心がなんとなく重い……。停滞感から抜け出し、生きる豊かさを実感するための5つのヒント

燃え尽き症候群やうつまではいかないが、その途中にあるような元気の出ない状態を言い表す「ラングイッシング」。パンデミック中に英語圏で注目された言葉だ。このようなモヤモヤ感から抜け出すにはどうすればいいのか。『GQ』はこの言葉についての新著を発表した社会学者に訊いた。
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「ラングイッシング(Languishing)」という言葉に聞き覚えがなくとも、その感覚に馴染みがある人は少なくないはずだ。気力がなく、停滞感や虚脱感があるような状態。 燃え尽き症候群やうつとまではいかないが、「はぁ」とため息が漏れるような、元気のない、モヤモヤした精神状態のことだ。

この言葉は英語圏で、パンデミック中に社会的な注目を浴びた。社会学者コーリー・キーズは新著『Languishing: How to Feel Alive Again in a World That Wears Us Down』(ラングイッシング:私たちを疲弊させる世界で、再び “生” を実感するには)」で、なぜ私たちの多くが「ラングイッシング」と表現されるような気持ちに侵食されるようになったのかを考察し、感情のスランプから抜け出すためのアドバイスを提案している。

キーズは「ラングイッシング」の状態について、内なるアラームが鳴っているようなものだと表現する。そのアラームは、何かが失われたとしきりに警告してくる。お前は人生を有意義なものにできていない、と。アラームが鳴っても「私たちあまりに多くがスヌーズボタンを押すだけで、実際に耳を傾けていません」とキーズは話す。

「やがてそれは、病的で人生を破壊するようなものになります。私たちが何も対策しないからです。私たちは、目的意識や帰属意識、人の温かさ、信頼関係よりも、他の何かを重んじてしまいます。これらこそが、人間にとって大切なものなのに」

『GQ』はキーズに、ラングイッシングな気分から抜け出し、 生きる豊かさを再び実感するためのコツを聞いた。

1. 人に直接会う

以前と比べて、私たちは人と繋がりやすくなった。そして同時に、かつてないほど孤独になっている。社会的孤立や寂しさが健康問題とも関連することを考えると、孤独については深刻に受け止めなければならない。

「私たちには、人との直接的な接触が必要です」とキーズは言う。「メッセージやメールだけでは、解釈の過程で失われるものがたくさんあります。リモートでやりとりしていると、互いを理解して繋るために五感をフル活用できず、その恩恵も受けられません」

友人関係は「量より質」が大事だというキーズは、「さまざまな社会的交流の場、友人関係があっても、人は強烈な孤独を感じることがある」と新書に記している。質を重視し、友人と直接会って時間を過ごすことで、オンラインでの繋がりよりも充足感が得られるかもしれない。

2. 新しいことを学ぶ

自分の時間を使って自発的に、自分で選んだ何かについて新しく学ぶのは、ラングイッシングに対する強力な解毒剤になるとキーズは書いている。勉強は学生だけのものではない。年齢を重ねても学び続けることには、大きなメリットがある。

「自分の成長を実感できなくなると、“行き詰まっている、停滞している”と感じ、身動きが取れないような気がしてきます」とキーズは説明する。「その感覚こそが、ラングイッシングを生み出してしまうのです」

重要なのは、外的な目標のためではない「学び」だとキーズは言う。「私たちは常に学んではいますが、 “手段” としての勉強しかしていません。勉強とは、『仕事に役立つから』、または『課題を達成できるから』するのだという考え方になっているのです」

つまり、生産性を重視しすぎる現代社会のカルチャーに抵抗し、ただ学びたいから学ぶ、というということだ。「単純に楽しむために何かを学ぶべき」なのだと、キーズは念を押す。

3. 自分と他人を比較しない

「『他人より優れた人間』になることで、自分自身や人生を良いものだと感じる。こう考えるよう、私たちは生まれた時から社会的に教育されてきました」。キーズはこう言い、続ける。「それ自体が間違っているとは思いませんが、これでは『他人にとって良い人間』になる機会を逃してしまいます」

自分を他人と比較してしまうのは、自分のチャンスが限定的なものだと捉えているからだが、このような考えは足を引っ張るだけだ。「いつも“何かが足りない”という心もちでいると、注意を払う範囲がとても狭くなります。目の前に他のチャンスがたくさん飛び出してきているのに、なかなか気づかないのです」

4. 過去の失敗を手放す

過去を手放すことは、自分を受け入れることだとキーズは言う。これは心理的に豊かになるために重要なことなのだそうだ。対照的に、ラングイッシングの状態では、過去の過ちを心の中で反芻してしまうので、前に進めなくなってしまう。職場で昇進できなかった過去の自分を責めたり、疎遠になった友人関係にしがみついたりというようなことだ。

「過去の行いについて考えるのは、悪いことではありません。そこから学び、現在の行動を変えられるなら、なおさらです」とキーズ。「しかし、過去から学べることがもう何もないのなら、手放しましょう。その心の痛みを生み出しているのは、あなた自身です。あなたを引き留めているのは、過去にこだわると決めた自分です。それは自分自身の決断なのだと理解しましょう」

5. 能動的な娯楽を楽しむ

Netflixで90年代のテレビ番組をぼんやりと見たり、TikTokをスクロールし続けたり……。誰もが「受動的娯楽」の“罪”にふけったことあるはずだ。

キーズはこう書いている。「受動的な娯楽活動は、ジャンクフードのようなものだ。金持ちでも貧乏でも、受動的な娯楽活動に多くの時間を費やすと、人生の満足度が低下する」。かつては違った。キーズが指摘するように、ある種のテクノロジーが台頭する以前、娯楽は地元で、地域社会の中で、あるいは家庭で生み出されていた。受動的な娯楽の消費者になるのではなく、自ら創造し作り上げる「能動的娯楽」を、私たちはもっと経験するべきなのだ。

例えば、テレビでゴルフを見るのではなく、コースに出て、自分でプレーしてみる。料理系コンテンツを画面越しに浴びるのではなく、自分で料理してみる。生きることの豊かさを実感するには、「もの」より「経験」を優先することが重要だとキーズはいう。つまり、スマホを見て受動的に時間を費やすのではなく、自分のストーリーを紡ぐことだ。

From British GQ

By Daisy Schofield
Translated and Adapted by Rikako Takahashi


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