世界グループだけど、%を計算する際に取り込むべき数字はあくまでも米国でネット申告課税の対象となる法人が米国の申告書で計上している費用に限定される。米国法人の金額は当然全て入ってくるけど、外国法人に関してはECIで支店のような申告をしていれば、そこだけ加味することになるはず。$500Mの売上基準に関しては、厳密に法文解釈すると、条約のPE条項で課税が免除されていても内国法で本来ECIであれば、そこの売上は加味しないといけないとしか読めない。一方、Base Erosion%算定のケースではIRCのChapter 1で控除される費用が対象となっていることから、Section 894はChapter 1の一部であることを考えると、PE条項で課税免除されている外国法人の数字は、例え内国法でECIでも、入れなくてもいいように個人的には考えている。

さっきBase Erosion%によるNOL調整の話しが出たけど、ここの計算は法文上は良く分からないことが多い。この点は次回。

Saturday, March 3, 2018

外国法人による米国法人税申告書提出遅延と費用控除却下

米国の税制改正って可決してまだ2カ月強の時間した経過していないってウソみたい。もう2年は経った気がする。多分可決前からBlue Print、トランプ大統領の「Phenomenal」な改正発表、Unified Frameworkそして下院案、上院案とか追いかけてたのでそんな気がするのかもしれない。ただ、内容的にはBEAT、GILTI、FDIIとか想定すらしていなかったものが結構多く、これらの規定と寝ても覚めても格闘しているうちに、なんか随分と馴染んできた気がする。ただ、不明点がどんどん増えていくことも確か。まずは、支払利息の損金算入制限にかかわる規則が近々に出るはずなので楽しみ。旧Section 163(j)の繰越金利はそのまま、今後の金利として移管されるのか、連結納税単位での計算になるのか、法人の中でTrade or Business以外の支払利息があり得るのか、とか基本的なところで興味津々だ。その後、2カ月以内にGILTIとFDII関係の規則が出るそうだ。GILTIはとんでもなく強力な規定ってことが理解できてきたのでSection 78グロスアップのバスケットとか詳細楽しみ。その他の国際課税は8カ月くらいのスパンで規則が出るってことだからBEATはその頃かもね。

BEAT、GILTI、FDIIって何となく派手目な条文と戦っていたら、急にIRSの「The Large Business and International (LB&I) Division」っていう、要は数多い納税者の中でも規模が大きかったり、クロスボーダーでビジネスしてたりする企業を担当している部局が急に外国法人が1120Fをタイムリーに提出していないケースに対する措置をIRSの税務調査ガイダンスのような形で策定、公表したのでチョッと、またBEATから脱線するけど触れてみたい。日本企業にも大いに関係ある内容だ。

日本企業の米国税務とのかかわりって大別すると、米国に現地法人を設立して、そこが内国法人として申告するケースと、日本企業が外国法人として米国で活動するケースの二つがある。後者は更に米国源泉のパシブな投資所得を受け取るのみで税金は基本的に源泉税で支払うケースと、支店みたいに事業活動に従事しているとして外国法人として申告書を提出して普通に法人税を納付するケースに大別される。

米国で事業活動(「US Trade or Business」)に従事している外国法人は、そのUS Trade or Businessにかかわる所得(=ECI)を米国で1120Fという申告書を提出してネット法人税を支払う。日本のように米国と租税条約があるケースでは、通常はUS Trade or Businessよりも対象範囲が狭くなる「恒久的施設(「PE」)」に帰属する所得を同様に申告することになる。PEはないけど、厳密には内国法でUS Trade or Businessがあると思われるようなケースは条約ポジションを適用しています、っていう旨のの開示をする必要がある。これも1120Fを出して中身はブランクだけど、条約ポジション開示のためのForm 8833ていうのを付ける。これをしておくと申告書を出したことになるので時効期間が開始して、提出から基本3年で時効が成立するメリットがある。申告書を提出していないと未来永劫時効の成立がない。

