“静かな退職”(quiet quitting)とは、主にZ世代の若者のあいだで広がっている現象だ。2020年の新型コロナウイルス流行以後にアメリカで見られるようになったこの動きは、2022年頃からTikTokなどのSNSを通じて世界中で知られるようになった。
この新しい概念で重視されているのが、「給料相応の労働」と「私生活の優先」だ。“静かな退職者”たちは、最低限の仕事をこなすことで満足している。そのため、残業をせず、同僚をわざわざ手伝わず、就業時間外のメールには返信しないのである。
静かな退職が広がる背景
この現象は、コロナ禍がをきっかけで引き起こされたと言っていいだろう。コロナ前とは異なる状況下で過ごす中で、多くの人々が自分の仕事、そしてより根本的に自分の人生の意味に疑問を抱くようになったのだ。「静かに辞める」ことは、私生活が職業生活よりも重要であり、メンタルヘルスが常に優先されるべきであるという原則に基づいている。
疲れ、無気力、バーンアウト(仕事が多すぎて燃え尽きてしまう)、退屈(興味深いタスクがなく、意欲を失い、仕事の価値を見失う)など、「静かに辞める」理由は数多くある。業績を上げることを崇拝するよう育てられた以前の世代とは異なり、若い世代は自分の福利とワーク・ライフ・バランスをより重視しているのだ。
採用担当者たちの不安
“静かな退職”の広がりによって、雇用主や管理職も変化を強いられている。求職サイトTalent.comのディレクターであるアドリアン・セママは、2022年のインタビューで最近の変化について次のように説明している。「以前であれば、求職者がその仕事にどれだけ適任か、ということが選考時の中心的な話題でした。求職者は今では“王様”であり、企業側がその希望に沿えるかどうかが問われています」
現在、Meta、Google、エルメスなどの大企業は自社株の付与や、従業員の福利厚生のための施設(リラクゼーションエリア、ジム)を設置したり、テレワークを取り入れたりして、さらに強まるこのトレンドに対処するようになっているのだ。
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From GQ France
by Pablo Baron
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama