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ESOMAR Connect Japan 2024
開催報告

リサーチ・コンサルタント 岸田 典子


2024年6月12日、ESOMAR Connect Japan 2024が、渋谷フクラスのGMO Yoursにて、ESOMAR とJMRAの共催で開催されました。昨年に続く対面中心のイベントで、会場は満席の150名、オンラインからも約200名の参加があり、大盛況となりました。
ESOMAR Connect Japanは、リサーチ・インサイト業界の国際組織であるESOMARと、日本のリサーチャーらの能力向上とネットワーキングのために行なわれるイベントで、国際市場調査デー(IMRD: International Market Research Day)とタイアップしています。
今回は、"最新事例に学ぶカスタマーインサイトの読み解き方~AI・マーケティングDX・インバウンド・海外販路開拓~"と題したプレゼンテーションに引き続き、交流会が行われました。 本イベントの内容を簡単にご紹介します。


イベント風景


ESOMAR Connect Japan 2024は、ESOMAR Japan細川代表、JMRA五十嵐会長の開会の挨拶から始まり、リサーチ業界からインサイト業界への概念拡張と新しいテクノロジーの導入によるビジネスチャンス拡大の可能性、また2025年のJMRA設立50周年に向けた業界発展への協力が呼びかけられました。

プレゼンテーションの内容から一部をご紹介します。


リサーチとAI、リサーチャーとAI IpsosにおけるAI活用のケース共有
 イプソス株式会社 
 Social Intelligence Analyticsチーム・
 サービスラインリーダー 兼
 AIイニシアティブ・AIリサーチリード
 井出成博氏

世界的ネットワークをもつIpsos社内で、どのようにAI活用がなされているかの事例が紹介されました。
リサーチャーの日常業務での利用のほか、業務アプリによる自動化など、調査設計や分析考案のサポート、分析コメントの要約に利用されていること。リサーチャーのプログラミング活用により作業の大幅な効率化が可能になること。特にAIによるコーディングで、作業時間の短縮と試行回数の爆発的増加により、量が質の向上に寄与していることなど、AI活用による大きな変化が起こっています。
さらに、業務の省力化によって可能になった時間をビジネスアイデアの探索&分析といった付加価値を生む作業に活かし、アイデアをより多くもつことでソリューションに価値が出せます。 社内への浸透に向けどのような努力をしているかという質問に対し、誰でも利用できるようなプロンプトの共有が役に立っているとのお話もありました。


まだ見ぬ顧客の「真実の瞬間」とは? 
行動ログデータを活用した顧客分析と広告への活用
 株式会社ヴァリューズ
 執行役員
 子安亜紀子氏

Webの行動ログデータを活用した顧客分析と広告への活用事例が紹介されました。
250万人のWeb行動ログデータから、ポテンシャル顧客の動きに注目し、心変わりするポイントを見つけ出します。自動車購入、ワインサイトの事例が紹介されました。まず行動変容の背景を理解し、その要素を創出することによってより多くの顧客を自社に引き寄せる方法と可能性を模索します。
FMOT(First Moment of Truth)の瞬間を把握し、仮説を立てて試行することで新規顧客開拓に役立てる独自のツールとアプローチは興味深いものでした。


インバウンド誘客におけるトレンドとターゲット特性理解
 株式会社Vivid Creations Japan
 Business Development Manager
 深谷圭美様

今、話題のインバウンド、アウトバウンドの領域でシンガポールと日本に拠点を置いて活躍されている視点から最新トレンドのお話をうかがいました。インバウンド客に対する一般の人の勘違いについて観光庁データから紹介していきます。アジア8割、北米1割というインバウンド客の比率やコロナ前後でのトレンド、国による平均滞在日数、来日回数の違いなどの特徴から、求めるもの、人気のアクティビティにも違いがあります。また、誘客したい日本の地方がコンテンツを考える場合も、国際便の就航地域や回数でマーケティングのアプローチを変える必要があります。富裕層マーケティング、注目のアドベンチャーツーリズムなどをはじめ、データから始まるマーケティングのおもしろさを魅せてくれました。


AIで市場調査は不要になるのか
 GMOリサーチ&AI株式会社
 CTO
 安藤健一郎氏

AI技術の進化によってできる未来像が紹介されました。 デジタルツイン技術(モノや人のデータを利用して、仮想空間で再現する技術)が製造業をはじめ多方面で開発・活用されており、仮想空間上で何度でもテストができるようになりつつあります。 それを市場調査にどのように適用できるかという観点で、オンライン調査の大量の過去回答データからモデルを構築し、検証と答え合わせを繰り返し、AIによる回答予測の精度を高める方法を検証されています。元となる予測のためのデータの鮮度が大切で、現在の検証での再現率は63%とのこと。
その時々の課題解決のために調査をするクライアントニーズを考えると、過去に実施した調査データからの予測で代替させる価値は私にはまだ見えませんが、将来的にブレイクスルーがあるかもしれません。技術が世界を変えてゆく時代だからこそ、何ができるのか、何を守らなければいけないのかを業界全体で考える時なのかもしれません。

最後に、ESOMAR アジア・アンバサダーのJohn Smurthwaite氏から閉会の挨拶とともに、ESOMARの活動が簡単に紹介されました。

1)会員の能力向上とネットワーキング
今回の国際市場調査デー(IMRD: International Market Research Day)のようなイベント開催をはじめ、業界動向を調べる基本情報となっているGMR(Global Market Research Report)、価格調査(Global Prices Study)の発行、業界の30才くらいまでの若手リサーチャーの発表の場としてリサーチ・ゴット・タレント(Research Got Talent)といった国際的な取り組みを行なっています。

2)グローバル・リサーチ・スタンダードの推進、アドボカシー(権利擁護のための主張活動)
データ保護、プライバシー、世論調査の自由、人口統計の業界標準や倫理綱領のほか、オンラインパネルのデータ品質と不正回答への対処にも取り組んでいます。
リサーチ・インサイト業界に関するアドボカシー(権利擁護のための主張)のため、各国政府や国際機関への働きかけを行っています。

3)AI活用サービス購入者のための20の質問
AI活用サービス購入者が、プロバイダーに対して確認すべきこと(また、プロバイダーが明確にすべきこと)がまとめられています。
※ JMRAサイトから日本語版をダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/international/2024/20240423_001.pdf?TabModule495=0

 本イベントに協賛いただきましたGMOリサーチ&AI株式会社様、GMOインターネットグループ株式会社樣、PureSpectrum(ピュアスペクトラム)様に御礼申し上げます。

以上

2024.6.13掲載