で、外国法人として申告書を提出する重要な目的がもうひとつある。それは法人税の申告が求められる外国法人が一定期限内に申告書を提出していないと、課税所得算定の際に費用控除が認められないからだ。ということは総所得(=Gross Income)がそのままネット課税所得扱いになるという怖い結果になる。もしろん、本当に申告課税所得があれば、所得とか費用を申告書に計上してタイムリーに出せばいいけど、後からPE認定とかされる際にカラでもいいから申告書を出しておけば、いざという時に費用控除ができる権利を留保することができる。これが「Protective Return」と言われているものだ。

日経企業でも、実は米国で事業活動に従事するパートナーシップ投資からK-1を受け取り続けていたけど、キャピネットに大切にファイルしてあるだけで、過去に米国法人税申告書を提出していなかったようなケースがたまにある。余りそのままにしておくと上述の通り、費用控除が認められなくなってしまうから要注意だ。

費用控除が認められなくなるのは、申告書を通常の申告書提出期限(法人の場合、年度末から3カ月半)の18カ月後、またはIRSが申告書提出を求めるNoticeを発行した日、のいずれか早いタイミングで申告書が未提出のケース。え~、そんなタイミングとっくに過ぎてるし、っていうケースで唯一救いとなり得るのが、遅延に合理的な理由があって、かつ納税者が誠実に対応していることを立証して、IRSに費用控除の許可申請を行う免除規定。今までもこの規定はあったけど、どんな尺度で免除規定を適用してくれるのかケースバイケースでチョッと不明なところがあった。

そんな背景なんだけど、この税制改正対応で忙しいはずの絶妙のタイミングで、IRSのLB&I Divisionが急に免除規定の適用審査を公正に、首尾一貫して、迅速に行うという立派な目的で、IRS内の指針(「ガイダンス」)を策定・公表している。ガイダンスは「Waiver Summary Analysis」、「Waiver Procedure Guidelines」、「Waiver Flow Chart」の3本立てで構成される。

まず、Waiver summary analysisなるものを見ると、どのような判断基準で免除規定の適用を判断するかの指針が6つのポイントにまとめられている。すなわち、1) 自分で自ら未申告を認めているか、それともIRSが未申告を指摘しているか、2) 提出期限の時点では申告要件を認識していなかったのか、3)以前に米国で法人税申告をしたことがあるか、4)未申告は税法を吟味した結果の判断だったか、5)不可抗力で申告ができなかったのか、6)その他、情状酌量の余地があるか、となっている。当然だが外国法人がIRSに協力的かどうかも問われるところだ。

次のWaiver Procedure Guidelinesだけど、こちらは外国法人自ら未申告を名乗りでたのか、それともIRSが未申告を指摘しているか、の2つのケースで若干別のアプローチを規定しているけど、最終的にはフィールドのチームは前述の6つの判断基準に基づいて「Waiver Request Package」を取りまとめ、管轄マネージャーに提出することになる。その際に費用控除を認めるべきかどうかの「Recommendation」を付けるそうだ。管轄マネージャーのレビュー後にパッケージとRecommendationは共にCross-Border Activities Director of Field Operations (CBA DFO)に回される。費用控除を認めないというRecommendationとなる場合にはCBA DFOから更に特別委員会に照会され、最終判断となるそうだ。

と、なんとなくきちんと、公正に、首尾一貫して、迅速に検討してくれそうな雰囲気なので、万一、法人税申告の必要があるにもかかわらず、提出していないケースでは至急、申告書提出と共に費用控除の許可申請の検討開始要だね。

Sunday, February 25, 2018

ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイは税制改正で「3兆円」の資産増

金曜日の証券取引所の立ち合いが終了した後に公表されるバークシャー・ハサウェイの財務諸表。意味のない会計原則に騙されて真の会社の価値が分からないままにバークシャーの株価が大きく変動しないようにという株主への心配りだ。金曜の夜から月曜日の立ち合い開始まで、出来のいいアナリストや投資家が紛らわしい会計原則を解読して、本当の会社の姿を理解するための時間を使って欲しいということらしい。格好良すぎ。

で、例年通り2月最終金曜日の夜に2017年次報告書が公開された。財務諸表と並んで、またはもしかしたらそれ以上に注目されるのが、年次報告書の冒頭に記載されるウォーレン・バフェット会長から株主への「手紙」だ。ウォーレン・バフェット会長の一語一句と同時に、記載が定着しているバークシャー・ハサウェイとS&P500の1965年からの成長率比較を楽しみにしている世界の投資家も多数居るだろう。今年の手紙によると、2017年までの年間平均成長率(CAGR)はS&P500が9.9%なのに対し、バークシャー・ハサウェイは20.9%となっている。う~ん、さすが「オマハの賢人」。凄い。

今年の手紙はウォーレン・バフェット会長の次の言葉で始まっている。

「バークシャーの純資産は2017年だけで653億ドル(100円換算で6兆530億円!)増加し、一株当り純資産はクラスA、クラスB共に23%増額しました。現経営陣がバークシャーの経営を担当するようになってからの53年間で一株当り純資産は19ドルから211,705ドルと、年間平均で実に19.1%の成長率を達成したことになります。

純資産増加のデータを提示して手紙を書き始めるのは過去30年続いた伝統と言えますが、2017年は過去の伝統とは全く異なる年となりました。というのも、資産増加の大きな部分はバークシャー自らの努力で達成したものではないからです。もちろん650億ドルの増加は真の増加なので、その点の心配はご無用ですが、バークシャーの業績を理由とした純資産増額は360億ドルに過ぎません。残りの290億ドルに上る増額は12月後半に米国議会が米国税制改正を可決して届けてくれた贈り物なのです。」

税法が変わっただけで純資産が3兆円近く増えるのも凄いけど、WSJはウォーレン・バフェット会長は、3兆円もの「棚ぼた」をもらったのだから他でもないトランプ大統領の感謝しないといけませんね、と、2016年の大統領選挙時にはクリントン支持で知られていたウォーレン・バフェットを皮肉っている。他のメインストリームメディアよりはマシかもしれないけどWSJも口が悪い。

バークシャーの純資産増加の主たる理由は税率の引き下げにより繰延税金負債(DTL)が減少した点だ。日本企業の米国子会社でも加速度償却とかでDTLの残高が大きかったところは同じような恩典を享受している。反対に繰延税金資産(DTA)の残高が大きかったところは被害にあってるけど。ここは明暗が分かれるところ。

この点に関してWSJはAT&TやComcastも同じような「Paper Gain」の恩典を享受していると報道しているが、Paper Gainと言う表現が適切かどうかは若干疑問。確かにDTLの評価替えをしても、その段階で現金が入ってくる訳ではない。バークシャーの財務諸表の開示を見ると、税制改正を理由とする290億ドルの純資産増加のうち、税務上の加速度償却やボーナス償却に基づく資産償却のDTLだけでも130億ドル減額(すなわち資産増加)している。これは実際に税率が35%だった年に償却100ドル当たり35ドルの法人税を既に減額したという実績に基づく。この前倒し償却メリットが2018年以降に反転して、会計の利益に当メリット額を上乗せした結果支払うこととなる追加法人税は35ドルではなく急に21ドルに減ってしまったこととなる。これは実際の恩典だ。ウォーレン・バフェットが手紙の冒頭で敢えて「真の(Real)」資産増加と宣言しているのも、このような報道を先取りしているような気がしてならない。

ウォーレン・バフェットと言えば、バフェット・タックスという富裕層に対する増税を提唱したりしているので、バークシャーも法人税を保守的に支払っているのでは、というようなナイーブな錯覚があるかもしれないが、それは全くの勘違い。弁護士協会のような集まりでM&A法人税プラニングで革新的な手法を検討する際には必ずと言っていいほどバークシャーの節税プラニング例が出てくる。WSJにもバークシャーは税率引き下げを見越して、含み損を抱える資産を税率が35%と未だ高い2017年内に売り急いでいたという事実が記載されている。全然悪いことでもないどころか、企業経営者として当然かつ基本的な戦略だ。

