コンテンツにスキップ

エドワード・T・ホール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エドワード・T・ホール
人物情報
生誕 (1914-05-16) 1914年5月16日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ミズーリ州ウェブスター・グローブス
死没 2009年7月20日(2009-07-20)(95歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューメキシコ州サンタ・フェ
出身校 デンバー大学アリゾナ大学コロンビア大学
学問
研究分野 文化人類学
研究機関 デンバー大学、ベニントン大学、ノースウェスタン大学
テンプレートを表示

エドワード・T・ホール(Edward Twitchell Hall, Jr.、1914年5月16日 - 2009年7月20日)は、アメリカ合衆国文化人類学者異文化コミュニケーション学の先駆者。ノースウェスタン大学人類学科名誉教授。日本では「E・T・ホール」と表記されることも多い。

経歴

[編集]

1914年ミズーリ州ウェブスター・グローブス市に生まれ、ニューメキシコ州で育つ。1936年デンバー大学人類学科を卒業(B.A.)。1938年アリゾナ大学大学院人類学研究科修士課程を修了(M.A.)。1942年コロンビア大学大学院人類学研究科博士課程を修了(Ph.D.)。

1946年から1948年まで、デンバー大学人類学科教授を務めた。1948年から1951年には、ベニントン大学英語版教授。1950年から1955年米国国務省外務職員局(Foreign Service Institute)第4研修部主任教官。この間ワシントン精神医学大学院大学(Washington School of Psychiatry)でも教鞭を取った。

1955年に『Scientific American』に出版した論文「The Anthropology of Manners」が注目を集め、さらに1959年に単行本『The Silent Languageフランス語版(沈黙のことば)』を出版し一躍有名になる。1963年から1967年、イリノイ工科大学人類学科教授を務め、1966年に『The Hidden Dimensionフランス語版(かくされた次元)』を出版する。1967年から1977年、ノースウェスタン大学人類学科教授を務め、1976年に『Beyond Culture』を出版した。

日本との関係では、1976年に来日し、国際基督教大学で開催された「Humane Responsibility in Communicating Across Cultures」と題したシンポジウムに出席した[1]。また、1981年に筑波大学で1988年に国際文化会館で文化とコミュニケーションに関して講演を行った[2][3]

退職後はノースウェスタン大学名誉教授となり、ニューメキシコ州に住んだ。1997年と1999年にはニューメキシコ大学大学院コミュニケーション学研究科で異文化コミュニケーションの授業を担当した。2009年サンタ・フェの自宅にて95歳で逝去。

研究内容・業績

[編集]

第二次世界大戦後にミクロネシア文化の研究を行い、社会学、言語学、動物行動学にも関心をもち、幅広い研究活動をおこなった。著書『沈黙のことば』では「ボディー・ランゲージ」の概念を提唱した[4]

また、世界の文化を「高コンテクスト(コンテキスト)」と「低コンテクスト」とに分類して、中国(当時)、日本、アラブ諸国、ギリシャ、スペインなどはコンテクスト依存が高く、ジャーマン・スイス(スイスのドイツ語圏)、ドイツ、スカンジナビア諸国、アメリカ、フランスが低いと論じた。(高・低文脈文化を参照

近接学英語版[5]を提唱し、対人距離を論じた。時間感覚、時間意識についても「ポリクロニック」(polychronic)と「モノクロニック」(monochronic)な文化に分けた。

著書

[編集]
  • The Silent Language (1959) 日本語訳『沈黙のことば』國弘正雄長井善見斎藤美津子共訳、南雲堂、1966年
  • The Hidden Dimension (1966) 日本語訳『かくれた次元』日高敏隆佐藤信行共訳、みすず書房、1970年
  • The Fourth Dimension In Architecture: The Impact of Building on Behavior (1975, co-authored with Mildred Reed Hall)
  • Beyond Culture英語版 (1976) 日本語訳『文化を超えて』岩田慶治谷泰共訳、阪急コミュニケーションズ、1993年
  • The Dance of Life: The Other Dimension of Time (1983)
  • Handbook for Proxemic Research
  • Hidden Differences: Doing Business with the Japanese
  •  An Anthropology of Everyday Life:  An Autobiography (1992, Doubleday, New York)
  • Understanding Cultural Differences - Germans, French and Americans (1993, Yarmouth, Maine)
  • West of the Thirties. Discoveries Among the Navajo and Hopi (1994, Doubleday, New York etc.)

関連文献

[編集]
  • Hastings, S. O., Musambira, G. W., & Ayoub, R. (2011). Revisiting Edward T. Hall’s work on Arabs and olfaction: An update with implications for intercultural communication scholarship. Journal of Intercultural Communication Research, 40(1), 3-20.
  • Leeds-Hurwitz, W. (2014). Notes in the history of intercultural communication: The Foreign Service Institute and the mandate for intercultural training. In M. K. Asante, Y. Miike, & J. Yin (Eds.), The global intercultural communication reader (2nd ed., pp. 17-34). New York, NY: Routledge.
  • Rogers, E. M. (2000). The extensions of men: The correspondence of Marshall McLuhan and Edward T. Hall. Mass Communication and Society, 3(1), 117-135.
  • Rogers, E. M., Hart, W. B., & Miike, Y. (2002). Edward T. Hall and the history of intercultural communication: The United States and Japan. Keio Communication Review, 24, 3-26.
  • Shuter, R. (2014). The centrality of culture in the 20th and 21st centuries. In M. K. Asante, Y. Miike, & J. Yin (Eds.), The global intercultural communication reader (2nd ed., pp. 48-57). New York, NY: Routledge.

脚注

[編集]
  1. ^ Edward T. Hall, “Cultural Models in Transcultural Communication,” in John C. Condon and Mitsuko Saito (Eds.), Communicating across Cultures for What? A Symposium on Humane Responsibility in Intercultural Communication, Tokyo, Japan: Simul Press, pp. 89-102.
  2. ^ Edward T. Hall, “Making Oneself Misunderstood: Languages No One Listens to,” Speaking of Japan, Vol. 3, No. 17, May 1982, pp. 20-22.
  3. ^ Edward T. Hall, “Cultural Differences: An Overview,” International House of Japan Bulletin, Vol. 8, No. 1, Winter 1988, pp. 1-3.
  4. ^ 平野 2003, p. 138.
  5. ^ プロクセミクス』 - コトバンク

参考文献

[編集]
  • 平野健一郎 著「国際文化論」、岩田一政小寺彰山影進山本吉宣編 編『国際関係研究入門』(増補版)東京大学出版会、2003年、133–154頁。ISBN 9784130320375 

外部リンク

[編集]