AppleのWWDC2024開催。Apple Vision Proの日本販売のほか、独自AIをリリースへ

6月10日(現地時間)、Worldwide Developer Conference(世界開発者会議)が開催された。デバイスを司るそれぞれのOSが大胆に生まれ変わる。会場に訪れたGQエディターがAppleの目指す未来の形をリポートする。
AppleのWWDC2024開催。Apple Vision Proの日本販売のほか、独自AIをリリースへ

Apple Intelligenceが公開

アメリカ・カリフォルニアのクパティーノで、「WWDC2024」が開催された。会場はApple本社がある「Apple Park」。巨大なスクリーンが設置された半露天の特設スペースで、メディアや開発者など54カ国から参加者が集まったという。今回のカンファレンスは通常、新製品のアンベールよりは新しいアプリやOSのアップデートなどが発表される。開発者向けの技術的な話ばかりが並ぶかと思ったが、さにあらず。ライフスタイルに大きく関わってくるであろうチャレンジングな試みが並んだ。とくにデバイスごとのOSのアップデートが印象に残った。それぞれをサマライズする。

「Apple Vision Pro」 ¥599,800

Apple Vision Proがついに日本に。OSも初アップデート

これまでアメリカのみの販売だった「Apple Vision Pro」がついに様々な国で販売される。日本では6月14日から注文受付がはじまり、6月28日に販売開始。メモリは256GB、512GB、1TBを選択できる。さらにvisionOS2のアップデートも発表された。2D画像を空間写真に変換するほか、手のジェスチャーに対応。さらなる進化を果たした。

iPhoneをクレイドルにさして充電中だったとしても、PCのモニタ上で動かせる。

パソコンでiPhoneが操作可能に

新たなオペレーションシステム、macOS Sequoia(セコイア)が発表された。画面上でiPhoneがミラーリングでき、マウスやキーボードを介して操作ができる。写真データなどをドラッグするだけでiPhoneに移行できるなど、直感的な使い方ができる。また、パスワードをひとつのアプリで管理できるように。Safariと連携し、Windows環境でもシームレスに同期する。

ラフなスケッチでも読み取ってくれる。

Apple Pencilをさらに活用するiPadの新アプリ

iPadに計算機が追加され、「Math note」機能が新たに実装される。この機能はApple Pencilで書き込んだ手書きの数式を自動で計算してくれる。グラフからも読み込みが可能。操作感覚は学生時代に黒板に書いてあった数式が自動で答えが導き出される感覚に近い。デジタルなのにアナログな感覚にAppleらしさを感じた。また写真を管理するアプリ、「Photos」が再設計され、膨大な量の写真をシンプルに把握しやすくなった。

トレーニングの強度がわかりやすく表示される機能を搭載。

よりヘルスコンシャスになったwatchOS

Apple Watchシリーズを司るwatchOS11が発表。主要な健康指標がわかる新しいバイタルアプリに加え、トレーニングロードの負荷を可視化するほか、妊娠をサポートする機能を強化。フィットネスアプリとアクティビティリングのカスタマイズの幅が広がった。

「Photos」の設計が見直された。

iOS 18がよりパーソナライズできるように

コントロールセンターやアイコンなど、新たなパーソナライズ機能によって自由なカスタマイズができるようになった。iPadOS 18と同様に「Photos」を再設計。1画面で、より多くの写真が判別しやすいようにデザインされた。「Mail」はショッピングやプロモーションなどいくつかのカテゴリで自動分類されるように。「Wallet」の進化も興味深い。2台のiPhoneをかざすと、「Tap to Cash」機能を介してApple Cashの送信・受領ができるようになった。

全デバイスに関わるApple Intelligenceの可能性

今回、一番大きな試みだと思われるのがAppleによる生成AIの取り組みだ。その名も「Apple Intelligence」。macOSはもちろん、iPhoneからiPadまで深く関わってくる。この“AI”はiOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoiaと統合され、デバイス内のアプリを横断し、文章や画像を理解して生成するなど、日々のタスクを大量にすばやくこなせるためのサポートをしてくれる。雑駁に言うと、メールのリライト機能や返信のサジェスト、メモアプリと電話アプリによって音声の録音と書き起こし、要約などをこなしてくれる。通知機能も、ユーザーの動向を理解し、緊急性が高いものを優先してくれる。また、プラットフォーム全体にChatGPTへのアクセスが統合。Siriを介して、データが活用できるが、利用時にはChatGPTへデータ送信の許諾が求められるなど、プライバシーに配慮している。

「Apple Vision Pro」はOSのアップデートで2D画像を空間写真に変換することができる。

カンファレンス後に「スティーブ・ジョブス シアター」で機械学習・人工知能戦略担当上級副社長のジョン・ジャナンドレアと、ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギの「Apple Intelligence」に関する対談が行われた。そこでAIについて、「ユーザーにとって変わるものではなく、ユーザーの力になるものです。そのためには使う側のデータが必要で、AIが理解することが不可欠。だからこそ強固なプライバシーが大切です」と述べていたのが印象に残った。

膨大に増えてしまった情報処理や、瞬時に画像を生成する力はテクノロジーが発展することで新たに求められるものかもしれない。デバイスのOS同士が緊密に連携するAppleだからこそ実現できたAI、つまり「Apple Intelligence」は、まず秋頃にアメリカからはじまり、日本語対応は来年が予定されている。ぼんやりとしていた未来のカタチが輪郭を帯びてきた、とApple Parkを背にしながら思った。

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編集と文・岩田桂視(GQ)