税務業界ではウォーレン・バフェットは法人税を繰延できるのであればできるだけ繰り延べるのが有利と言う当たり前のことを良く理解している投資家として知られている。いつか触れたバーガーキングのInversionでSection 367 の抵触がないSection 721を利用したような画期的な手法を実際に利用しているのはそのいい例だろう。法人税を繰り延べて、将来支払う法人税を35%で負債計上していたところ、税率が下がって21%で済むんだったらそれは「本当の」資産増だ。法人税はとにかく保守的に支払う、というようなポリシーでは53年間のCAGRが20%超えるようなことはあり得ないということかもね。

Wednesday, February 14, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(6)

過去2回、速報みたいな感じで税制改正法文の不明点に対するガイダンス系のアップデートをしたけど、ここでまたBEAT復活。「BEAT」と「復活」って2つの用語を並べると、どうしてもその昔「Beatlesはいつ再結成して復活するんだろう?」って期待してた頃を思い出してしまう。

B面(古いね)が素晴らしいAbbey Roadをバンドして最後に録音し、その後、危うくお蔵入りとなりそうだった過去のGet Backセッションの膨大なテープにWall of SoundのPhil Spectorが派手なオーバーダブを施してリリースに漕ぎ付けたLet It Beを発売し、解散してしまったBeatles。解散のショックも未だ冷めやらぬ1970年代の頃は未だ再結成の期待は大きかった。

それにしても、Phil SpectorプロデュースのLet It Beはオーバーダブが過ぎて原型をとどめてないような曲もあるけど、2003年に発売されたLet It BeのNakedと聞き比べて最終的にどっちがいいかは難しいところ。Nakedの発売を待つまでもなく映画やBootlegで既にNakedバージョンは聞いていたので驚きはなかったけど、好むと好まざるにかかわらず30年近くWall of Soundプロダクションに基づく重厚なオーケストラサウンドを公式バージョンとして聞いてきただけにNakedは何となく逆に物足りなさを感じてしまった。

Beatles再結成に一番近かったのはRingo Starrの(意外な?)名作「Ringo」の頃かな。1973年にロサンゼルスのSunset StudioとロンドンのApple Studioで録音され、Apple Recordから発売されたこのアルバム。解散後のPost-Beatleの作品の中でも3本の指に入ると言ってもいい名作だろう。Photographとかいい曲だし、Ringo Starrって歌が下手なようで上手い。John Lennonはいい曲もあるけど、解散後のアルバム完成度は今一つな観は否めない。敢えて言えば、Yokoが許さなかっただろうけど、Double FantasyをLennonの曲だけでSingle Fantasyにしてくらたらどんなだったかな、もしかするとベストだったかも。Paul McCartneyはMy LoveとかAnother Dayとかそれなりにいい曲も多く、アルバムもBand on the Runとかまあまあ。George HarrisonはGive Me LoveとかMy Sweet Lordとか良かったけど盗作問題でケチがついてしまったね。

で、アルバムRingoではGeorge HarrisonとJohn LennonがSunset Studioに揃って現れLennonぽい名曲「I am the Greatest」を一緒に録音したそうだし、数日後にはRingo Starrはロンドンに飛び、麻薬不法所持の関係で当時、米国入国ができなかったというPaul McCartneyと「Six O’clock」をApple Studioで録音している。Six O’clockは実にPaul McCartneyっぽい名バラードで、シンセサイザーのソロがBeatlesのRevolverとかの時代を彷彿とさせる。4人が一堂に会すことはなかったとは言え、1つのアルバムで4人全員揃っているのは感動。アルバムの最後にRingo StarrがCredit代わりに参加メンバーの名前を言っていくところがあるけど、Beatlesの他の3人の名前を一気に言っていて迫力満点(?)。

それにしても、John LennonもSunsetでのレコーディングの後は直ぐにNYCに戻ったそうだし、Ringoもわざわざロンドンに行って直ぐにL.A.に戻ったりとなんかBig 4会計事務所で出張(?)してるみたいなスケジュールで結構みんな頑張ってたんだね。

