カスタマーレビュー

2024年1月2日に日本でレビュー済み
ロシアの特徴。「経済」というものに対する悲しいほどの無理解に基づく、大言壮語の癖。「アメリカだけがドルを国際通貨として世界諸国に使わせ、一方的な利益を収めているのはけしからん。ルーブルも国際通貨として認めろ」という要求。米国は他国を脅してドルを使わせているのではない、ドルが一番便利で安心できるからみんな使っている。国際通貨は誰かが号令したからと言って一夜でできるものではない、ということは想像もできない。ロシアの政治家は市場というものを理解せず、信用せず、すべてはトップの政治家の一存を受けて公安機関が実施するべきものだと思っている。
経済に対する無知の裏面に政治至上主義という悪癖がある。マルクス主義には癖があって、何か問題があるとその問題の底の底を探る。問題が起きると、その原因を分析していって、一番の原因と思われるものに到達する。それはいいのだが、マルクス主義的アプローチで問題なのは、一度原因を見つけたと思うと凝り固まってしまい、それであらゆる事象を説明しようとし始める。マルクスの場合労働者が工場の所有権を持たず、搾取されてばかりいるから消費は盛り上がらず、資本主義はいつかつぶれるのだと言うのだが、周知の通り労働者の賃金は19世紀以来上がっているし、マルキシズムはできたての頃はいい線をいっていても、じきに現実に後れてドグマと化してしまった。ロシアの外交もソ連時代のマルキシズムの癖で、いくつかのドグマの虜になっている。 例えば世界を支配しているのはアメリカで、日本もドイツもアメリカの言うことに「はい、はい」と従う、とロシア人は思い込んでいる。日本やドイツは対米関係を維持することが自分の利益だと思っているいるからそうしていることを考えない。アメリカの力で押さえつけられているのだ、ロシアが力で脅せば譲ってくるだろうと思っている。あるいは武力で革命を達成した経験があるからか、悲しいほど政治至上主義だ。ロシア人にとっては「経済は政治が決めるもの」であり、何事もボス同士の談合で決まる、アメリカや日本がロシアに投資しないのは、その国の首脳が「ロシアに対して友好的ではない」からだ、と思い込んでいる。西側の政府には企業に対して「ロシアに投資をせよ」と命ずる権限はまったくないことを、どうしても理解できない。「友好的でないから、領土問題があるから、命令を出さない。」…?疲れる人たちだ。だが向こうもそう言っている。住む世界が違うのだ。
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