WEDDING / FEATURE

シャネルやヴェラ・ウォンなど。ファッションブランドが手がけた、映画の中の美しすぎるウエディングドレスたち

ウエディングシーンが登場する映画は数あれど、ファッションデザイナーが手がけたウエディングドレスを観られる作品というのは案外少ない。シャネル(CHANEL)やヴェラ・ウォン(VERA WANG)、ジバンシィ(GIVENCHY)まで。オードリー・ヘプバーンやジェニファー・ロペスなど、スターたちがスクリーン内で纏ったファッションブランドによる美しすぎるウエディングドレスに酔いしれよう。

1967年のドレスを新解釈した、シャネルのドレスが楽しめる『プリシラ』(2023年)

『プリシラ』は4月12日より全国公開   Photo: Philippe Le Sourd /© A24 / Courtesy Everett Collection

エルヴィス・プレスリーの妻として、世界中にその名を知られることになったプリシラ・プレスリー。『プリシラ』は、14歳でエルヴィスと出会い、彼と過ごした夢のような日々から、離婚に至るまでの孤独を、プリシラの視点から描いた甘美なラブ・ストーリー。今作でケイリー・スピーニー演じるプリシラが、『キスから始まるものがたり』のジェイコブ・エロルディ演じるエルヴィスとの結婚式で纏っているのが、シャネルCHANEL)によるウエディングドレスだ。

シャネルのアンバサダーでもあるソフィア・コッポラが今作のメガホンを握っているという縁からコラボレーションが生まれたようで、コッポラによると劇中に登場するウエディングドレスは、1967年にプリシラが結婚式で実際に着用したものを新解釈したとのこと。ヴィルジニー・ヴィアールを中心に、シャネルのクチュールやクラフツマンシップを一つに結集させたデザインとなっており、ドレスの制作にはなんと90時間を要したとか。ちなみに、エルヴィスのタキシードはヴァレンティノVALENTINO)が手がけている。

1967年の5月1日にラスベガスで行われたエルヴィスとプリシラ・プレスリーの結婚式の様子。プリシラのドレスは、MGMの仕立て屋ランバート・マークスが手がけている。 Photo: Bettman/Getty Images

『マリー・ミー』(2022年)には、ズハイル ムラドの約43キロのドレスが登場

『マリー・ミー』はNetflixにて配信中。 Photo: ©Universal/Courtesy Everett Collection

世界的な歌姫のカット(ジェニファー・ロペス)が、音楽界の新星バスティアン(マル―マ)と2000万人のファンの前で華やかに結婚を誓うために纏ったのが、1万個のクリスタルが施された、ズハイル ムラド(ZUHAIR MURAD)のウエディングドレス。

米ヴァラエティによると、ズハイル ムラドのブライダル・コレクションから選ばれたシンデレラスタイルのドレスは、9層にわたるシルクのタフタに馬の毛、チュール、クリスタル、レース、フリルなどが使用された超豪華スタイル。衣装デザイナーのキャロライン・ダンカンは同メディアに、「ドレスは95ポンド(約43キロ)あり、5人がかりで運び、ジェニファーのドレスの着脱にも数人を要しました」と語っている。ストーリー的には、結婚発表の直前にバスティアンの浮気が発覚したため、おめでたいドレスとはならなかったが、軽い気持ちで観たら驚くほどの吸引力のある上質なロマンティック・コメディなので、ぜひチェックして欲しい。

ピエール・バルマンのシャツドレスがバルドーの魅力を際立たせる『素直な悪女』(1956 年)

『素直な悪女』はU-NEXTにて配信中。 Photo: Courtesy Everett Collection

ロジェ・ヴァディム監督が、妻で当時22歳だったブリジット・バルドーを主演に撮った、バルドーの美しさを詰め込んだ1作(バルドーは18歳のときにヴァデム監督と結婚)。バルドー演じるジュリエットは子どものいない夫婦に引き取られた孤児だが、18歳となり、美しく成長した彼女の小悪魔的魅力に町中の男たちが夢中になる。一方のジュリエットも、その魅力で次々と男たちを翻弄していく一方で、その魅力が自らを孤独へと追い込んでいく。

南フランスの海岸沿いの町サントロぺが舞台のため、バルドーは麻のシャツドレスやボートネックトップなど、軽やかでシンプルな服を着用。そんな彼女の個性を見事に引き出す衣装を手がけたのはピエール・バルマン(PIERRE BALMAIN)。白いレースのシャツドレス風のウエディングスタイルは、大人と少女の間を揺れ動くバルドーの役柄を見事なまでに体現。フラットシューズを脱ぎ捨てて、裸足で歩く花嫁の姿はセクシーでありながらも最高に愛らしい。

ヴェラ ウォンのバレリーナドレスが華やかな『ブライダル・ウォーズ』(2009年)

『ブライダル・ウォーズ』はU-NEXTにて配信中。 Photo: ©20thCentFox/Courtesy Everett Collection

ケイト・ハドソンアン・ハサウェイの共演が話題を呼んだ、ちょっとドタバタするロマンティック・コメディ。大親友の二人が雇ったウエディングプランナーの手違いから、お互いの挙式の日がバッティング。どちらかが日程を譲歩せざるおえなくなったことから、二人の仲は険悪に。どちらも一歩も引かずに大喧嘩に発展しまうが……。

アン・ハサウェイが演じたエマは母親から譲り受けたドレスを着用するという設定のため、クラシカルでシックなマーメイドスタイルのドレスをチョイス。一方のケイト・ハドソンが演じたリヴは、ヴェラ ウォン(VERA WANG)のバレリーナドレスを着用。胸もとに切り込みの入ったビスチェに、何層ものレイヤーになったチュールが美しい、プリンセスラインのドレスで華やかさをアピールした。二人のドレス姿を観るだけでも楽しい1作となっている。

ジバンシィとのコラボレーションが光る『パリの恋人』(1957 年)

『パリの恋人』はU-NEXTにて配信中。 Photo: Everett Collection

オードリー・ヘプバーンが初めて挑んだミュージカル作品。小さな町の本屋で働く本の虫ジョー(オードリー・ヘプバーン)が、ひょんなことからハイファッションのモデルとなり、フレッド・アステア演じるフォトグラファーと恋のドラマを繰り広げる。

ファッションモデル役のため、オードリーのファッション七変化を楽しめるが、圧巻はジバンシィGIVENCHY)が手がけた可憐なウエディングドレスを纏って、美しい景色の中で魅せるダンスシーン。鎖骨を美しくみせるボートネックのタイトなボディに、何層ものチュールがレイヤードされたミディ丈のスカートを纏った彼女はまるでバレリーナ。オードリーの華奢なスタイルを強調して初々しさを引き出すドレスは、70年近く経った今なお新鮮そのもの。劇中2度ドレスシーンが登場するが、何度観てもうっとりさせられることだろう。

Text: Rieko Shibazaki