で、アルバムRingoが発売されたこの頃はよくPlayboyとかの雑誌で「いよいよ再結成か」みたいなそれらしい記事が出ては消え、という時代だった。子供の頃だったからメディアの報道に一喜一憂したのを記憶している。John Lennonが1979年に殺されなければ再結成はあっただろうか。ない方がレジェンドとして残るにはよかったか気もする。Jimi Hendrixみたいに。

で、再結成がなさそうとなると、次にBeatlesの再来かという触れ込みのバンドが次々登場した。コーラスっぽいバンドでベーシストがリッケンバーガーとか使ってると特に、レコード会社が「Beatlesの再来」って売り込んで、実際には全然再来じゃなかったバンドがいくつもある。あんなバンドの再来がある訳ないじゃん、って思うけど。Bay City Rollersとか、チョッと作られた感じで足元にも及ばなかったし、KnackもMy SharonaとかGood Girls Don’tとかいいけど、結局ワンヒットワンダーっぽかった。余り知られてないかもしれないけど、スコットランドのPilotってバンドもコーラスがBeatlesっぽくて一瞬「再来」組の一人だった。結局MagicとJanuaryの2曲くらいしか記憶に残ってないけどね。でもMagicはいい曲だった。2008年に意外にもナンと「あの」Selena GomezがWizards of WaverlyでPilotのMagicをリメークしてて結構カッコ良かったのでビックリ。どこからあんな古い曲見つけて来たんだろう。

で、BEAT復活で大きく脱線してしまったけど、タックスのBEAT。前回までBase Erosion PaymentとBase Erosion Benefitsはカバーしたので、今回はBase Erosion %について。最初の大枠のところで触れているけど、Base Erosion%は2つの目的で使用される。

まずは納税者がBEAT適用対象となるかどうかを判断するテスト目的。すなわち、Base Erosion %が3%に満たない課税年度はBEATの適用がないというテスト。この3%基準、機械的なテストだから2.999%だったらBEAT適用外となる一方、3.00%ピッタリだったら適用対象となる。この%が際どいと予想される場合には、分母を増やすか、分子を減らすかして何とかここを3%未満とするよう試みるのがBEAT防御の最前線と言えるだろう。

そしてもう一つの用途は修正課税所得を算定する際にNOLのどの部分を加算調整するかの算定目的。こちらはその適用法が法文では明確でないが、その点は後で触れる。

Base Erosion %は課税年度に申告書に計上される費用(「Deduction」)全額のうち外国関連者への支払いを基としている費用、すなわちBase Erosion Benefitが占める割合となる。分母は費用全額なので当然、Base Erosion Benefitも含む金額。BEAT全体を通してそうなように、税法上Reduction(Gross Incomeを算定する際にマイナスされる金額)と規定されるCOGSのような金額はBase Erosion %算定時にも分母にも分子にも加味されない。例外はInversionで、Inversionした法人に対しては懲罰的にReduction項目もBase Erosion Benefitなので、その場合は分母と分子の双方にCOGSを含むReductionを加算することになる。日系多国籍企業は生まれながらにInboundなのでこの点は心配ないのが通常。

