最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナ軍、長距離ミサイルATACMSでクリミア大橋の攻撃を計画? レーダー撹乱用の米製デコイも使用

Crimea rocked by explosions as bridge shut: reports

2024年5月2日(木)15時26分
イザベル・バンブルーゲン
2022年10月のクリミア大橋攻撃

プーチンの大統領就任式(5月7日)までにATACMSで再びクリミア大橋を襲う?(橋が大きく損傷した2022年10月の攻撃) Guardian News/YouTube

<4月末にもアメリカから供与を受けたばかりの長距離ミサイル「ATACMS」がクリミア半島に飛来、橋は一時通行止めに>

ウクライナ軍が先週、アメリカから供与を受けたばかりの長距離ミサイルATACMS(最大射程300キロ)を使って、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島を攻撃。これにより、ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋が一時的に通行停止となった。

【動画】追加支援でウクライナ軍が受け取るATACMS、ストームシャドウ、ハスキーの実力

クリミア大橋に関する交通情報を定期的に更新しているテレグラムのチャンネルが、4月30日午前1時25分に「クリミア大橋は一時的に車両通行止めとなっている」との情報を投稿した。その後、通行止めは解除された。ロシア国防省は、6発のATACMSを迎撃したと発表した。

道路橋と鉄道橋が並行する全長約19キロメートルのクリミア大橋は、ロシア軍の重要な補給路として利用されており、ロシア軍がウクライナ南部で攻勢を維持する上できわめて重要な存在だ。クリミア奪還を目指すウクライナ側は2022年10月と2023年7月にこのクリミア大橋を攻撃しており、今後も攻撃を行うと宣言している。

ロシア軍が占拠しているウクライナ南部ザポリッジャで活動する親ロシア団体「We Are Together With Russia(我々はロシアと共にある)」の代表で軍事ブロガーのウラジーミル・ロゴフはテレグラムに投稿を行い、ウクライナ軍が4月29日の夜間にクリミア半島に向けてATACMSを発射したと述べた。

「ウクライナ軍が今夜、クリミア共和国に向けてミサイルを発射した」とロゴフは投稿し、さらにこう続けた。「クリミア半島の上空で、ロシア軍の防空システムが作動した。最新情報によれば、我々の防空システムは素晴らしい仕事をした」

米国製のデコイでレーダー撹乱か

ロゴフはさらに、ウクライナ軍は「平和なクリミア半島を攻撃するために、複数のATACMSを発射した」と主張。「この攻撃に先立ってクリミア半島に警報が出され、クリミア大橋が封鎖された」と述べ、「現在は橋の通行は再開されている」とつけ加えた。

ロシアとウクライナの戦争に関する最新情報を提供しているロシアのテレグラムチャンネル「SHOT」は、ロシア航空宇宙軍が運用する飛行場があるクリミア半島のシンフェロポリとジャンコイで爆発音がしたと報じた。

本誌はこの件についてロシアとウクライナの当局にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

ロシアの軍事ブロガーの間では、ウクライナ軍がクリミア大橋の攻撃を準備しているのではないか、との危惧が高まっている。

ロシア国防省とつながりのあるテレグラムチャンネル「Rybar(リバル)」は4月下旬、ウクライナ軍がクリミア半島への新たな攻撃の準備として、ロシア軍の防空システムとレーダーをかく乱するために、電子妨害能力を持つ米国製ADM-160B MALD(ミニチュア空中発射デコイ)ミサイルを発射した可能性があると伝えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

主要MSCI指数のインド株構成比、初めて中国上回る

ビジネス

日経平均は反発、円安で自動車株に買い FOMC控え

ビジネス

東京メトロ、基準値超え車軸225本 国交省が安全管

ワールド

中国の空母が日本の接続水域を初めて航行、与那国と西
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...試聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 2
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 3
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 4
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 5
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 6
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 7
    原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍…
  • 8
    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…
  • 9
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 10
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...試聴した「禁…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 8
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 9
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 10
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中