税法上、Deductionに区分されるけど、分母・分子に加算しない項目が複数規定されている。まず、欠損金が繰り越されたり、繰り戻されたりしてくるケースでも%算定時には繰越欠損金は無視して考える。次に10%以上の持分を保有する外国法人からの配当を非課税とするための100%配当控除も加算しない。外国法人からの配当非課税は一旦全額益金に算入したものを100%Deductionを取る形で非課税とする仕組みなので、このような規定が必要となる。そしてFDIIおよびGILTI控除。FDIIとGILTIは面白いのでいつか詳解してみたいが、FDIIは米国から外国に販売、役務提供、ライセンシングなどをしているケースで、それらの取引に関して動産からのルーティン利益を超える超過利益部分に37.5%の所得控除を認めて税金を算定してよろしいというオンショア促進策。37.5%差し引いたネット所得に21%の税率を掛けるので実質13.125%の実効税率となる。かなりグローバル的にCompetitive。GILTIは逆にCFCが米国外で超過利益を認識すると米国で毎期課税所得とするグローバルミニマム税的なコンセプト。その際に一旦超過利益を全額益金として、その50%を所得控除することで実質10.5%で課税するというもの。FTCが80%まで認められるので、理論的には(実際には金利の配賦とかでそうでないことも多いけど)米国外で13.125%で課税されていればGILTIに基づく米国株主側の追加税負担はないこととなる。どっちも13.125%がベンチマークなのでオンショア、オフショアでレベルセッティングがされていることとなる。で、この37.5%とか50%のFDII控除、GILTI控除はDeductionだけれどもBase Erosion %算定目的では分母には入らない。

そして外国関連者に支払うマークアップなしで請求可能なサービス費用(SCM)と適格デリバティブ。このSCMと適格デリバティブは以前のポスティングで触れた通り、外国関連者に対して支払っていてもBase Erosion Paymentから免除されており、したがって分子となるBase Erosion Benefitに入らない。この理由で分母への加算も認められない。

で、このBase Erosion %の算定時には「Aggregation」規定が適用されるので、特定のグループの数字は合算して検討しないといけない。チョッと話しが逸れたせいで長くなってしまったので、Aggregation規定とNOLにBase Erosion %を適用する際の不明点は次回。

Saturday, February 10, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)財務省のガイダンスプラン

なんだかんだとバタバタしている間に、始まったばかりと思っていた2018年も早くも2月前半になってしまった。その間、可決から僅か1月半とは思えない程、新しい税法三昧で、「これって本当にできて1カ月チョッと?」って不思議に思うくらい、59A、245A、250、951Aとか馴染んできた感じもある一方、条文は読めば読むほど理解が進むと言うよりも不明点が浮き彫りになってきている。

結構基本的な部分で、読む者により解釈が異なったり、適用のポジションが大手法律事務所、Big 4会計事務所の間でも意見が割れたりしていて面白い。今後、Noticeとか財務省規則でガイダンスが出されるまでは、立法趣旨も加味した条文解釈に基づいて各々の納税者がポジションを取っていくことになる。その意味では都合の悪いガイダンスが出る位だったらSubstantial Authorityに至るポジションがある前提で法文解釈していた方が有利かもね。

日本的な感覚だと、これだけの不確実性を伴ったまま既に大量の新税法が法的な効果を持っているという状況はチョッと不思議に思えるかもしれない。ここは日本と米国の立法プロセスの差異に因るところが大きい。憲法の三権分立の概念が実際に確立している米国では、立法は議会が行い、その時点で財務省を含む行政府が省令を検討するようなことはない。法律はあくまで立法府である議会で完結し、その後、条文そのものに「この部分はSecretary(ここで言うSecretaryは秘書ではなく財務省長官のこと!)に細部を規定する権利を委譲する」とされている部分のみ、そのスコープ内で財務省が規則を策定する権利を与えられる。で、必ずしも直ぐに財務省から規則が出てくる訳ではない。何年か経って忘れた頃に出てくる規則も多いし、法的な拘束力を持たない規則草案が公表されたまま塩漬けになっていることもある。今では懐かしくすら思える旧163(j)のアーニングス・ストリッピング規定も結局、30年近く規則は最終化の日の目を見ることなく、挙句の果てに法律そのものが撤廃されてしまった。この辺りは毎年同じタイミングが大綱が出て、その時点で省令まで落とされている日本のプロセスとは全然違う。

となると、そんな状況で納税者はどんな税務処理をすればいいのか、っていう質問を良く受けるんだけど、法文は文字通り読んで、また立法趣旨が分かればその範囲で合理的な解釈をして処理すればいいだけの話し。何でもかんでも法律を施行する側の財務省の意向を待つ必要はない。でも、後で税務調査の時点でIRSが納税者の取ったポジションに合意しないかもしれないじゃん、って思うかもしれないけど、それはもちろんその通り。その際に肝心となるのが納税者側の解釈に「Substantial Authority」レベルの確証度合いがあるかどうかという判断。

Substantial AuthorityっていうのはMore Likely Than Not(50%超)よりも低く、定量的に数値で図るのは容易ではないけど40%程度の確証度合いとなる。Substantial Authorityのあるポジションに関して税務調査でIRSが追徴をする場合、ペナルティーの適用がなく税額と金利を支払えば終わりとなる。なので仮に追徴という結果になってしまっても最初からコンサバな申告をして税金を自ら納めていたのと同じ状況に戻るだけと言える。ここの感覚も日本とは随分異なると思う。日本的には、社内評価も、外部アドバイザーの評価も、最初からコンサバにしていれば罰点はないけど、ポジションを取って後から追徴となると仮にペナルティーがなくても減点のイメージが強い。経済的には同じことなんだけど、これらの点でも結果としてポジションがあるのにそれを取らずに企業として損してるようなケースも多い。米国企業のTax Directorは税務調査で追徴があること自体でBlack Eyeとなることはないだろう(もちろん内容次第だけど)。また、法文が財務省に規則策定権を与えている場合も、その点に関して規則が実際に効果を持つまでは他の法文と同じように解釈をして臨むことに問題はない。財務省規則の策定権に言及されているからと言って、そのポジションに関して他との比較で異なる法文解釈アプローチを取る必要はない。

そんな背景なんだけど、先日水曜日(2月7日)に財務省が、ガイダンス公表必要性の面から優先順位が高いと思われる18項目を特定した「ガイダンスプラン」を公表した。これらの項目に関しては近々に、と言っても6カ月とかのスパンなんだと思うけど、順次優先的に財務省規則が策定されるようだ。優先順位の甲乙は個人を含む広範な納税者の関心を反映しているので、必ずしも日本企業のニーズに合っている訳ではないけど、一般の納税者がどの条項に関心を持っているのを図り知る上で興味深い。多国籍企業に対してBase Erosion対策を規定しているBEATは、全体から見ると若干特殊な規定という理由なのかもしれないけど、リストに特定されていない。国際課税一般という文言があるのでそこに含まれるのかもしれないけど。いずれにしてもBEAT適用時の不明点、特に過去から繰越NOLがあるケースの修正課税所得の算定法に不明点があるのは既に財務省側にも認識があるので、仮に優先リストから漏れたとしても、18カ月程度のタイムラインで比較的包括的なガイダンスが出てくるだろう。例題(Example)とか沢山載ってると助かるんだけどね。

18カ月とか随分気の長い話しに聞こえるかもしれないけど、BEATは2018年から適用なので、カレンダー課税年度の納税者でもBEATを反映した初めての申告書提出期限は2019年10月。なんで、申告書を出す頃までには大概の様子は分かるはず。やはり早急にガイダンスが必要なのは、2017年課税年度の申告書に既に影響がある特定外国子会社の留保所得一括課税だろう。まさしくその理由で12月末からNoticeというライトタッチでIRSが確認事項を公表している。既に2つのNoticeが出ているが、最低後1回はNoticeを出すようだ。

で、ガイダンスプランによると、法人税、事業課税に直接的に関連する条項で優先順位が高いとされているものは必ずしも多くない。支払利息損金算入制限の(新)Section 163(j)、動産の即時償却を規定したSection 168(k)、個人オーナーが自営業またはパススルーから認識する事業所得に対する20%の所得控除を規定したSection 199A、そして留保所得一括課税のSection 965。この965の部分に「その他の国際課税に関する税法改正」とあるので、これにBEAT、Anti-Hybrid、GILTI、FDIIなんかが入ってくるのだろうか。更にインバウンド系ではECIに従事するパススルー持分を外国人が譲渡した際の源泉徴収を規定しているSection 1446(f)も含まれている。

という訳で、次回こそBEATの話しに戻りたい。